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久我Side
襲撃の件があった以降、俺は小峠さんと行動することが増えていた。事務所近くまで迎えに行ったりして、小峠さんを危険な目に合わせることがないよう努めていた。しかしそれも、圧倒的な強者の前では何の意味も成さなかった。
とある夜、俺はいつも通り小峠さんと話しながら家まで送る最中だった。その時、異様な気配を背後に感じた。後ろを振り返る間もなく、銃声音が聞こえた。俺と小峠さんはそれを間一髪で躱した。
そして俺は、闇の中から現れた人影に呆然とした。
『お前は…朝倉…!』
あろうことか天王寺組の朝倉潤が現れたのだ。朝倉は溜息をついてこう言った。
『何や…当たったと思ったんやけどな。流石の反射神経や、久我虎徹。』
朝倉の顔から感情は見られない。俺は小峠さんを庇うように前に進み出た。見れば小峠さんは何か言いたげな様子だったが俺はそれを手で制した。
『朝倉…何の用だ。』
俺の問いに朝倉はこう答えた。
『そんなん分かってるやろ?本当は俺が来る予定やなかったんやけど…あいつミスしてしもうたからなぁ…まぁ、ええわ。お前は見逃したる。だから…』
まぁ、そうくるよな。前の襲撃犯から聞いていた話は本当だったか。
『そう言われてすんなり渡せるかよ』
『まぁ、普通はそうくるやんな。…お前は俺らがどうして小峠を狙ってるか知らんやろ?』
確かにそうだった。狙われる理由…小峠さんの推察では技術だとか言っていたが…
『…何だよ。』
『なんや、意外と素直なんやなぁ。じゃあ教えたる。小峠はな、』
『……は?』
俺は思わず小峠さんの方を振り返った。小峠さんは何も反応しない。
『小峠さんが、何の理由も無く人を傷つける訳ねぇだろ!!』
『と言われてもなぁ…ホンマにうちの構成員は何もしいひんかったで。小峠が一方的に殺したんや。』
朝倉の言葉に俺は目の前が真っ暗になった。そんなこと、小峠さんはしないと、信じたかった。
俺は小峠さんの肩を掴み、必死に言った。
『小峠さん…そんなこと…ッ…してないですよね…!?朝倉の言ってることって、全部嘘でしょ…!?貴方がそんなことするはずは…』
しかし小峠さんの言葉は残酷なものだった。
『……本当だ…すまない、久我くん…』
『そんな…嘘でしょ…!』
冷静になどなれなかった。この人のことを知り尽くしてるつもりだったから。でも俺は、そうやって彼を傷つけていたのかもしれない。すると、背後から声が掛かった。
『話は終いや。小峠、お前は俺が殺したる。まぁ、殺すというより【壊す】んやけどな。』
その言葉を聞いた小峠さんの目が見開かれた。
『お前、俺がAIだって知って…!』
『そりゃそうや。アンドロイドやったら壊せばすぐに動かなくなるやんな。まぁ、ここには味方もおらん。そろそろタイムリミットや。』
『小峠さんッ…!』
俺は引き止めたくて、小峠さんの名を呼んだ。
『…久我くん、すまない…』
朝倉は小峠さんに銃口を向けた。そのまま、引き金が引かれる。
小峠さんが人を殺してるって聞いて驚いた。信じなければ良かったなんて思った。けれど、一緒に話した時の小峠さんだって嘘じゃなくて…信じたかった。人を傷つけていたとしてもいい。俺は…俺は、それでも…!
小峠Side
俺が目を瞑ったと同時、銃声が聞こえた。なのに、鉛玉が突き抜けてコードを切るような音は鳴らなかった。その時、身体の浮遊感に気づいた。人並みより少し高い体温。それは何度も触れたあの温かさとよく似ていた。
『…くが…く、ん…ッ!』
俺は久我くんに抱きかかえられていた。
朝倉は目を見開いて驚いている。
『これでも当たらんのか……!?ってか、どないしてさっきの銃弾を…』
そして俺も驚いた。助けてくれないと思っていたから。俺は久我くんに問う。
『なん、で…ッ…』
『そりゃ反射的に体動くでしょ。それより掴まってて下さい。落ちたら死にますよ。』
と言った途端久我くんの動きが急に速くなった。朝倉の早撃ちを完璧なタイミングで躱していく。俺を抱えているから、いつもより格段に動きにくいはずなのに。そして久我くんは俺を抱えたまま、近くの壁に飛び乗った。久我くんは朝倉を見下ろしてこう言った。
『次は覚えとけよ、朝倉。』
『はぁ!?おい、待つんや!』
そして踵を返して朝倉とは逆方向に突っ走ろうとした時、朝倉の声が聞こえた。
『久我。お前はなんで、そんなアンドロイドを庇うんや?』
その言葉に久我くんは立ち止まった。その通りだ。人間じゃないことに加えて、人を無差別に傷つけるアンドロイドを庇う理由など何ひとつも無い。すると久我くんは朝倉の方に顔だけ向けてこう答えた。
『好きだから。』
そのまま、久我くんはその場から俺を連れて走り去った。朝倉の声が聞こえた気がしたが、気の所為だったのかもしれない。
人気の無い路地まで走ってきたところで、久我くんは俺を下ろした。
『すいません、強引に…』
何故か申し訳無さそうな彼に俺は慌ててお礼を言う。
『あ、気にしないでくれ。………ありがとう…。』
その言葉を聞いた久我くんの表情が少し明るくなった。
『とりあえず、難は逃れましたね。安全な場所に移動しましょう。』
そう言って久我くんは俺の手を握った。
その時、俺の中で何かが脈打った。
『久我くん……!』
もう、傷つけたりしない。だから俺から…
視点変わると凄いことなりますね。
リクエスト募集中なので、もしよければ案下さい。
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