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『だ〜か〜ら〜!違うと言っておろう!!』
部屋に帝釈天の声が響き渡る。
声の先には、ひとりの女の子。
髪はオレンジ色のショートボブ。背丈は帝釈天と同じくらいだろうか。
その子は手も使わず、皿に顔を突っ込んでご飯を食べていた。
『食べ物はこういうものを使って食べるのじゃ!あ〜もう!顔を突っ込むでない!』
お箸にスプーン、フォークを指さして大声を上げる帝釈天。
その声に気付いたのか、大量のご飯を口に含みながら女の子が顔を上げた。
「っていうふぁ、てんふぁんははひはひはふはいふぇふふぁ!?」
流石の帝釈天でも、この言葉を理解する事はできず、ため息が出る。
『はぁ…口に物を入れたまましゃべるな……』
もぐもぐもぐごっくん。
女の子は急いで口の中のものを胃へと流し込んだ。
「って言うか、天ちゃん!なんか話が違くないですか!?あの流れだとすぐに転生して雪斗くんと再会する流れだったじゃないですかぁ!!」
ピクッ
(天ちゃん……?)
(……妾のことか??)
帝釈天の眉がぴくりと動く。
しかし——
……聞かなかったことにした。
『バカを言え!…はるよ。今の自分の姿を見てみろ!
』
はると呼ばれた少女は帝釈天の言葉に「?」を返した。
『あのまますぐに人間に転生し、飼い主のそばに行ってみろ………どうなっていたか….』
〜〜〜〜〜 【妄想中】〜〜〜〜〜
真冬。雪がちらつく繁華街。
飼っていたウサギを亡くし、悲しみに暮れながら歩いている雪斗。
そんな中、後ろから雪斗を呼ぶ声が聞こえ、振り返ると……
「ゆきとくぅぅぅぅぅぅん!!」
人間に転生したばかりのはるが四つ足で雪斗の元へ駆け出していった。
——もちろん、全裸で。
口元には、先ほど何か食べたのだろう。カピカピになった食べ物の欠片がこびりついている。
そして、そのまま雪斗の前で立ち止まり
「ゆきとくぅ〜ん!ありがとぉぉぉぉぉぉ」
〜〜〜〜〜【妄想終了】〜〜〜〜〜
はぁ…
『あの日に人間界へ転生なんてしていたら、転生した瞬間に人として終わり、お主の願いも失敗するのが目に見えておったぞ…』
『知識ならば、妾がお主に渡すことができる。だが所作は魂そのものに刻まれるもの。転生した先で、少しでも雪斗とやらと違和感なく過ごせるよう、しっかりと学ぶ必要があるのじゃ。』
「ぶーぶー」
はるは帝釈天の言っていることがあまり理解できていないのか、不満を口に出していた。
『数百年とは言わぬ。お主の頑張り次第では数年で習得もできよう。ただでさえ理から外れた道…せめてちゃんと願いを叶えられるようしなくては、それこそ何の意味もなくなるじゃろうて』
「は〜い、わかりました…」
しょんぼりしながらもスプーンを手に持ってご飯を食べようとするはるであった。
——1ヶ月後
二足歩行で歩く練習をするはる。
まだまだバランスを取るのが難しいのだろう、フラフラしながら歩いている。
——3ヶ月後
服を着替える練習をするはる。
簡単なワンピースなどは1人で着ることができるが、どうも靴下が苦手らしい。
手先を器用に使わないと履くことができないのもあるが、なにより足が覆われる感覚が気持ち悪く、はる自身が履きたいと思わないため、どうも練習に身が入らない。
——半年後
ジグソーパズルで手先の動きの練習をするはる。
細かい作業は苦手なのか、練習の時間が終わると速攻で逃げる。
——1年後
まだぎこちないが、お箸でご飯を食べているはる。
目の前では感心したように帝釈天が頷いていた。
『ふむ。よく頑張っておるな。が、まだ箸の持ち方がなってはおらぬようだ。』
「お箸は難しいんです。なんでスプーンとフォークがあるのに………」
少し不満そうなはる。だが、ふと何かを思い出したようの帝釈天の顔を見上げた。
「天ちゃん。聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」
『ん?どうかしたか? 』
天ちゃん呼びを完全にスルーした帝釈天。こはるは少し気まずそうに問いかけた。
「天ちゃん。私がこの姿になってから、毎日のように私のしょさ?の練習に付き合ってくれてますよね?」
『ふむ。それがどうした?』
「天ちゃんが来れない日は、別のうさ耳の人が手伝ってくれるんですけど……その時に天ちゃんは魂のせんべつをする、このお城で1番偉い人って聞いて……」
『会った時にこの城の主だと伝えたはずじゃがな』
「いや、それはいいんですけど……」
(いや……よくないじゃろ。)
心の中でツッコミを入れた帝釈天。
そんな事にも気づかず、はるは目を伏せ、少し申し訳なさそうにしている。
「天ちゃんが私の練習に付き合ってくれて、本当に嬉しいんですけど、うさぎさん達の魂の選別をするお仕事はいいのかなって………私のせいでお仕事の邪魔になってないかなって不安になって……」
はるの意外な質問。
まさか自分のことを気にしてくれているとは思いもせず、少し驚いた帝釈天。
(本当にこの魂は……自分より、相手ことばかりじゃな……)
ふと笑みが溢れた帝釈天は、はるの頭を撫でて答えた。
『気にするでない。しっかりと魂の選別はしておる。まぁ、やっているのは妾ではないがな』
『今の世の中はAIなのじゃ!』
ドヤ顔で胸をはる帝釈天。
帝釈天が指を差したその先には……
デデーン!
帝釈天を模して作られた機械が数体置いてあった。
「あれは……?天ちゃんの人形?」
『あれは自動魂魄選定機じゃ』
「じどう……こん………??」
『あっちをよく見ておれ』
帝釈天がそう言い、別の方向を指差す。
その先ではまさに魂の選別が行われる瞬間であった。
自動魂魄選定機の前にはうさぎが1羽。
ピコピコ音を鳴らし、機械の胸元にあるモニターが点滅している。
ブブー
モニターには【✖️】が表示された。
その瞬間……自動魂魄選定機は竹刀でうさぎの魂を引っ叩き、その先にある穴へ落としていった。
その様子を見ていたはると帝釈天。
『あの魂はダメじゃな。穢れすぎておる。』
目を細めながら、遠くからでも機械が選別した魂の評価を下す帝釈天と、その魂を選定した機械の両方に驚くはる。
「すごい……そんな事までわかるんだ……」
『基本的に綺麗な魂の場合は、ちゃんと妾がみておる。』
『妾がみれなかったとしても、選定評価の整合率は脅威の99.9%。安心じゃ。』
(あ、100%じゃないんだ……)
『それに………』
「ん?」
はるをじっと見つめる帝釈天
『魂選別こ仕事は一区切りついたからの。今は小休止中。お主が気にすることではない。』
そういい、再度はるの頭を撫でる帝釈天。
「そっか!それならよかったです!」
久々に人に頭を撫でられ、気持ちよさそうに目を細めて笑うはる。
帝釈天は、少しだけ目を伏せた。