テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ひまなつの腕に身を委ねたまま、いるまが小さく息をつく。
「……なつ兄、ちょっと話したいことがあるんだ」
みことはそれを聞き、すちの方に向かって小さく頷いた。
「俺も、すち兄ちゃんと話したいことがある」
ひまなつの視線を一瞬だけ交わし、安心したような表情を浮かべるみこと。
すちは微笑みながら、「じゃあ行こうか」と答え、みことの手を握る。
二人は静かにリビングを後にし、それぞれの自室へと向かう。
みことはすちの手を握ったまま、普段とは違う少し緊張した足取りで歩く。
すちもまた、その手の温もりを感じながら、真剣な表情でみことを見つめていた。
部屋に入ると、扉を閉めて互いに向かい合う。
外からはらんやこさめの笑い声が微かに聞こえるが、二人の世界はそれを遮断したかのように静かだった。
みことはすちに視線を合わせ、深呼吸する。
「……話したいこと、ちゃんと聞いてくれる?」
すちは優しく頷き、手を差し伸べた。
「もちろんだよ。みこちゃんの言葉、全部聞く」
こうして二人は、普段は口にできない想いを、静かで穏やかな空間の中で語り始めた。
みことは小さく息をつき、すちの目を見つめながら、ぽつりぽつりと語り始める。
「……母さんは、誕生日に俺たちを置いて家を出たんだ。そのまま二度と会えなくなっちゃったんだ…」
すちは黙ってうなずき、みことの手を握る。みことは小さく息を吸い込み、続けた。
「家を出る時、置いていかないでって言ったら……産まなきゃ良かった、あんた達のせいで不幸になったって……」
声が震え、目にかすかに涙がにじむ。
すちはそっと頬に手を添え、みことの肩に軽く触れる。
「その後、親戚中をたらい回しにされて……ストレス発散って、殴られたり、切られたり、煙草を押し付けられたりもした…」
みことの声は淡々としているが、その瞳には深い傷が見える。
「声を上げると、余計に怒られたり、面白がられたりして酷くなった。だから……何も感じないように、感情を押し殺してたんだ。気づいたら、痛みにも鈍感になってたみたい……」
その言葉を聞き、すちは胸が締めつけられる思いだった。
「……だから、あの時クラスメイトに切られても……何も感じなかったんだね」
すちの声は震えながらも、優しさと理解に満ちていた。
みことは黙って小さく頷く。
「……うん」
すちはみことの手を両手で包み込み、目を合わせて優しく微笑む。
「…話してくれてありがとう。これからは俺の事を頼ってくれなら嬉しいな」
みことの肩が少しだけ緩み、ほんの少しだが安堵の色が浮かぶ。
過去の痛みを語ったその声には、長く閉ざされていた心の扉が、少しだけ開いた証があった。
みことはすちの目をじっと見つめ、小さな声で囁いた。
「すち兄ちゃん……いるまくんみたいに、おまじないしてほしい」
すちは一瞬照れくさそうに目を逸らすが、みことの真剣な瞳に押されるように、ゆっくり頷いた。
「……わかったよ、みこちゃん」
すちはそっと手をみことの頬に添え、額にも軽く触れる。
少し息を詰めながら、優しく口付けをする。みことは体を緩め、目を細めて微笑む。
「んへへ……」
みことの口から小さな笑い声がこぼれる。
その柔らかい表情に、すちの胸も自然と温かくなる。
「……これで、安心できるかな?」
すちは額に軽くキスを落としながら微笑む。
みことはほんの少し頷き、すちの胸に顔を埋める。
「うん……ありがとう、すち兄ちゃん」
二人の間に流れる静かな時間は、過去の傷を忘れさせるかのように穏やかで、暖かかった。
いるまはひまなつの前でゆっくりと息をつき、目を伏せながら話し始めた。
「……昔のこと、少し話す」
ひまなつは黙って頷き、手を握りしめて聞く態勢を取る。
「親戚にたらい回しにされてさ……みこととこさめと離ればなれになってた時、興味本位で身体を触られたり、同じくらいの歳の男とかその親とかに、性的なことをされてた…」
言葉を絞り出すように、いるまは静かに続けた。
「逃げようと殴ったりしたら、もっと酷いことされて……ずっと怖くて、地獄みたいで、早く殺してほしいって思ってた…」
ひまなつは顔を強張らせ、ぎゅっといるまの手を握り返す。
「……こさめとみことと再会した時、二人とも疲れ果ててて、みことはほとんど言葉が出なくて、無表情で無関心になってた。変わり果てたみことを、以前のように戻したくて……俺とこさめは適当におまじないとか言って、キスとかしてただけなのに……本当にあいつよく覚えてたよな」
いるまは少し肩をすくめ、笑みを浮かべるが、瞳はまだ過去の影をたたえていた。
ひまなつは静かにいるまの肩に頭を寄せる。
「……辛かったな、いるま……でも、こうして話してくれてありがとう」
いるまは小さく頷き、ひまなつの肩に頭を預けたまま、少し安心した表情を見せる。
その場には二人だけの静かな時間が流れ、過去の痛みを分かち合うことで、心に少しの安堵が生まれていた。
ひまなつは肩の力を抜き、少し茶化すように笑いながら言う。
「いるま、おまじない欲しい時は、いつでも言えよ?」
その声は軽く冗談めいているが、瞳の奥には優しさが宿っている。
いるまは少し顔を背けながらも、小さく、かすれた声で呟いた。
「……欲しい……」
ひまなつは微笑みを深め、静かにいるまの頬に口を寄せ、額や目元にもそっと唇を触れさせる。
その温かさに、いるまの肩の力が少しずつ抜け、心がほっとほどけるのが感じられた。
ひまなつは優しく微笑みながら、いるまを包み込むように抱きしめたまま、彼が安心できる時間をゆっくりと作るのだった。
いるまはひまなつの温かさに触れ、少し躊躇しながらもそっと顔を近づけた。
彼もまた、ひまなつの頬や目元に軽く口付けを返す。
二人はしばらく見つめ合い、その瞳に互いの気持ちが映るのを感じる。
やがて自然な流れで唇を重ね、静かで柔らかなキスを交わした。
抱き合いながら、心の奥まで温かさが伝わり、二人だけの穏やかな時間がゆっくりと流れていく。
(…あったけぇ……)
いるまはひまなつの体温と唇の柔らかさに触れ、心の中で呟きながら、そっと浅いキスを何度も重ねる。
ひまなつもまた、自分の中に芽生えている感情が弟へのものとは違うことを自覚していたが、いるまの唇を離すことはせず、優しく受け止め続けた。
二人の間には、互いの呼吸や鼓動を感じる静かな甘さと、心地よい距離感が漂っていた。
ひとしきり唇を重ね合った後、ひまなつがそっと息を整えながら、「舌、入れてもいい?」と小さく尋ねる。いるまは少し照れくさそうに目を逸らしながらも、「好きにしろよ」とぶっきらぼうに答える。
その言葉に、ひまなつは思わずくすっと笑みを零す。
ひまなつはゆっくりと唇を重ね直し、指先でいるまの頬を優しく撫でながら舌を絡め始める。
いるまは最初戸惑いながらも、ひまなつの柔らかく滑らかな舌を受け入れ、絡め返す。お互いの呼吸は徐々に荒くなり、口内の温度と湿度が一層濃密に混ざり合う。
だんだんと酸素が薄く感じられ、瞳は潤み、体中の感覚がひまなつに集中していく。ひまなつはいるまの反応を感じながら、そっと唇を離し、短く息を吐く。
いるまは蕩けるような表情でひまなつの胸に顔を埋め、ゆっくりと呼吸を整える。
胸の温かさ、柔らかさ、そしてひまなつの鼓動を感じながら、心も体も安堵と甘さに包まれていった。
コメント
1件
いつも本当にありがとうございます😊今日も無事尊死しました!いやあ、、、、、チア組神ですね・:*+.\(( °ω° ))/.:+