テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
43
#独占欲
約三十分後。診察室に呼ばれた。
デスクに座っていたのは、いかにもベテランという風貌のおじさん先生だった。
医師は、俺の目の粘膜をチェックし、仰向けになった俺の右脇腹(肝臓のあたり)をグッと押し込んだ。
「君、Y-GTPが150だったんだって? 一体どれだけ飲んだんだか。……数値が正常に戻ったからって、油断は禁物だよ」
医師はカルテを見ながら、静かに、だが重みのある声で続けた。
「私はここで二十年以上医者を務めているが、君のような若い子が体を壊し、日常生活もままならなくなる例を嫌というほど見てきた。医者が患者と関わるのは、たいてい診察室の中だけだ。だがその時は、すでに手遅れなことも多い」
先生はふと、ドアの向こうの処置室に視線をやった。
「だからうちでは、小森くんのような看護師がアプリを使って、患者さんの日々の健康をフォローしているんだ。特に彼女は熱心でね。一人でも手遅れになる前に救いたい、と。……もっと自分の体と、周りの善意を大事にしなさい。わかったね?」
小森は、自分に何の得もないのに、ただ目の前の人を助けたくて、あんなふうにメッセージを送ってきてたのだ。
俺みたいに「案件を取ればボーナスアップ」なんて世界で生きてるわけじゃないのに。
(あいつ……なかなか、いい奴じゃん……)
診察を終えた俺は、感謝の一言でも言うべきか悩みながら、クリニックのエレベーターを降りた。
一階のエントランスを通り抜けて、表通りに出ようとした、その時。
聞き覚えのある声が耳に飛び込んできた。
「……もうここには来ないでって言ったはずですっ!」
「すみれ。俺は、お前のことを」
「もう別れたんだから! 私に構わないでよっ!」
そこには、男に腕を掴まれ、困惑した様子の小森の姿があった。