テラーノベル
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しーんとした部屋で篤久様が、カツサンドをひとつとフルーツサンドをふたつ取ると、私の左手にお皿を持たせる。
「ノルマな」
「ぁ……すみません。飲み物、入れますね」
私は持たせてもらったお皿をそっとローテーブルに置いて、ソファーから絨毯へと膝を落として……打撲のある両膝を曲げると、打撲痕を押さえつける形になり痛い。
「痛むだろ?飲み物もセルフで大丈夫。真奈美さんは怪我人だから、手伝うよ。どっちにする?」
「どっちも飲めばいい。そのあと、病院へ行かなくていいのかな?」
口を大きく開いたまま固まる遥香と、両手で口元を覆って固まる奥様…ううん、源田さんを放置した篤久様に続いて、ご主人様が私を見た。
「病院なんて、全然必要ないですから…日にちが経てば治ります」
「でもね、真奈美さん。僕としては病院へ行って欲しいんだよ。日にち薬ならそれが何日なのかっていうプロの診断書があった方が、訴状作成がやりやすいんだよね」
そう言った西郷先生は、カツサンドを持って…あ、食べた……
「美味しいな、これ。真奈美さんも食べなさい。打ち身だってなんだって、食べなきゃ治らない」
「ちょっと……ちょっと、どういうこと……?ママ?ママは……もうお金をもらっているってこと?どこにあるのっ?」
私に食べろと言う西郷先生はモグモグし、篤久様が飲み物をグラスに入れてくれて、母親に詰め寄る遥香……ある意味、カオスな空間だな。
「……もらっているって……遥香も知っているだけ、よ」
フルフルと横に首を振る源田さんの言いたいことは、私にはよく分からない。
私は分からなくていいことだし、興味もない…食べよ。
「ぃ…ただきます…」
そっとお腹の前で小さく手を合わせてから、お皿を持ってサンドイッチを眺めて、フルーツサンド→カツサンド→フルーツサンドの順に食べると決める。
「えーっと、お二人は中園から毎月いくらもらっていました?」
「「84万円」」
「ですね。婚姻期間の財産はそれできれいに半分ですから」
「そんなはずないでしょ⁉」
驚いて一瞬お尻を浮かせた遥香が、素っ頓狂な声を出した。
「いえいえ、バッチリきれいに半分です」
「証拠は?」
「ご提示出来ますが、まず口頭でご説明いたします。中園の収入は代表取締役社長としての年俸のみです。それが2000万円。12か月で割ると毎月166.6万円。それを半分にして83.3333万円になるので84万円を源田さんの通帳に毎月1日に入金しています。それを好きに使っていたのでしょう?中園が生活費は全て支払っているのですから。ま、というわけで財産分与は完了しています」
「そんな……それは嘘です。私にもそれくらい分かるわ」
「そうよね、ママ。隣町に巨大なマンションを一棟持っているでしょ?あれは中園建設工業のものでなく、個人のものでしょ?」
「そう、その賃貸収入があるはず…」
遥香母子はよく知っているんだな……美味しい…イチゴはあの日を思い出すな……
「私が所有するマンションのことをおっしゃっていますか?」
「「えっ⁉」」
「隣町のマンションは、私が所有しています。父が所有する不動産はここだけですが?」
篤久様の言葉に絶望感を漂わせ始めた母子に向かって
「ここは婚姻期間以前から中園所有のものですし、源田さんには関係ない財産ですね。財産分与について、他にご質問はございますか?」
西郷先生は次のサンドイッチを持ちながら聞いた。
「でも……でも、おかしいわよね……おかしくない?たった月に84万で、この屋敷を維持して使用人たちを雇って、車もあんなに維持して……」
「そうね、遥香……水道光熱費だってすごいんじゃないかしら……知らないけど……」
お金の話に食らいつく母子以外の人は、サンドイッチを食べ、アイスティーやオレンジジュースを飲んでいる。
「十分にやっていけるよ。篤久も立派な社会人だからね。大学卒業以来、ずっと生活費を入れてくれているからね」
「いくら?」
「そんなこと、言う必要はないと思いますが?」
「中園、言ってやってもいいんじゃないか?今日からどこかで暮らす二人なのに、水道光熱費も知らないようだからね」
「西郷は優しいな。まあ、篤久がうちに入れる金額は年々増加しているからね、今では年に1000万、まとめて入れてくれる」
ご主人様と篤久様が同額負担で生活を組み立てておられるってことだね。
私には参考にもならない金額だけれど……遥香母子にはどうなのだろうか?
コメント
7件
毎月84万なんていいなぁ〜。十分貯金できましたね
イチゴ🍓✨デートヽ(〃∀〃)ノヾ(*´∀`*)ノ思い出しちゃうね︎💕 また行こうね❤ꉂ🤭コレが過ぎたらラブラブ💕👫💕じゃないかなー?って 勝手に期待«٩(*´ ꒳ `*)۶»ワクワク
遥香親子の行く末が気になってワクワクして読んでしまう~😁