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「こいつ、ディルアIXって奴か……?」
後方から迫っていたのは、ディルアと記された人型機械のうちの一体だった。攻撃用機械では無く作業用機械にしか見えないが、石砕きの腕一本だけで襲って来ている。
当たった所でどうもしないが、何が起こるか分からない。規則的に動いていて避けやすいし、あえて攻撃を受ける必要は無いだろう。
腕を動かしている間ずっと地面が揺れ続けているのも気になるし、下手な真似はしない方がいい。
「アックさま、虎娘の所に退避を!」
「どうしてだ?」
「亀裂が入りだしていますわ! もしかしたら床が抜けるかもしれませんわ」
やられることは無いが、床が崩れるのは厄介すぎる。ただでさえ遺跡にたどり着けていないのに、そこから訳の分からない地下に落ちるのはごめんだ。
「ミルシェ! シーニャの所に急げ!!」
敵と”認識”されたかは定かでは無いが、今の時点で戦う必要は無い。おれとミルシェはシーニャが立っている所に急いだ。
「ウ、ウニャ!! アック、崩れ出したのだ! 早くするのだ!!」
「――ちっ、崩れるのが早すぎるだろ」
大した距離でも無く、シーニャの所にはすぐに移動出来た。振り向くと、ディルアと記された人型機械が真っ逆さまに落ちているのが見えた。
採石場だった空間が人型機械とコンベアもろとも穴底に落ちて行く。
「キャァッ!! あたしとしたことが何てこと……く、くぅっ――」
「ミルシェ!?」
「アック、アック! 何とかしないと落ちてしまうのだ!!」
走ることがあまり得意では無かったのか、ミルシェは足を引っかけ膝をついている。採石場の床のほとんどが落下していて掴まる所が見当たらない。
「お、落ちるのだ!!」
「ミルシェを包め! 《リーフハント》」
「ウニャッ?」
落ちかかっていたミルシェに対し、風属性の魔法を使った。攻撃魔法以外は滅多に使わないだけにルーンがとっさに浮かんでこなかったが、何とかなったようだ。
「か、間一髪でしたわ」
「ウニャニャ!? 葉っぱなのだ! 葉っぱが女を包んでいるように見えるのだ」
「……いい加減あたしの名前を言って欲しいのだけど?」
「女は女なのだ。ウニャ」
ミルシェの言うとおり、かろうじてだった。出口の床を残し、採石場は見る影も無くなっている。
「振動と人型機械ディルアか。あれも罠の一つだったのか?」
「何とも言えませんわね……。ですが、あの機械たちが作業以外の動きを見せたのは、どう見てもあたしたちを敵と認識したからなのでは?」
「そうだよな。先に来ているザームの連中が通過出来ておれたちだけが出来ないというのは、おかしな話になる」
識別番号付きの人型機械も気になる所だ。あの二体だけで終わるとは思えないし、他にも出て来そうな感じがしないでもない。
「……ウニャ? 何かが光っているのだ、ウニャ」
「さっきから人の腰を見つめて何かと思えば、光?」
「女の腰の辺りがピカピカ光って気になるのだ」
「ん? ミルシェの腰が何だって?」
ミルシェを救って休んでいたら、シーニャがミルシェの腰の辺りを気にしだしている。何か紛れているのか。
「アックさま、気になるようでしたら腰に手をお入れになっても構いませんわ」
「…………シーニャが入れるから大丈夫だ」
「ヒャッ!? い、いきなり入れないでくれる? 許可も出していないのに全く……ひゃんんっ!」
ミルシェの腰付近に容赦なくシーニャの手が入った。決しておかしなことをしているわけじゃないはずなのに、ミルシェがたまらず悶えまくりだ。
「シーニャ、何かあったか?」
「何かごつごつしたのが入っているのだ。何個もあるのだ」
「――ん、それって……魔石じゃないか?」
魔石が埋め込まれていた壁面通路の最後尾付近にいくつか魔石が転がっていた。光ってもいなく単なる魔石だと思われたので拾わせていたのだが、どうやらそれのようだ。
「ハァハァハァ……ま、魔石の罠に引っかかってしまった可能性が高いですわね」
「魔石を持って来たから人型機械が暴走したってことか?」
「魔石に含まれていた僅かな光の魔力に反応したのかも……いずれにしても、また同じ機械が出て来たら最初から攻撃されるのは間違いありませんわね」
転がっていた魔石はただの魔石にしか感じなかった。だがガチャで使う魔石とは異なるものだったし、人型機械を攻撃に転じさせる効果が含まれていた可能性がある。
「アック! 人間が近付いて来るのだ!!」
「あいつらか?」