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「お食事中の皆様。前方のスクリーンに御注目下さい」
正面に大きなスクリーンが現れた。
紗姫の結婚式では、紗姫と信也の成長を映して招待客に観てもらった。
スクリーンに、信也が『街頭演説』をする様子が映った。
「これまでの伊崎議員の御活躍を御覧下さい」
パチパチと拍手が起こった。
「え~~⁉」
バックヤードで休んでいた女性司会者が、焦って立ち上がった。
「そんな予定ありました? すみません。すぐ戻ります!!」
慌てて会場に向かう司会者を、中年男性が止めた。
「大丈夫。貴女はここで休憩して下さい」
「し、支配人?」
「はい。このホテルの責任者です」
司会者は「はい」と答えたが、不思議だった。
(この声は誰? 男性司会者が来てたっけ? 上手いじゃない)
「伊崎議員は、粉骨砕身の覚悟で努力を重ねました」
スクリーンの右隣に司会者用の小さな机がある。
その机の前に立った珊瑚が、マイクを握っている。
信也は、支援者のテーブルを回りながらスクリーンを観た。
(こんな予定無かったが、ホテルのサービスか)
「あれ? ここはどこでしょうか?」
急に画面が切り替わり、ホテルの一室が映った。
画像がグラグラと揺れている。
高い位置にカメラを固定しているようだ。
固定していた人物が、カメラの前を横切って部屋を出た。
「これは伊崎議員です。伊崎議員が寝室にカメラを取り付けました。
盗撮の準備でしょうか?」
会場が騒めいた。信也はスクリーンを凝視した。
「誰か入ってきました。伊崎議員と、元夫人の錦藤紗姫さんだ。
綺麗なワンピースを着ていますね」
信也が紗姫を抱きしめた。
「ラブラブだぁ。でも二人は夫婦でしたから当然ですね」
ここで動画がストップした。
「このまま、やめさせろ!」
信也が大声で叫んだが、スタッフは誰も動かない。
来場者は映像に釘付けだ。
「あれぇ? この様子、見たことありませんか?」
スクリーンに【紗希と秘書が抱き合う偽造写真】が映った。
「似てますね。そっくりです。並べてみましょう」
同じ大きさの『紗希と信也の動画』と『紗紀と秘書の写真』が並んだ。
「まったく同じ構図とポーズです。でも左の写真は画面が粗い。
これはどういうことでしょう?」
「右の動画を加工して! 左の写真を作ったからだ!!」
伊織の声は大きくて響く。
会場の全員に、言いたいことが伝わった。
「そうです。正解です。では、このまま動画を観ましょう」
紗姫と信也はベッドに倒れ込み、信也は紗紀のワンピースを脱がせた。
「お子様はいないですが、さすがに倍速します」
二人のベッドシーンは5倍速で進み、問題の場面になった。
「本当に、あの動画を会場で流してもいいのですね?」
櫻花に念押しされたが、紗姫は「はい」と答えた。
すでに多くの人に裸体を見られている。
それなら〈真実〉を見られた方がいい。
紗姫は覚悟を決めた。
紗姫のSEXの『真実の動画』と『偽物の写真』がスクリーンに並んだ。
構図もポーズも まったく同じだ。
違うのは男の顔だけ。
どちらが本物で、どちらが加工か?
写真に詳しくない者でも一目で解かる。
誰一人 声が出ない。
1000人いる会場が、無人のように静まり返った。