「お兄ちゃん?今大丈夫?終わってる?」
そう話始めたリョウに、スピーカーにするように手振りで伝えると彼女はすぐにスマホをテーブルに置いた。
‘終わってる。俺たち今日はここのホテルに泊まるんだ。今チカの両親を見送ったところ’
「おめでとう、お兄ちゃん」
‘ありがとう’
「忠志くん、おめでとう」
‘ああ、颯佑も一緒なんだな。ありがとう’
「おっちゃんたちは?」
‘まだいる’
「忠志くん」
‘どうかしたか?’
「泊まる部屋かどこかでおっちゃんたちも一緒に話せる?忠志くんとチカさんには悪いけど10分ちょうだい」
‘…すぐに折り返す。俺たちが揃って聞いた方がいいってことだな’
「そう。待ってる」
忠志くんがどう思ったかはわからない。でも何かを察して静かに折り返すと言ってくれた。
暗くなった画面を不安気に見つめるリョウを膝に乗せると
「心配することはない。娘の幸せを願わない親はいないから…リョウが幸せなら大丈夫」
そう伝えこめかみにキスをした。
20分ほど経ってから部屋の空気を揺らした音にびくっと肩を跳ねさせたリョウを抱き寄せる。
忠志くんやチカさんと連絡を取り合う時にこんな様子は見せない。
母親がいるという場面で、必要以上に気づかい緊張感を見せるようになってしまった。
「大丈夫だ。リョウは聞いてるだけでもいいからな」
指を絡め、しっかりと手を繋ぐと
「はい、忠志くん」
悪い話ではないと、明るい声で応答する。
‘お待たせ。今4人で部屋に入ったから、ゆっくり聞くよ’
「時間取ってもらってありがとう。チカさん、おめでとう。お邪魔してごめん」
‘あはは、いいのよ。ありがとう。私も聞かせてもらっていい話?’
「チカさんもいないと絶対にダメな話」
‘そう。良子ちゃんもいるよね?’
「いる」
‘颯佑くん、いい話ならいいけど…悪い話なら今日みたいにおめでたい日に遠慮して欲しいんだけど…’
出た…おばちゃんだ。
コメント
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お母さん… 悪い話をおめでたい日にわざわざ連絡することなんてする2人じゃよぉ😖