テラーノベル
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スタート!
「よし、始めるよー!」
キッチンに立つ亮平の声が、リビングに響く。
その瞬間。
「俺手伝う!」
りょうたがエプロンをつける。
「味見係!」
たつやが寄ってくる。
「それは違う」
即却下。
コンロは三口フル稼働。
味噌汁、焼き魚、サラダ、煮物。
りょうたは横で野菜を切る。
「ちょっと細かすぎ」
「きれいなほうがいいじゃん」
「家庭科の延長しない」
「えー」
でも手は止まらない。
「ままー!腹減った!」
ひかるがキッチンに侵入。
「まだ」
「なんかつまめるの」
「ない」
「きゅうりとか」
「ない」
「絶望」
「さっきタピオカ飲んだでしょ」
図星。
リビングでは、
「にゃははは!」
だいすけの笑い声。
アニメの主題歌を全力で歌っている。
「声大きい!」
たつやが言うが、
自分も十分うるさい。
「ままぁ……」
こうじが足元にくっつく。
「熱いからここまでね」
「うん」
でも離れない。
ラウールはテーブルで積み木をしているが、
ひそかに様子を見ている。
「それ落ちるよ」
ぽそっと言う。
案の定、ガタン。
「ほら」
ちょっと得意げ。
そのとき。
「……なんか焦げてない?」
しょうたの一言。
亮平、振り向く。
「あ」
味噌汁が吹きこぼれかけている。
「りょうた、火弱めて!」
「はい!」
「ひかる、どいて!」
「はーい!」
一瞬、キッチンが大混乱。
「りょうへい、大丈夫!?」
蓮が飛んでくる。
「大丈夫だから離れて」
「でも!」
「熱い」
「はい」
素直。
なんとか持ち直し、
全員が席につく。
「いただきます!」
声はそろわない。
でも音量は最大。
「これうま!」
「今日、魚当たりだね」
「サラダもう少し塩」
「自分で足して」
「しょうた、それ食べられそう?」
「うん」
「無理しない」
「してない」
短いやりとり。
「ぱぱ、それ俺の!」
ひかるが立ち上がる。
「え?」
蓮の箸の先には、最後の唐揚げ。
「それ、ひかるのって書いてない」
「心に書いてある!」
「知らない」
軽く奪い合い。
「座って」
亮平の一声で止まる。
静かになるわけではないけれど、
一瞬空気が整う。
「今日さ!」
だいすけがまた話し出す。
「先生がさ!」
「ちょっと待って順番」
「えー!」
こうじも負けじと、
「ぼくも!」
ラウールも、
「きょうね」
一斉。
カオス。
亮平は、ふっと笑う。
うるさい。
話が飛ぶ。
箸が止まる。
誰かが立つ。
でも。
全員、ちゃんとここにいる。
「りょうへい」
隣で蓮が小さく言う。
「なに」
「幸せだね」
唐突。
「……いきなりどうしたの」
「いや、なんか」
子どもたちを見ている。
亮平も視線を追う。
「……そうだね」
少し胃が重い。
少し疲れている。
でも、この光景を見られるなら。
「明日も、これだよ」
「いいじゃん!」
蓮は即答。
うるさい夜。
笑い声と食器の音と、重なる声。
目黒家の夜は、
今日もめちゃくちゃで、ちゃんとあたたかい。
次回もお楽しみにー!
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