久我Side
『貴方のこと、知らなきゃならない。』
俺の言葉にしばらく黙っていた小峠さんは諦めたかのように溜息をついた。
『はぁ…バレたなら、仕方ないか。いいよ、教えてあげる。』
彼は一息ついてから話し始めた。
『俺は…人に作られた人間。ロボットって言うと少し違うが…まぁ、AIって言ったら分かりやすいか…』
それ以上は話したくたくないようだったが、俺にはまだ一つ疑問が残っていた。
『じゃあ、もう一つ教えてください。さっきの外道は天王寺組から指示を受けてたのを知ってますか?』
小峠さんは首を傾げた。
『いや、そこまでは聞いていなかったから知らないな。』
『そうですか…じゃあ、何で天王寺が指示を出していたのか聞いていましたか?』
小峠さんは首を横に振った。
『小峠さん、天王寺組が指示を出した理由は多分…
貴方を連れ去ろうとしていたってことです。』
俺の言葉を聞いた小峠さんは半歩後ろへ下がった。
慌てて俺は言う。
『あ、いや…俺は全然関係ないですよ!?むしろ被害者側…なんですけど。』
俺の言葉に小峠さんは言った。
『いや、そこは分かっているんだが…やっぱり疑ってしまう…』
人間に造られた小峠さんは、造った人間同様疑り深いようだった。
『で、小峠さん。天王寺組に狙われてる理由って何か思い当たりますか?』
案の定、小峠さんには心当たりがあるようだった。
『あ〜…俺色々と狙われてるからな。俺を造るには現代の技術じゃほぼ不可能。ついでに俺を造った研究者も亡くなってるから。技術とか調べたいだろうし、価値もある。まぁ、人間じゃないしぶっちゃけどうでもいい。』
『いやどうでもよくないでしょ。』
『え?』
流石に小峠さんの価値観には反対した。人間じゃないとかなんだとか…
『あんたは自分のこと人間じゃないとか思ってるけど俺から見れば普通に人間だ。そりゃあ、一般的に見ればあんたは価値のあるモノだとしか見られないだろうよ。でも、あんたと親しくしていた人間ならどうよ?全員、人間だと思ってるはずだ。真実知ろうが知らなかろうが関係ない。あんたは小峠華太っていう【人間】だろ?』
俺の言葉に小峠さんは目を丸くした。だが、その後、少し俯いた。
『でも結局、狙われてるならここを離れなきゃならない。自分は人間じゃないから…感情は無いからって思えなきゃやっていけない…。』
俺は小峠さんがここを去ろうとしていたことに驚いた。でも…俺は嫌だ。俺はその場から去ろうとする小峠さんの手を掴んだ。
『でもあんた…』
小峠さんはこちらを振り返った。今までに見たことのない、哀しみで溶けそうな瞳をしていた。
『あんた、感情あるんでしょ?感情無いなんて割り切って一人になったりしたら今度こそ何されるか分からない…!しかも狙ってる奴らは全員、あんたのこと人間とすら思ってないんでしょ…!?それ分かって…ッ…一人になるなよ!!』
俺の大声に驚いたのか小峠さんの表情が固まった。その後、彼が口を開いた。
『久我くん…』
彼は笑っていた。少しはにかんだような笑みが、俺には酷く美しく見えた。
俺は小峠さんの手を先程よりずっと強く握った。
『絶対…一人にしないから。』
俺の言葉を聞いた小峠さんは目を丸くした。
『なにそれ?愛の告白?』
『…ボケないで下さい。』
軽くツッコミを入れながらふと思う。いやさっきの、告白だったなって。顔が赤くなるのを感じた自分がいた。
『久我くん、大丈夫か?顔赤いし、熱?』
『ち、違います!ほら、さっさと行きましょ!』
顔の熱さを悟られないよう半ば強引に小峠さんの手を引っ張る。彼の手には一層力が宿っていた。それは物理とかじゃなくて、絶対無下にしちゃいけない彼の感情。強い思いが伝わってきた気がして俺はその手を更に強く優しく握った。
その中で不穏な影が動いていたことを俺はまだ知らなかった。
コメント
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現代の技術ではかぶちゃと同じAI人間を作ることがほぼ不可能だから情報が少しでも出たらすぐに狙われてしまう だから今までは人間じゃないから感情がないと割り振っていたんですね☺️