テラーノベル
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嘔吐表現ありです。
苦手な人は回れ右っ!
カチカチと時間を刻む腕時計をちらっと見る。
針がやっと一周したくらい。
飲み会が始まってそろそろ1時間が経つ。正直、早く帰りたい。
別にグループでの飲み会が嫌なわけではない。前まではむしろ好きで、飲み会自体を楽しみにしていたのに。
ただ、“食事をする”ということが出来なくなっているだけ。
だけ、といったら大したことでもないように聞こえるかもしれないけど現状は中々やばい。ちょっとした間食どころか、朝昼晩の食事すらままならなくなってしまっている。外見にそこまで変化は出ていないものの、体重計の数値は日に日に減少している。メンバーにバレるのも時間の問題だろう。
紫「…ちょっとお手洗い行ってくる、」
他「いってらー」
――
紫「っ” 、 がはっ 、、」
どうしよう。吐けない。
飲み会だからと無理やり胃に食べ物を流し込んだのが悪かったか。
どんなに指を奥に突っ込んでも全然吐けない。
それでも下腹部が捻れるような感覚だけがあって、その場にうずくまる。
痛い。苦しい。気持ち悪い。
{ コンコン
橙「こたー? 大丈夫? みんな心配してるけど…」
この声はくにお…?
やばい、耳なりがして誰の声かよく分かんない。視界も涙で滲んでる。
、、もう誰でもいいや。誰でもいいからこの状況をどうにかしてほしい。
{ カチャン
紫「…た、助けて 、、、ぉえ”っ、」
橙「こた!? 大丈夫!? どっ痛い…!?」
優しく背中をさすられる。あったかくて少しだけ気分が落ち着く。
とはいえ吐き気や痛みがおさまるわけではないので何度もえずいてしまう。
紫「きもちわるい、吐きたいのに吐けない”っ、、 う”ぅ」
本格的にやばいな、これ。目の前が真っ白だし音がよく聞こえない。
橙「ちょっと我慢できる? ごめんね、苦しいかも」
何をするのか聞き返す暇もなく、口に指を突っ込まれた。
そして、同じ場所をぐにぐにと押される。
こんなので吐けるわけないと思ったのも束の間、あっという間に胃の内容物が喉元まで迫り上がってくる。それを拒む術も無いので、素直に吐き出した。
つんとした独特の酸っぱい匂い。半がゆ状になったどろどろの液体。
それらのせいでまた嘔気が襲ってくる。
紫「お”ぇっ、ごほっ 、、ぇげっ 、ぉえ”っ”」
橙「大丈夫だよ、ちゃんと吐けてるからね。 大丈夫だから。」
2、3回同じ事を繰り返すと、胃が痙攣するだけで何も出なくなった。
肩でぜえぜえと息をしながら左手で汚れた口を拭う。
少しずつ耳と視界が回復してきた。
紫「ごめ… 手、汚しちゃた…、、 」
橙「俺のことはいいから。大丈夫? もう吐きたくない?」
汚れていない方の手で俺の背中を優しく撫でながら聞いてくる。
声を出すのもきついので弱々しく頷いた。…優しい。
こんな自分を見られた恥ずかしさと申し訳なさで目から涙が溢れる。
紫「ごめん、、っ」
橙「最近顔色悪いけど、それが原因?」
なんだ、メンバーにはまだバレてないと思ったのに。
嘘をつく気力も無いので正直に全部話した。
橙「なんでそんな大事なこと早く話してくれなかったの! ご飯何食べてんの?」
紫「…完全栄養食のバーみたいなのをなんとか水で流し込んでる。」
なんとなく顔を見るのが気まずいので目線を逸らしてぼそっと答える。
橙「そりゃ体重も減るし、顔色も悪くなるよ!!」
完璧など正論を突かれて耳が痛い。
分かっちゃいても食べられるのがそれしか無いのだからどうしようもない。
紫「それでも食べられないんだから仕方ないじゃん…」
くにおがうーんと考え込むポーズをとった後、手をぽんっと叩いた。…しかも目をきらきらと輝かせながら。 嫌な予感がする。
橙「じゃあ、俺と一緒にご飯がまた食べられるように練習しよ!」
紫「…え?」
俺はまだ知らなかった。
この出来事がきっかけで、こいつとの関係性が変わるなんて。
えんど。
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