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「今日、俺と学校サボる?」
ひまなつが甘く囁くように聞くと、いるまは一瞬戸惑い、少し考え込む。
胸の奥が熱くなるのを感じながら、しばらくして小さく頷いた。
その瞬間、ドアをノックする音が響く。すちとみことだ。
「学校、行けそう?」
ドア越しに声が聞こえる。ひまなつはいるまをギュッと抱きしめ直し、低く笑う。
「今日はサボるわー。体調不良ってことにしといて」
その言葉にいるまは胸が高鳴るのを感じ、ひまなつの温かさと体温に安心しつつも、心の奥で何かがざわつく。
ドア越しで静かに立ち去るみことの声が耳に届く。
「素直になってね…」
短い言葉だったが、その鋭くも優しい響きに、いるまは思わずドキリとする。
鈍いのか、それとも鋭いのか――みことの観察力に一瞬たじろぐものの、ひまなつから離れたくない気持ちと、さっきのキスで芽生えた照れが一気に心を占める。
頭の中は混乱しながらも、身体はひまなつの温かさにしっかり包まれ、居心地の良さに甘えてしまう。呼吸が少し荒くなるのを感じながらも、いるまはその場に静かに身を委ねるのだった。
両親は出張で不在、兄たちも学校へ。
閉ざされた空間にいるまの鼓動だけがやけに大きく響く。
「寝るか?」
ひまなつが優しく背中を撫でながら囁くと、いるまは目を逸らしながらも小声で呟いた。
「……もう一回しろよ…」
その言葉にひまなつは目を細め、柔らかく笑みを浮かべた。
「仕方ねぇな」
そう言って、ためらいなく再びいるまの唇を深く塞ぐ。
熱を帯びた口づけは、先ほどよりもずっと濃厚で、舌が触れ合った瞬間に全身が痺れるような感覚が走る。
ぬるりと絡まる舌先、吸い合うように唾液が混ざり合い、二人の呼吸が次第に乱れていく。
「っ……ん……」
いるまは息を漏らしながらも、もっと欲しいと本能的に思ってしまう。
気づけば身体をすり寄せ、下腹部に熱を帯びた自分の欲望をひまなつの腹に擦り付けていた。
ひまなつは一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐにその行動に頬を赤らめ、唇の端を上げた。
「……可愛いな、お前」
いるまは自分の無意識の行動に気づき、顔を真っ赤にしながらも唇を離せない。
胸の奥に溢れる欲求と、抑えきれない甘えが混ざり合い、ひまなつの温かさに縋るように舌を絡め続けた。
――唇も、体も、もう離れたくない。
そう強く思ってしまうほど、二人の距離は熱を帯びて近づいていった。
ひまなつの手がゆっくりとシャツの裾に潜り込み、いるまの熱を帯びた身体に触れる。
温かな指先が這うように腹を撫で、そして下へと滑っていく。
口づけは途切れないまま、ひまなつの掌がいるまの硬く張りつめたものを包み込む。
「……っ!」
思わずいるまの喉から短い声が漏れ、肩が震える。
ひまなつは口の端で小さく笑いながら、握ったそれをゆっくりと撫で上げる。
指が先端をなぞるたび、濃密な唾液の混じる音と共に、いるまの呼吸は荒くなっていった。
「んっ……ん……っ、はぁ……っ……」
堪えようとしても、声は止められない。
いるまはひまなつの服をぎゅっと掴み、縋るように引き寄せる。
ひまなつは唇を離さず、甘く舌を絡める。
「……もっと気持ちよくしてやるから……力抜けよ」
その低く艶のある声に、いるまの背筋がぞくりと震え、腹の奥から熱がせり上がってくる。
もはや理性は薄れていき、ひまなつの手の動きに全てを委ねてしまっていた。
ひまなつは唇を離し、いるまの潤んだ瞳を覗き込んだ。
「……怖くないか?」
囁くような問いかけに、いるまは小さく頷いた。完全に怖くないわけではなかったが、それ以上にこれまで何度も守られてきたひまなつの優しさを知っていた。だから信じられる。
ひまなつは安心させるように頬を撫で、ゆっくりといるまのズボンをずらしていく。続けて自分のズボンも下げ、二人の熱をさらけ出す。
ひやりとした潤滑剤を手に取り、指先で馴染ませると、いるまの熱と自分の熱を重ねるように擦り合わせた。
「……っ……!」
ひまなつの掌が二人分を同時に包み込み、上下に擦るたび、ぬるりとした音が交じり合う。
「んっ……あっ……っ……」
いるまは喉を震わせ、必死に声を抑え込もうとしたが、気持ちよさに逆らえず、断続的に漏れてしまう。
「……我慢しなくていい。もっと声、聞かせろよ」
ひまなつは唇を寄せ、耳元で囁きながら擦る動きを緩めない。
二人の熱が溶け合い、擦れるたびに快感が波のようにいるまを打ち付けた。
服に指を食い込ませ、背を反らしながらも、いるまはもう耐え切れずに――
「んぁ……っ、なつにぃ……!」
と、ひまなつの名を呼びながら甘い声を漏らしてしまった。
ひまなつはいるまの耳元に顔を寄せ、熱い吐息をかけながら舌先で耳の縁をなぞった。
「ん……っ……や、ぁ……っ」
耳から伝わる鋭い快感に、いるまの声が一段と甘く掠れる。
そのまま柔らかく耳朶を甘噛みし、唇で吸い上げたり舐めたりと執拗に刺激を与える。じゅるり、と濡れた音が耳元で響き、いるまは耐えきれず身をよじった。
「なつ、に……っ……だ、めぇ……っ……っ」
潤滑剤で滑らかに擦られる二人の熱と、耳に与えられるくすぐったいほど鋭い快感が重なり、全身が痺れるように震えた。
「もっと感じろよ、俺だけ見てろ」
ひまなつは甘い囁きと同時に手を強く握り込み、擦り上げる速度を上げる。
「んんっ……っ、あ、ぁあっ……も、もう……っ……!」
限界が近いと悟った瞬間、ひまなつは耳の奥に舌を差し入れるように舐め上げ、強く吸い付いた。
その直後――
「なつ……っ、で、でるっ……!」
いるまは快感に突き上げられるように背を弓なりに反らし、ひまなつと重なった熱から一気に果ててしまった。
二人の腹の上に白濁が跳ね、荒い呼吸だけが部屋に響く。
ひまなつはまだいるまを抱きしめたまま、彼の頬にキスを落とし、耳元に囁いた。
「……よく頑張ったな。かわいい声、いっぱい聞かせてくれてありがと」
ひまなつはまだ余韻で震えているいるまの髪を撫で、荒い息を整える。
「……今回はここまでな」
その言葉と同時に、優しく唇を重ねる。深く求めるのではなく、余韻を閉じ込めるように柔らかな口付けだった。
「……ん……」
いるまは力なく応じ、ひまなつの胸に顔を寄せる。吐息が肌にかかり、くすぐったいのに、妙に愛おしく感じた。
「まだ足震えてんじゃん。……かわいい」
ひまなつは苦笑しながら、いるまの背を撫でてやる。
「うるせぇ……」
いるまは小さく呟いたが、その声には怒気はなく、ただ照れと甘えが滲んでいた。
二人の間に流れるのは、言葉よりも温度。
お互いの体温と心音を感じながら、ひまなつはいるまを抱き寄せ、もう一度短く唇を重ねた。
「……ちょっと待ってろ」
そう言ってタオルを手に取り、いるまの体を拭き始める。汗と緊張の混じった熱を帯びた肌を、優しくなぞるように。
「ん……冷た……」
いるまが小さく眉を寄せると、ひまなつは苦笑しながら「我慢しろ。すぐ終わるから」と声を掛けた。
耳の裏、首筋、胸元、下腹部──どこも丁寧に、乱暴にならないように時間をかけて拭っていく。
「はい、こっちもな」
ひまなつは自分の服も整えつつ、いるまのズボンを直してやる。恥ずかしさで顔を赤くして「自分でできる……」と抵抗するいるまを「はいはい」と軽くいなして、最後まで整えてやった。
タオルを片付けたあと、ベッドにいるまを寝かせ、その隣に腰を下ろす。
「ほら、水分。ちゃんと飲め」
差し出したペットボトルを、いるまは少し顔を逸らしながらも受け取って喉を潤した。
「……なぁ」
「ん?」
「……ありがと」
小さく吐き出されたその一言に、ひまなつは頬を緩め、髪を撫でる。
「どういたしまして。……今日はもうゆっくり休め」
そう言いながら、布団を肩まで掛けてやり、自分も隣に横たわった。
布団に潜り込んでしばらく、いるまは落ち着かない様子で寝返りを打った。
「……なぁ、」
「ん?」
「……見えねぇとこでいいから、痕……つけてほしい」
一瞬、ひまなつは驚いた顔をしたが、すぐに柔らかく目を細める。
「……へぇ。そんなこと言うとは思わなかったな」
「ち、違ぇし……ただ、なんか……安心するから」
頬を赤らめて言葉を絞り出すいるまに、ひまなつはゆっくりと体を寄せた。
「わかった。じゃあ……ここなら誰にも見えねぇな」
そう囁き、肩口に唇を押し当て、軽く吸い上げる。熱を帯びた痕がじわじわと浮かび上がってくる。
「っ……」
いるまの身体がわずかに跳ね、息が乱れる。
「鎖骨も……いいか?」
返事を待つ間もなく、鎖骨のくぼみに唇を落とし、舌でなぞってから再び吸い上げた。くっきりと痕が刻まれていく。
「は……っ、……っ」
声を押し殺しながらも、いるまの瞳は潤み、熱を帯びていった。
最後にひまなつは胸元に唇を這わせ、またひとつ、深めに痕を残した。
「……満足したか?」
囁くような低い声に、いるまは顔を真っ赤にしながら布団を握りしめた。
ひまなつは微笑んで額に軽く口付け、痕をつけた場所をそっと撫でてやった。
いるまの身体を抱き寄せるようにし、耳元へ口を寄せる。
吐息が触れるほど近くで、低く、けれどはっきりとした声が落ちる。
「……好きだよ。恋愛的な意味で」
その一言に、いるまの身体がびくりと震えた。
「……っ……」
声が詰まり、喉から先に言葉が出てこない。けれど胸の奥に広がる熱と、どうしようもなく早くなる鼓動は抑えられなかった。
いるまは何も返せないまま、ひまなつの胸に顔を埋める。布地越しに感じる温かさに縋るように、小さく小さく頷いた。
ひまなつはその仕草に目を細め、そっと背中を撫でながら耳元へ再び囁く。
「……ありがとな」
それ以上は何も言わず、ただ互いの温もりを感じ合うように身体を寄せる。やがているまの呼吸は次第に穏やかになり、ひまなつもそのまま目を閉じた。
二人は互いの存在を確かめ合ったまま、静かに眠りへと落ちていった。