「大したことはありませんので、心配なさらず…」
まただ。咳き込むとき、誰か心配するものがいるのならこの人は必ずそう言う。
胡桃「そう言うけどさ?ホントに大丈夫なの?」
胡桃「あっ!もし死ぬときは私に言って!
ただでさえ鍾離さんが無駄遣いするから金欠なんだよ!」
白朮「遠い未来であることを祈りますよ」
白朮「それと、いい加減不朴盧で商売するのはやめてください。」
白朮「ここは人を生かすための場所で…」
また長い話が始まる。いつになれば終わるのか、それは繰り返しすぎてもう覚えてきた。
実のところ、白朮が言っていることは正しい。葬儀というものはその人の魂を殺すことと同意義。対して、医術というものは魂を、そしてその人の肉体を癒し、治すためのもの。
私のやっていることは、生きようとする人に死という事実を伝えているのだ。
胡桃「人は必ず命を落とす。人が棺にに入ることは、最終的に必ず起きること。」
胡桃「それはちゃんと分かってるよね?」
白朮「……」
胡桃「人には必ず生と死がある。あんたはその死を恐れ、逃げ続けている。」
胡桃「実現すると思ってるの?「不老不死」なんて」
白朮「それを実現するために、今は身を削ってでも人を救いたいのです」
胡桃「……あっそ」
無理だ。無理に決まっている。
そんなものが実在するのなら、死という存在がなくなってしまうのなら、
私はどうなる?
人として、望むべきなことなのは分かっている。
ただ、往生堂としては?
七十七代目で終わりにするのか?
おじいちゃんに、それよりもっと先々代の人たち。
その人たちが作り上げた葬式を、魂が散ったときの儚さや美しさを、終わりにしようとしているのか?
最低だ。今の私は、人として最低だ。
でも私は、この職業に囚われている。
だからこそ、死を尊重したいのだ。
私はどうするべきなんだ?
人として? 往生堂堂主として?
胡桃「……わかんないよ(ボソッ)」
万民堂に行こう。そしてシャンリンを驚かせてやろう。
そして、行秋坊ちゃまにあって、詩で対決しよう。
いつもと同じことをしよう。
きっとまだ、時間はあるから。
遠い未来の話だから。
きっとまた、不朴盧に行って、白朮と話す
七七ちゃんの話をして、見つけて、逃げられる。
帰ると、鍾離さんがまた往生堂にツケて、変なものを買ってくる。
その繰り返し。
きっと大丈夫。
長生「アイツ、今日は七七の話をすることもなく帰ってったな」
長生「珍しいこともあるもんだ」
……胡堂主が言っていることは全て正しい
人の命を永遠にすることなんて、今までの事例がない。
それに、仕方ないとはいえ、不老不死になれたとしたなら、葬儀の必要はなくなる。
長生「白朮!」
白朮「どうしました?」
長生「どうしました?じゃない!」
長生「さっきから声をかけたのに返事がなかったからだろう!」
白朮「すみません、少し考え事を…」
七七「薬、取ってきた」
きっと大丈夫。
白朮「ありがとうございます。あそこの棚に入れておいてくれますか?」
きっと、遠い未来の話のこと。
後で七七に渡すリストを書こう。
あと少ししたら、またヨォーヨさんから薬が苦いと文句が言われることでしょう。
そして、長生に笑われるのでしょう。
いつもと同じことをしていれば、大丈夫。
進歩は少なくても、着実に進んでいるのだから。
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