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「ああ、アルフレッド様、こちらですわ!」


店の入り口からやってきたのは、リーシャを捨て、アイリーンとの婚約を決めたアルフレッド・ダリルその人である。


「アイリーン!」

アイリーンの姿を見るや、パッと顔を輝かせ駆け寄る。

「会いたかったよ、アイリーン!」

「私もですわ」

手を握り合って見つめ合う二人。


アルフレッド・ダリルはダリル伯爵家の次男である。グレイがかった髪に深い緑の瞳。歳はリーシャと同じ十七歳だ。いかにも貴族の次男といった風体で、優男である。

「……なんで俺まで」

アルフレッドの後ろからのそりと顔を出したのは長身の男。ランス・ダリル。ダリル家の長男である。年はアルフレッドの二つ上。精悍な顔立ちだが、少々当たりがきつい。クールといえば聞こえはいいが、愛嬌がないのだ。


「ランス様! ご足労おかけして申し訳ありません。お会い出来て嬉しゅうございます」

恭しくお辞儀をする。


「お前らの婚約披露パーティーだろ? 衣装なんか勝手に決めればいいだろうに」

ダルそうに頭を掻くランス。

「そう仰らずに、一緒にドレスを選んでいただきたいのです! 一生に一度の、晴れの舞台ですもの!」

目を瞬かせ、目一杯のお願いポーズを決める。ランスは大きく息を吐き出すと、店の中へと入って行った。アイリーンがクス、と笑い、ランスに声を掛ける。


「ランス様、奥の更衣室にランス様用の衣装も用意しておりますのよ。是非、着てみてくださらない?」

「俺の?」

「ええ! 私が見立ててみましたの!」

あまり興味もなかったが、どの道ここまで連れてこられたのだ。黙って女の買い物に付き合うよりはマシかもしれない、と、ランスは考える。

「きっとランス様にピッタリだと思います」

「……ああ」


着るものなど何でもいいだろうに…、とも言えず、ランスは奥の更衣室へと向かう。途中、誰にも会わないのだが、店員は何処にいるのか?


閉まっていた更衣室のカーテンを一気に引く、ランス。


「……へっ?」

「……え?」

そこには、下着姿で鏡に向かってポーズを決め込んでいる女性がいた。


……そう、それは私。


っていうか、え? なに?


私、いきなりカーテンを開けられ、フリーズした。それは単に驚いたからっていうだけのフリーズ。でも、目の前に突如現れた長身の男性は、見る見る間に顔を真っ赤にしてわなわなと震え出した。


「あの……大丈夫ですか?」

私、思わず声を掛けてしまう。

「あ、あ、失礼した!!」

シャッ、とカーテンを元に戻すと、

「どうなっているんだっ」

と怒った風に声に出し、走り去る音。あ、途中でコケた音したけど大丈夫かな?


駆け出しのアイドルなんて衝立一枚隔てただけの場所で衣装を着替えたり、意味不明なほど露出の多い衣装を着せられたり、プロデューサーにニヤニヤした視線向けられたりなんて当たり前だから、この程度で動揺したりはしない。


握手会だってそう!


ほとんどのシートル(ファン)はちゃんとしてるよ? でも中にはさ……あわよくば体を触ってやろう的なセクハラじみたことする人だっている。そんなのに慣れちゃってる私、下着姿とは言え、大した露出じゃないし、何よりリーシャ、スタイルがいいからどっちかって言うと『私を見て!』っていう気持ちになっちゃうのよねぇ。

この世界ではダメなんだろうけどさ、こんな格好で人前に、しかも嫁入り前の伯爵令嬢が。


ま、どうせもう会わない人だろうし、忘れよう、うん。


……それにしても採寸いつまで待たせるんだろう、遅いな……って思ったけど、やっと気付いた。ああ、これも嫌がらせの一環なんだ。私、嵌められてるんだ、って。


「下着姿を男の人に見られて、もうお嫁に行けない~、ってさめざめと泣くとでも思ったのかしら?」

私は脱がされたドレスにもう一度袖を通し、更衣室から出た。


「あれ?」


フロアに戻って辺りを見渡す。が、店にアイリーンの姿はない。

「……あんのガキッ」

思わず悪態をついてしまう。


店員に話を聞くと、アイリーンはここでアルフレッドと待ち合わせをしていたらしい。そして二人は仲良くどこかに出掛けて行きましたとさ。


って!?


「私、どうやって帰るのよっ」

こんなことされたら、リーシャだったら泣くかな? それともじっと堪えてやり過ごすのかな。

「冗談じゃないわっ!」


私は、店員を捕まえると動きやすい服、歩きやすい靴を見繕ってもらい、着替えた。どうせ料金はツケが利くのだ。どれだけ買ったって問題はないはず。


私は久しぶりのショッピングを楽しみつつ、考える。どうせ置いてけぼりを食ったのだし、ここからは自由時間だ。知らない世界を探検するのもまた一興。


そうと決まれば!


私は図々しくも、店員に申し出た。

「大変申し訳ありませんが、少々用立てていただけません?」

「は?」

さすがに変な顔をされたけど、私のせいじゃないしね。


完全に開き直った私はにっこり笑って手を出した。

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