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⚠️ こちらはd!の二次創作です ⚠️
死ネタ が これから出てきます
地雷 彡 は 回れ右 !
夜の学校は、昼間とは別の場所みたいに静かだった。
廊下に並ぶ窓の外はすっかり暗くなっていて、遠くの街灯だけがぼんやりと校庭を照らしている。
時計を見ると、時刻は午後九時を少し過ぎたところだった。
本来なら、とっくに帰宅している時間だ。
だが、生活指導の書類やら、明日の授業準備やら、面倒事はいつだって終わらない。
重たい溜息を吐きながら、廊下を歩く。
静まり返った校舎には、自分の足音だけが響いていた。
一つ一つ、教室の扉を確認していく。
鍵が閉まっているか。
電気は消えているか。
窓は閉まっているか。
毎日繰り返している、ただの確認作業。
……のはずだった。
rbr「…………はぁ」
小さく息を吐く。
一番奥の教室。
扉の窓越しに見える人影に、rbrはもう驚きもしなかった。
ガラ、と扉を開ける。
rbr「お前、今日も居るんか」
返事はない。
窓際の席。
月明かりだけが差し込む薄暗い教室で、静かに外を眺めていた。
風に揺れるカーテンが、ふわりと彼の髪を撫でる。
その横顔は妙に無表情で、生きている人間というより、夜に溶け込む影みたいだった。
最初に見つけた時は流石に驚いた。
こんな遅くまで生徒が残っているなんて思わなかったし、しかも傷だらけだったのだから。
rbr「なんで帰らへんの?夜やで?」
そう聞いたこともある。
だが、何も答えなかった。
ただ窓の外を見ていただけだった。
……それが一日だけじゃなかったから、嫌でも察した。
rbr「……電気くらいつけろや。目ぇ悪なるで」
教室のスイッチを押す。
ぱっと蛍光灯が点灯した瞬間、shaは少しだけ目を細めた。
その顔を見て、rbrは眉を寄せる。
rbr「またやられたんか」
切れた口元。
制服の袖から覗く赤黒い傷。
見慣れたものだった。
shaは何も言わない。
否定もしない。
けれど、それが答えだった。
rbrは小さく舌打ちすると、教室後ろの棚へ向かった。
rbr「動くなよ」
棚の奥から救急箱を取り出す。
もう何回これを繰り返したか分からない。
だから、どこに何が入っているのかも覚えてしまった。
消毒液。
ガーゼ。
包帯。
絆創膏。
まるで保健室みたいやな、なんて前に冗談っぽく言ったことがあった。
その時shaは、少しだけ笑った。
本当に少しだけ。
あまりにも小さな笑みだったから、見間違いかと思ったくらいだ。
rbr「……ほら、こっち向け」
近づけば、shaは大人しく視線を向けてくる。
抵抗はしない。
だが、自分から助けを求めることも絶対にしなかった。
rbrは消毒液を染み込ませたガーゼを傷口へ当てる。
ぴくり、とshaの肩が揺れた。
rbr「痛いなら痛いって言えや」
sha「………別に」
rbr「強がらんでええのに」
短く返しながら、rbrは包帯を巻いていく。
細い手首だった。
ちゃんと飯食ってんのか、と思うくらいには。
rbr「……で、誰にやられたん」
聞いても返事が返ってこないことは知っている。
shaは今日も黙ったままだった。
窓の外ばかり見ている。
まるで、此処じゃないどこかへ行きたそうに。
静かな教室。
聞こえるのは、包帯の擦れる音だけ。
もう少しで手当ても終わる。
そう思った時だった。
sha「rbr先生」
不意に名前を呼ばれ、rbrは手を止める。
shaから話しかけてくることは珍しかった。
rbr「ん?」
するとshaは、何を思ったのか、机から立ち上がった。
そのまま窓際へ向かう。
rbr「おい、まだ終わってへ──」
言い終わる前に、shaはひらりと窓枠へ腰をかけた。
思わずrbrの表情が険しくなる。
ここは五階だ。
ふざけていい高さじゃない。
rbr「危ないから降りろ」
だがshaは従わない。
夜風に吹かれながら、ただ空を見上げていた。
星が、見えた。
静かな夜空の中で、弱々しく光る小さな星。
それを見つめたまま、shaはぽつりと言う。
sha「……rbr先生は、俺が死んだら悲しむ?」
その瞬間。
教室から音が消えた気がした。
rbrは、すぐには言葉を返せなかった。
窓から吹き込む夜風が、カーテンを揺らす。
ひらひらと白い布が揺れる度、shaの身体が今にも夜へ溶けて消えてしまいそうで、妙に落ち着かなかった。
rbr「……なんや、急に」
なるべくいつも通りの声で返したつもりだった。
だが、自分でも分かるくらい、少し掠れていた。
shaはそんなrbrの様子を気にすることもなく、夜空を見上げたままだった。
sha「………別に。ちょっと気になっただけ」
rbr「気になることが物騒すぎんねん」
sha「そう?」
rbr「そうやろ」
短く返しながらも、rbrはゆっくりshaへ近づく。
刺激しないように。
変に焦らせないように。
まるで野良猫に近づく時みたいやな、と頭の隅で思った。
少しでも強く手を伸ばせば、こいつは簡単にどこかへ逃げてしまいそうだった。
rbr「……悲しむで」
shaの指先が止まる。
rbrは続けた。
rbr「そら、生徒死んだら嫌やし」
sha「……それだけ?」
rbr「それだけってなんや」
sha「別に」
shaは小さく笑った。
笑った、というより、息を零したような曖昧なものだった。
けれど、rbrは少しだけ安心する。
少なくとも今すぐ飛び降りるつもりではなさそうだったから。
rbrは窓際まで辿り着くと、軽くshaの頭を小突いた。
sha「痛っ」
rbr「危ないから降りろ。ここ五階やぞ」
sha「分かってる」
rbr「分かってへんからそこ座っとるんやろ」
shaは不満そうに口を尖らせる。
だが、少しすると大人しく窓枠から飛び降りた。
その瞬間、rbrは無意識に息を吐く。
……ほんま、心臓に悪い。
rbr「しかも途中やったのに動くから包帯ほどけとるやん」
sha「あー、ほんまや」
rbr「ほんまや、ちゃうわ。座れ」
sha「はーい」
気の抜けた返事をしながら、shaは元いた席へ戻る。
その姿を見届けてから、rbrも再び包帯を巻き直した。
教室にはまた静かな時間が流れ始める。
時計の針の音。
遠くを走る車の音。
風の音。
shaはぼんやり窓の外を見つめていた。
その横顔を見ながら、rbrはふと思う。
こいつはいつか、本当に。
消えるようにいなくなってしまうんじゃないかと。
理由なんて分からなかった。
ただ、そう思ってしまうくらいには、shaは危うかった。
まるで、夜空の星みたいに。
静かに光って、気づけば消えてしまいそうなほど。
rbr「……よし、終わり」
最後に包帯を軽く留めてから、rbrは小さく息を吐いた。
shaの手首を掴んでいた指を離す。
白い包帯は、痣だらけの肌を隠すように巻かれていた。
shaは自分の手首をぼんやり見下ろしている。
まるで、それが自分のものじゃないみたいな目だった。
rbrは救急箱を閉じながら口を開く。
rbr「今日はいつもより酷かったな」
sha「……そう?」
rbr「お前、感覚麻痺しとるわ」
カチ、と救急箱の留め具を閉める音が響く。
shaは何も返さなかった。
その沈黙にも、rbrはもう慣れていた。
慣れてしまった、という方が正しいのかもしれない。
本当なら、生徒が毎日傷だらけで現れることに慣れるなんて、おかしいはずなのに。
rbr「ほら、帰るぞ」
立ち上がりながら声をかける。
だが、shaは席から動かなかった。
窓の外を見つめたまま、小さく呟く。
sha「……帰りたくない」
その声はあまりにも小さくて、聞き間違いかと思った。
rbrは思わず振り返る。
shaは俯いたまま、自分の袖を軽く握っていた。
今まで、「帰りたくない」なんて一度も口にしたことがなかった。
だから、一瞬言葉に詰まる。
rbr「……家、なんかあるん」
sha「別に」
またそれだ。
けれど、今日は“別に”の言い方が少し違った。
いつもみたいに突き放す感じじゃない。
誤魔化しているような、隠しているような、そんな声音だった。
rbrは少し考えてから、教卓に腰を預けた。
rbr「じゃあ、少しだけおるか」
shaがゆっくり顔を上げる。
rbr「俺もまだ仕事残っとるし」
嘘だ。
本当はほとんど終わっていた。
けれど、今ここで一人にするのは、なんとなく嫌だった。
shaはしばらくrbrを見つめた後、小さく目を逸らした。
sha「……変」
rbr「何が」
sha「普通、はよ帰れって言うやろ」
rbr「教師にも色々おんねん」
sha「適当」
rbr「失礼やな」
そう返すと、shaは少しだけ笑った。
今度は見間違いじゃなかった。
ほんの小さなものだったけれど、確かに笑っていた。
その瞬間、rbrの胸の奥が少しだけ軽くなる。
……あぁ、こいつ、ちゃんと笑えるんやな。
そんな当たり前みたいなことを思う。
rbrは教卓の上に置かれていたプリントを適当にまとめながら、何気なく口を開いた。
rbr「腹減ってへん?」
sha「……まぁ」
rbr「なんやその微妙な返事」
sha「減ってる」
rbr「素直でよろしい」
rbrは机の上のプリントを適当に纏めながら、ふと思い出したように鞄を漁る。
だが、数秒後、小さく舌打ちした。
rbr「……あー、あかん」
sha「?」
rbr「昼に買ったパン、職員室に忘れてきた」
sha「アホやん」
rbr「うるさい」
そう言って立ち上がる。
救急箱を棚へ戻し、教室の電気を消しかけて、rbrは一度動きを止めた。
そして、振り返る。
rbr「……コンビニ行くか」
shaは一瞬きょとんとした顔をした。
sha「は?」
rbr「腹減っとるんやろ」
sha「いや、別にそこまで」
rbr「遠慮されるん腹立つわー」
sha「え、なんで」
rbr「知らん」
半ば強引にそう言って、rbrは教室の扉を開ける。
廊下の電気はところどころ消えていて、夜の校舎は昼間よりずっと広く感じた。
shaは少し迷うように視線を彷徨わせた後、小さく息を吐く。
そして、静かに立ち上がった。
その姿を見て、rbrは少しだけ安心した。
一人にしていたら、多分此奴はまた窓の外を見続けていただけだから。
二人分の足音が、静かな廊下へ響く。
昇降口へ向かう途中、shaがぽつりと呟いた。
sha「……先生って、いつ寝てんの」
rbr「んー、日によるな、早い時は23時とか」
sha「嘘や」
rbr「なんでやねん」
sha「いつも職員室おるイメージ」
rbr「それは否定できんな」
小さく笑いながら、靴を履き替える。
外へ出た瞬間、少し冷たい夜風が頬を撫でた。
二人で夜道を歩く。
車通りは少なく、コンビニの明かりだけが妙に眩しく見えた。
自動ドアが開く。
途端に流れ込んでくる明るい音楽と暖房の空気に、shaが少し目を細めた。
rbr「好きなん選べ」
sha「え、マジで奢り?」
rbr「教師舐めんな」
sha「金欠そうなのに」
rbr「ぶっ飛ばすぞ」
そんなくだらないやり取りをしながら、shaはゆっくり店内を歩いていく。
その横顔を見て、rbrはふと思った。
さっきまで、あんな顔で“死”について聞いていた奴と同じ人間には見えなかった。
おにぎりコーナーの前で真剣に悩んでいる姿なんて、どこにでもいる普通の高校生だ。
……だから余計に。
こんな奴が、一人で消えようとしていることが、たまらなく嫌だった。
結局、shaは散々悩んだ末に、鮭とツナマヨのおにぎり、それから温かい緑茶を選んだらしい。
優柔不断かと思えば、選ぶものはやたら普通で、rbrは思わず小さく笑ってしまう。
rbr「もっとなんかあるやろ。めっちゃ普通やな」
sha「別に普通でいい」
そう返され、rbrは自分の籠を見る。
ブラックコーヒー、適当に選んだサンドイッチ。
それと、レジ横の肉まん。
……完全に夜勤帰りの会社員みたいやな、とrbrは内心で思った。
………まぁ、ええか。
電子決済の音が小さく鳴る。
袋を受け取り、二人で店を出た。
外の空気は行きより少し冷えていて、shaは緑茶のペットボトルを両手で持ちながら歩いている。
白い息が、夜の中へ溶けていった。
学校までの道は静かだった。
聞こえるのは、車の走る音と、二人分の足音だけ。
学校へ戻ると、夜の校舎は行きよりもさらに静かに感じた。
昇降口の鍵を開ける。
薄暗い廊下へ足を踏み入れた瞬間、shaがぽつりと呟いた。
sha「……なんか変な感じ」
rbr「何が?」
sha「夜の学校に戻ってくるの」
確かに、普通なら帰るはずだ。
コンビニへ行った後、また学校へ戻る教師と生徒なんて、多分どこにもいない。
rbr「秘密基地みたいやろ」
sha「先生、そういう歳ちゃうやん」
rbr「うるさい」
そんなくだらない会話をしながら、二人は再びあの教室へ戻った。
蛍光灯をつけると、さっきまでの静けさが少しだけ和らぐ。
rbrは適当に机を寄せ、コンビニ袋を机の上へ置いた。
shaは窓際の席へ座り直し、鮭のおにぎりの包装をゆっくり剥がしている。
rbrは肉まんの袋を開けると、ふわりと湯気が立ち上った。
ほんのり漂う温かい匂いに、shaの視線が一瞬だけそちらへ向く。
rbr「……食う?」
sha「え」
rbr「ほら」
半分に割った肉まんを差し出す。
白い湯気が、二人の間で揺れた。
shaは少し戸惑ったような顔をする。
sha「いや、俺おにぎりあるし」
rbr「一口くらい食えるやろ」
shaは呆れたように小さく息を吐いた後、差し出された肉まんを受け取った。
指先がほんの少しだけ触れる。
だが、shaはすぐに視線を逸らした。
一口齧る。
湯気と一緒に白い息が零れた。
sha「……熱っ」
rbr「あはは、猫舌やん」
sha「うるさ……」
そう言いながらも、少しだけ口元が緩んでいる。
rbrはそれを見て、なんとなく安心した。
こんな風に笑うなら。
熱いって文句言いながら肉まん食えるなら。
まだ、ちゃんと此処に繋ぎ止められてる気がした。
rbr「美味いやろ」
sha「……まぁ」
rbr「素直じゃないなぁ」
sha「先生がしつこいねん」
静かな教室に、小さな笑い声が落ちる。
窓の外では、夜空の星が静かに瞬いていた。
教室には、静かな時間が流れていた。
食べ終わったおにぎりの袋。
飲みかけの緑茶。
机の上で少し潰れた肉まんの包装紙。
ついさっきまで笑い声があったはずなのに、今は時計の針の音だけがやけに大きく聞こえる。
rbrは何気なく壁時計を見る。
時刻は、もう十時を過ぎかけていた。
……流石に遅い。
生徒をこんな時間まで学校へ置いておくなんて、本当なら駄目だ。
早く帰らせるべきだ。
分かっている。
頭では、ちゃんと。
けれど。
rbrは無意識に視線を窓際へ向ける。
shaは静かに夜空を見上げていた。
最初に見つけた時と同じ場所。
同じ横顔。
なのに、さっきまで少し笑っていたせいか、今はあの頃よりずっと年相応に見えた。
……こんな顔するなら。
まだ、大丈夫なんじゃないかって思ってしまう。
でも同時に。
もし帰らせた後、また一人になって。
誰もいない場所で………。
そんな考えが、頭から離れなかった。
rbr「…………」
帰れ、と言うべきだ。
でも。
帰したくない。
rbrは小さく息を吐いて、缶コーヒーへ口をつける。
すっかりぬるくなっていた。
その時だった。
sha「……先生」
不意に名前を呼ばれる。
顔を上げると、shaはこちらを見ていた。
さっきまで窓の外を見ていたくせに、妙に真っ直ぐな目だった。
sha「俺、帰るわ」
rbrの動きが止まる。
rbr「……え」
shaは席から立ち上がる。
机の上のゴミを適当に纏めながら、いつも通りの軽い声で続けた。
sha「流石に遅いし」
rbr「いや、でも……」
思わず言いかけて、止まる。
“でも”の続きが出てこなかった。
このまま帰しても平気なのか。
そんな理由で引き止める訳にもいかない。
shaはそんなrbrを見て、小さく笑った。
sha「大丈夫やって」
その声は、いつもより少し柔らかかった。
sha「ちゃんと帰るし、それに明日も来るから」
その言葉に、rbrは目を瞬かせる。
“学校に”なのか。
“ここに”なのか。
聞こうとして、やめた。
多分、どっちもなのだ。
shaは鞄を肩へ掛けると、教室の扉へ向かう。
その背中を見ながら、rbrは気づけば声を掛けていた。
rbr「……無理すんなよ」
shaの足が止まる。
だが振り返らないまま、小さく肩を竦めた。
sha「先生こそ」
そう言って、shaは教室を出ていく。
ガラ、と扉が閉まる音。
静寂。
途端に、教室が広く感じた。
rbrはしばらく扉を見つめたまま動けなかった。
そして数秒後、小さく息を吐く。
rbr「……明日も、か」
その呟きは、誰もいない夜の教室へ静かに溶けていった。