「触るな!」
そう叫んで、叫んでしまって今自分がやらかしたことを知る。
師匠は目を開いたあと、少し苦笑いをして話す。
ティナリ「…えっと…ごめん」
コレイ「あ…師匠は悪くないんだ…。 」
未だに人に触れるときは手が震える。
もう病気は治ったというのに。
もう触れても問題ないはずなのに。
ティナリ「やっぱりまだ触るのは怖い?」
コレイ「……」
アタシは静かに頷いた。
摩淋病にかかって、博士の話に踊らされ、アンバー達にあって、そしてようやく、人を信じることができた。
アンバー達も師匠やセノ様も信じている。
アタシに悪意がないことも、私の病を治そうと頑張ってくれたことも分かっている。
旅人が来て、この国は一気に動いた。
私の病も治った。
全て、終わったはずなんだ。
いつ体が動かなくなるのだろう。
いつ楽になれるのだろう。
そう思って泣いた夜はもう来ない。
それでも、また誰かを傷つけてしまわないかと不安に刈られ触れることができない。
そう考えている間に、師匠はただぶつぶつとなにかを唱えるように独り言を話している。
駄目だ。こうなった師匠は声をかけないとずっと考え続けてしまう。
コレイ「し、師匠!…問題の方は…」
ティナリ「ん…ああごめん、」
ティナリ「内容の方は問題ないけれどまだ凡ミスが目立つかな。」
ティナリ「しっかり見直ししておけば防げるはずだよ」
コレイ「うっ…」
ティナリ「でも大丈夫、ちゃんと解き方は分かってるようだから 焦って見直しを忘れてない限り 完璧だ」
コレイ「…良かったぁ…」
正直なところ、カミナリが降るんじゃないかとヒヤヒヤしていた。
アタシは安心して少し雑談をしたあと部屋に帰った。
コレイ「……大丈夫、大丈夫だ。」
コレアンバーを抱き締めながら棚に飾っている写真を見る。
風花祭のとき、アンバー達と撮った写真だ
このときのアタシは、普通にアンバーに触ることができた。
なぜ、師匠のときは駄目だったのだろう。
なぜ、アンバー達となら平気なのだろう。
そう考えていくうちに、アタシはそのまま眠ってしまった。
朝起きると日差しが入ってくる。
いつもの服装に着替えてパトロールに出掛ける。そうすると、とある姿を見かけた。
コレイ「旅人!パイモン!」
パイモン「コレイじゃないか!久しぶりだな!」
旅人「久しぶり、体調はどう?」
コレイ「すっかり良くなったんだ!…でも」
パイモン「どうしたんだ?」
コレイ「まだ触れられると前のことを思い出して避けてしまうんだ…。」
コレイ「師匠にも気を遣わせてしまって」
パイモン「あれ?でも前の風花祭では平気だったよな?」
コレイ「ああ、だから尚更分からなくて 」
旅人「別にティナリを信頼してないわけではないよね?」
コレイ「勿論だ!…看病もしてもらって、アタシをレンジャーに育ててくれたのは師匠なんだから」
パイモン「だったらむしろアンバー達との方があまり会わないから怖いんじゃないか?」
パイモン「…待てよ?旅人!そもそも、オイラ達ってコレイとアンバー達との関係ってよく分からないよな?」
旅人「パイモン…言い方ってのが…」
コレイ「いや、別にいいんだ。」
アタシは摩淋病のこと、博士とのこと、そしてアンバーに会ってからすメールにくるまでの一連の流れを話した。
でも多分、アタシの説明が下手だから全部は伝わっていない。
パイモン「そ…そんなことが…」
パイモン「辛いこと思い出させちゃってごめんな!」
コレイ「別にいいよ、それよりアンバーのすごさを旅人達にもっと知ってもらいたいんだ」
パイモン「それに、博士のやろう!オイラ絶対許せないぜ!オイラと旅人がとっちめてやる!」
パイモンはそういって軽く拳を振るうふりをする。
旅人「もしかしたらモンドの穏やかさに流れていったのかもね」
コレイ「穏やかさ?」
パイモン「なんか分かるぜ!モンドに来るとなんか、家に帰ったような安心感があるんだよな」
旅人「きっと、まだコレイがスメールに馴染めてないんだと思う。」
確かにアタシは酷い時はずっと寝たっきりで元からそんなに広い範囲で動けなかった
まだ見ていないところがたくさんあって、出会ったことのない人がたくさんいる。
旅人「焦らず、ゆっくり慣れていけばいいんじゃないかな?」
コレイ「ゆっくり…」
コレイ「そうだな!」
まだ先のことなんて分からない。
この国のことも分からない。
だから、いろんな所にいって、いろんな人に会って、いろんなことを学ぶ。
そうしたらきっと慣れるから。
そうしたらきっと恐れないから。
パイモン「やっぱりコレイは笑ってる顔が一番だぜ!」
師匠、ちょっとだけ待ってください。
あと少ししたら、もう怖くなくなるから。
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