テラーノベル
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「・・・・・・・んぇ・・・?」
ぼんやりとした頭が、徐々に覚醒していく
うつ伏せで寝ていた
でもなんか、シーツの感覚がおかしい
妙に厚みがあるというか、弾力があるというか
こんな抱き枕、持ってたかな?
夢から覚めたばかりの、気だるい上半身をゆっくり起こして、確認してみると
オレの下には、蓮がいた
そして、オレだけ真っ裸
何これ、どんな状況よ?
まだ夢かもしれん
思考回路がショートして、まだ眠ったままの蓮を見ていた
やがて彼の瞼がゆっくり開いてきて、オレの顔を捉えたら手を伸ばしてきて、髪を撫でながら優しく言い放った
『すごく可愛かった』
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「おい」
「言いたいことはわかる、でもオレにも訳がわからん」
目の前のコーヒーにほぼ口をつけることもできず、頭を抱えた
朝を迎えるまでの記憶がない
オレ、蓮とヤッたの?
アイツはシャツ着てたけど、オレだけ裸って
あんな状態、ほぼ事後でしかないじゃん
でも身体が痛いとか、跡がついてるとか、そんな感じはない
フワフワと浮かび上がりそうな気持ち良さだけが、今でも残ってる
でも蓮が言った、あの言葉はなんだったのか
呆然として、いったい何があったのかは聞けぬまま、蓮の家をあとにした
自分の家に帰ろうとしたけれども、どうにも落ち着かなくて
レギュラー番組の生放送を終えたばかりの深澤を捕まえて、ランチタイムが終わって暇そうなカフェに連れ込んだ
「何事かと思って話を聞けば、そんなことかよ」
「いや、そんなことで済まねぇよ! 」
俺、関係ねぇじゃねぇか・・・とでも言いたそうに、深澤は呆れている
「アリになって早朝近くまで収録してから、別の局に移動して生放送が終わって、やっと帰れる〜と思ったら鬼電きて。ただ事じゃねぇなと思って駆けつけてみたらコレだよ。そんな状態で、ノロケ話聞かされる身にもなってみろ」
「アリ・・・?」
「それ、どうでもいいから。ってかさ、お前ら付き合ってんだから、別に普通のことだろ」
「えっ・・・・・・?つ、付き合ってる・・・・・・?」
「・・・・・・は?」
深澤の目が見開いた
「え・・・?ち、違うの・・・?」
「いや、えっと・・・、ちゃ、ちゃんと言われてないし・・・」
「まさか、セフ・・・」
「うああああああああ!!!!ち、違う!!!!!!まだヤってない!!!!」
「うぇええ????」
カフェの店員が怪訝な目でこちらを見ているのに気づいた
すみませんと会釈してから、小声に戻す
「・・・あのさ、あれからどのくらい経ったんだよ」
「えと、2ヶ月くらい・・・?かな」
「めめ、おあづけ状態かよ」
「犬じゃねぇ!」
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あの日からほぼ2ヶ月
また怒涛のようなスケジュールをそれぞれこなして、蓮とは前と変わらずにメッセージ送ったり、電話したりして
たまに仕事が一緒になった時には、ちょっかい掛け合って
でも少し違うのは、仕事が終わった後とかに、お互いの家に行って少し甘い時間を過ごしてみたりして
といっても、ハグやキスが増えたくらい
最初はドキドキばかりしていたのが、回数を重ねるごとに少しずつ余裕が生まれてきて、こう思うようになった
キスより先に進んでみたい
これって欲求不満ってことかな・・・?
蓮は優しい
初めてキスした時のような、激しさが増してくるようなものはしなくなった
キスもハグも、オレのことを気遣って、壊れ物を扱うように優しいものばかり
それはそれで、大切にしてくれていることは感じるんだけど
飽きたわけじゃない
でもなんだか、物足りない
もっと、蓮のことを知りたい
蓮にも、オレのことをもっと知ってほしい
あの時感じた、蓮の奥深くにある熱に触れてみたい
そんなことを思っていた矢先に起こったのが、今朝の事件だった
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「・・・佐久間ってさ、めめのこと好きって言ったの?」
「・・・・・・・・・えっと・・・」
「キスやハグはさ、付き合ってなくてもするじゃん。特に佐久間はいろんな人と」
「遊び人みたいに言うなよ」
「めめはちゃんと佐久間に伝えてただろ、そこに甘えて自分の気持ち言わずにいるのは、ずるいんじゃない?」
「・・・・・・・・・」
そうだ
蓮はオレに正面から伝えてくれたのに
オレは蓮にちゃんとした返事をしていない
心地いい流れに身を任せたまま、蓮の気持ちだけを受け取り続けて、何にも返せてない
「それとさ、お前、忘れてないよな?」
「何を?」
「めめ、ドームツアーの後、カナダ行くこと」
「あ・・・・・・」
忘れてない
でもまだ考えたくなかった
やがてその日が来るのはわかってるけど、そのことに目を塞いで、今を楽しみたいって
どのくらい離れるのかは、2ヶ月後に出発を控える今でもわからない
1年?
もしくはそれ以上?
蓮の夢が叶うことは、本当に嬉しい
全力で応援したい
でも同時に寂しさも湧き上がっていて
その寂しさに気づかれたら、蓮はきっと気を遣ってくる
そんなことで、彼の邪魔をしたくない
「ツアーも始まるし、一緒に過ごせるのって、出発までもうそんなにないと思う」
「うん・・・」
「邪魔はしたくないっていうのもわかるけど、このまま行かせたら佐久間、絶対に後悔するよ」
「そうだよな・・・」
「だったらさ、早く言っとけよ。その方があとの2ヶ月、気持ちよく過ごせるんじゃない?」
「うん・・・、ありがと」
コーヒーを飲みながら、深澤は何かぼそっと言った気がする
「・・・・・・そろそろ、めめにも限界が来るだろうしな」
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『どうしたの?忘れ物してた?』
ギチギチのスケジュールに挟まれ続けている、彼のオフを邪魔するつもりはなかった
でも彼と離れるまでの残された日々のスケジュールを考えると、少しでもチャンスを逃しちゃいけないと思った
深澤と別れたあと、蓮にメッセージを送ってみた
“ もう一回そっちに行ってもいい? ”
数分してから、彼からOKを示すスタンプが一つ送られてきた
いったん家に戻って諸々のことを済ませてから、再び蓮の家に向かったのは夕方過ぎ
玄関の扉を開けて出迎えてくれた彼は、いつものように優しい顔をしていた
「あ、ううん・・・忘れ物じゃなくて・・・」
『?』
「えっと・・・、聞きたいことと、言いたいことがあって」
『・・・とりあえず、上がりなよ』
「うん・・・」
朝いた場所なのに、なぜか緊張する
リビングに通されて、ソファに座った
『何か飲む?』
「ううん、大丈夫・・・」
『で、どうしたの?』
「あのさ・・・、オレ、昨日って・・・」
『あ、やっぱり覚えてない?』
蓮はちょっと苦笑いしながら、隣に座った
やっぱり、ヤっちゃったの???
今、蓮の顔がまともに見れない
『昨夜の佐久間くん、すごく疲れてて、お風呂で寝ちゃったんだよ』
「え・・・・・・」
『なんとかベッドには運んだんだけど、服とか着せれないから、タオルだけ巻いたんだ』
「おぉ・・・ぉ・・・?」
『それからベッドで髪乾かしてる時、いつのまにか俺のシャツ握ってるから、動けなかったの』
「そ、それで、オレはお前の上に・・・?」
『そう』
恥ずい、すごく恥ずい!!!!!!!
なにしてんだよ、オレは!!!!!
「ごごごごごごごっ、ごめん!!!!!!!!!!」
『今日、オフじゃなかったら、たぶん蹴り飛ばして逃げてたかも』
「いや、そうしてくれよ!!!」
『大介にそんなことできるわけないじゃん・・・、ってか、なに想像してた?』
「え・・・・・・」
蓮が迫ってくる
まるで、オレのことを見透かしてるような悪い顔で
『やらしいね、大介』
「ちちちちちちち、ちがっ、違う!!!!!!!!」
『普通は思うよね。タオルあったとはいえ、起きたら俺の上で裸だし。どう考えても、ヤっ・・・』
「うがーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
それ以上の言葉を止めるように、蓮の口を両手で塞いだ
国民的イケメンが言うセリフじゃない!!!!
「蓮、もう勘弁して!!!お願い!!!!」
『あははは』
口を塞いだ手を掴まれて、そのまま蓮の身体の方に引っ張られた
「あっ・・・」
『で、聞きたいことは終わった? 次に言いたいことは?』
「えっとね・・・」
思わず蓮から顔を背けた
今の顔を見られたまま、オレの気持ちを告げるのが怖い
すると蓮の手が、オレの顔を包み込むようにして、自分の方に向けた
『こっち見てよ、大介』
「蓮・・・」
『さすがに、寝込みを襲ったりするようなことはしないよ。でもそろそろ、俺の理性は崩れそうなんだけど』
「あ・・・・・・」
『大介としたいっていう気持ちは、ずっとあるから』
「・・・・・・蓮・・・」
『でも大介がその気にならないと、俺もイヤだからね』
「・・・蓮、オレは・・・・・・」
イタズラ顔だった蓮は、いつの間にか真剣な目でオレを見据えている
その瞳の奥に、オレが求めている熱が見え隠れしていた
まるで狼のように、狙った獲物は逃さないとでも言うように
「オレは・・・蓮が・・・」
言いたいことは、一つしか許さない
一つしかないでしょ?
蓮の全身から、オレを捕えるような圧を感じる
怖いような、でも何故だか心地良さも感じてしまう
「蓮が好きだよ」
圧に負けたんじゃない
本当の気持ち、蓮に知ってほしい
「好きだから、蓮と一緒に先に進みたい」
そう言い終わった瞬間、今までにない力強さで抱きしめられた
身動きができない、息が苦しい
でもそれに加えて、嬉しさのようなものがこみ上げてくる
もうオレ、おかしくなっちゃってる、蓮に
『この先いったら、もう戻れないからね』
耳元で囁かれる脅迫めいたセリフ
戻す気なんか、さらさら無いくせに
宣戦布告された瞬間から、蓮の鎖に絡まってたんだよ
もう解けることはなさそうだから、このまま進んでいくしかないんだよ
いつの間にかじわじわと蓮の欲が身体に染み込んでいて、優しく確実に洗脳されてたんじゃないかと思う
蓮以外のことを考えさせないように、蓮だけが欲しくなるように
言葉じゃなくて、視線で応えると、オレを抱えてリビングを後にした
コメント
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続きがとっても楽しみです♡
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