⚠注意⚠
注意書きは一話をご参照ください。
中は、大きな書斎だった。俺が見たことないくらいのもの。こんだけの本を読むのに、何日いや、字を読むのが苦手な俺にとっては一冊一年で読み終わるか怪しいところだ。
中央に扉と同じ模様(紋章?)が書かれている。そこに金髪でショートカットの女性が座ってこちらを見ていた。あたりを見渡していたから怪しまれたのだろうか。ここはさっさと自己紹介をして怪しまれないようにしよう。
チーノ:はじめまして、チーノと申します。少しお尋ねしたいのですがお時間よろしいですか?
???:ええもちろん。そもそも私があなたをここに呼んだ訳だし、そんなかしこまらないで?
チーノ:へ?
すっとんきょうな声を出してしまった。俺は彼女ののことを知らないのに、彼女は俺を知っている。彼女のオーラ的なものは何も見えず、敵視しているようには見えない。
『こちらにおいで』と言わんばかりに手招きをする。信じてもいいのか。信じなくては先に進まない。彼女の前まで足を進める。
???:いらっしゃい。私はオニユリ。ここで人を案内している魔女よ。あ、安心して?あなたを実験台にしようなんて思ってないから。
チーノ:えっと…ここは?
オニユリ:ここは異界という場所。あなたがいた世界から魔物が住む世界、戦争一つない平和な世界。そういった場所につなぐ扉を管理しているところよ。
ほら、漫画とか小説で『トラックに引かれて気がついたら異世界に!?!』ってやつの行き先を決めてるところよ。
チーノ:俺それで来たんか?
オニユリ:ええ。ここに来るには条件が必要なのだけど、あなたはそれを満たしている。だから呼んだの。
チーノ:条件とは?
オニユリ:簡単よ。単刀直入に聞くわ。あなた、前世でやり残したこと、やり直したいこと、ひどく悔しく思っていること、何かあるかしら?
チーノ:やり直したいこと…後悔してること
オニユリ:ここには私とあなたしかいない。その気持ちを吐き出して見て?
チーノ:俺、祖国を裏切ってまでみんなについて行って、ポーションの実験とかみんなと戦争したりとか、怪我したくないって思うときもあったけど、でもやっぱりみんなといたから楽しくて。
で、でも祖国を裏切った罰でみんなが……俺のせいで……みんなに…合わせる顔が、ない。
もう出ないと思っていた涙が流れる。ただ泣くのはできないが、気持ちを吐き出して泣くのとは、スッキリさが違う。もちろん悲しさも。
チーノ:オニユリさんは何でも出来るんよね?
オニユリ:もちろん。何でもできるし、なんでも知ってる。信じられないなら、あなたの本名を言ってもいいけれど?多少出来ないこともあるけどね。
チーノ:別に言ったところで俺とお前さんしかおらんし、意味ないやろ。それはそうと、俺からの願いはみんなを、生き返させてくれへんか?
オニユリ:それは無理ね。彼らはここにいないもの。それに13人でしょう?それだけの人を生き返させるのは無理よ。殺した相手がいきなり生き返ったらおかしいでしょう?
チーノ:………せやな
オニユリ:そんな顔をしないでちょうだい。その代わりと言ってはなんだけど、私に提案があるわ。
チーノ:なんや?
オニユリ:過去に戻るのよ。
チーノ:過去?それは出来るんか?
オニユリ:ええ。戻るのはあなたが10歳の誕生日の朝。その日なら戻れるわ。どう?
チーノ:そう聞かれたら、戻るわ!!その日から未来を変えてええんか?
オニユリ:もちろんよ。過去に戻ってどんな未来にするのかはすべてあなた次第よ。
チーノ:戻る。はよ、あいつらに会いたいねん。
オニユリ:わかったわ。
オニユリさんは袖から杖を出し、床をつく。その音に反応して、青白い光が円を描き星も書き足していく。浮かび上がった魔法陣は俺を包み込む。
オニユリ:あなたが行くのは10歳の誕生日の朝。あなたは今この記憶を持っている状態で戻ることになるわ。
そこからこの未来にならないよう動いて行くのね?そして、もう一度聞くけど、覚悟はあるのね?
チーノ:勿論や!ひとつだけお願いしてもええか?
オニユリ:もちろんよ
チーノ:俺、皆みたいに頭回らんのよ。だから、アドバイスがほしいねん。回数制限あってええから。
オニユリ:大丈夫よ。転生特典でついてるわ。あなたが望んでからすぐに行けるわけではないけどアドバイスは出来るわ。
チーノ:ありがとうございます
オニユリ:そろそろ時間ね。行ってらっしゃい。あなたが望む未来になりますように。
ふっと目を閉じる。オレンジ色の光が、俺を包み込む。温かいような冷たいような不思議な感覚の中、俺は眠りについた。次に目が覚めたときにはみんながいる未来を創るのだ。
彼の姿が消えたあと、紫髪の魔女が私に話しかけてくる。ここに彼女が来るのは珍しい。
???:本当にお人好しね。ここで待たせてれば会えたのに。それに彼が最後でしょ?彼だけ何も知らないのは可愛そうじゃない?
オニユリ:たしかにね。でも、彼だけ事情が違うのよ。アリッサムだって薄々気づいているでしょ?
アリッサム:なんとなくね。
オニユリ:それに彼らを返したのはこの物語とは外れた話だったからさ。
アリッサム:………まあオニユリが決めたなら文句は言わないけど、記録はやっておいてね?
オニユリ:え?手伝ってくれないの?14人の記録なんて終わんないよ〜?
アリッサム:手伝いません
オニユリ:えぇぇぇ………
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