「詩月ー?」
「詩月ー??どこにおんの?出てきてや」
「詩月ちゃーん?」
私を探す、色んな声が色んな所から聞こえる。
私は今、「鬼ごっこ」という名の不利な戦いをしている。
今、見つかったら、私は終わる。
何とかして、ここから逃げ出さないとな。
そう考えていると、声が近づいてきた。
「詩月ー?どこやー?」
__近くで、ガチャ、と扉の開く音がした。
恐らく、私の隠れている部屋に入って来たのだろう。
ぞぞぞ、と悪寒がする。だって、見つかったら私は終わるのだから。
「……居らへんな…。」
入ってきた人はそう言い、それと同時に人の気配が遠ざかっていった。
良かった、私は命拾いしたようだ。
でも、気を抜いてはいけない。相手は、20人は超えているのだから。
たまに、上から出てくる人もいるし、外から入ってくる人もいる。
なので、私はいつでも360度警戒しないといけない。
私は狭苦しくて暗い今いるこの空間で、絶対に逃げ切る決心をした。
「あ、詩月ちゃんやぁ!みーつけたっ!」
ぱぁ、と効果音がつきそうな笑顔を浮かべてながら、私の名前を呼ぶ人。
「詩月サン、はよこっち来てくださいよ。」
両手を広げながら私を見ている人がいた。その後ろから、コツコツと靴の音を立てながら
「おや、見つかってしまったようだな。
我が愛しの詩月よ。」
人が出てきた。
『…やめて、殺さないでください……。』
怖さのせいか、ガタガタと、震えながらそう言う。
「……俺は、お前を殺したりはしない」
『え、お前が見つかったら、お前は俺たちにヤられる、みたいなこと言ってましたよね』
「それは確かに言ったな。」
『では、何故私を殺さないんですか…?」
「それは、詩月、お前が勘違いをしているようだからな」
『……何を勘違いしてるか分かりませんが。今、私を殺さないのなら、今から脱出します』
「ほう……。だが、私含めここに居る3人以外、お前___詩月が見つかったことを知らない。その為、捕まったらお終い……だが、どうか?」
「ええ、一か八かですが、絶対脱出してみせますよ。」
「へぇ…。さすが、俺が見込んだだけあるな。良いだろう、詩月、お前を試そうか」
___こうして、「不利な鬼ごっこ」は再び幕を開けた。
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