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「バラまかれた不倫写真は偽造」
会場にいる1000人は、はっきりと確信した。
しかも〈盗撮してまで〉偽造写真を作ったのは、伊崎信也だ。
「どういうことだ?」
「何なのそれ?」
後援会会員、支援者、有権者が騒めいた。
「私が御説明致します」
紗姫が すっくと立ち上がった。
「奥で! 二人で話そう!」
信也が慌てて声を掛けたが、紗姫は足を止めない。
スクリーンは白に戻っている。
珊瑚が紗姫にマイクを渡した。
凛々しい表情で壇上に立った紗姫は、1000人の来場者を見渡した。
「錦藤紗姫です。まずは、お見苦しい動画をお見せしたことをお詫び申し上げます」
紗姫は深く頭を下げた。
来場者は固唾を呑んで、紗姫の言葉を待っている。
「私は、身に覚えのない不倫の汚名を着せられました。
坂口秘書は故人となり、偽造された写真のみで、離婚を承諾させられました。
私は潔白です。不貞行為などしていません。これは伊崎信也が仕組んだ罠です」
来場者は、紗姫の言葉に真実を感じた。
婦人会の会長は「やっぱり」と言いながら、涙を流している。
「違う! 違う!」
信也が壇上に駆け上がって、紗姫からマイクを奪った。
饒舌にペラペラとしゃべり出す。
「確かに、あの動画は私が撮影した。でも夫婦なら あることでしょ。
東京と地元に分かれて住んで、たまにしか会えない。だから寂しくて。
紗姫がいないときに見ようと。そういうの、男性諸氏にはお判りですよね」
一部の男性は(まぁ、解かる気もする)と思った。
「その動画が流出して、誰かが加工した、という訳です。
私も騙されましたが、いま真実が解かりました」
信也は跪いて、紗姫に両手を差し出した。
「紗姫、二人でやり直そう。もう一度結婚して下さい」
この『再プロポーズ』で拍手が起こり、(上手く乗り切れる)と信也は思った。
だが、会場はシーンと静まり返っている。
(なぜだ?)と思う信也に、珊瑚が合図を送った。
『後ろを見てみろ』
「え!?」
スクリーンに、信也と陽奈がキスする姿が映っていた。
陽奈の自撮りだ。
左手を信也の腰に回し、右手でキスする二人を撮っている。
抱き合う場所は、海外のオリンピック会場だ。
場所で西暦が解かる。
この年、紗姫と信也は夫婦だった。
正真正銘の『不倫証拠写真』だ。