テラーノベル
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晴永は二人のやり取りを聞きながら、胸の奥が少しだけ軽くなるのを感じた。
誰もが、誰かに決められたままではいたくないと思っている。
創業家だろうと、大企業の令嬢だろうと……その恋人だろうと、結局は同じなのだ。
「……同感だ」
晴永がそうつぶやくと、瑠璃香が意を決したみたいにうなずいた。
「私もっ! ちゃんと向き合いたいです」
晴永が隣を見る。
瑠璃香の瞳には、まだ迷いや不安が残っているように見えた。
けれど、その視線は驚くほどまっすぐで――。
少し前までのように、傷つくことを恐れて目を伏せてしまう彼女はいなかった。
まるで、この先に待つものが何であろうと、自分の足で向き合うと決めたみたいだった。
「正直、まだ怖いです。創業家とか、会社とか、私には遠すぎて……。でも」
瑠璃香はぎゅっと膝の上で手を握る。左手薬指の指輪に触れているのは無意識だろうか。
「晴永さんがそこまで覚悟を決めてくださってるのに、私だけ怖がって逃げるのは嫌です」
「瑠璃香……」
「ちゃんと……みんなから認められる形で、晴永さんの隣にいたいです」
その言葉が、まっすぐ胸へ落ちてくる。
晴永は、ゆっくりと瑠璃香の手へ触れた。
びくりと彼女の肩が揺れる。
けれど、振り払われることはなかった。
「……ありがとう」
晴永が低く言うと、瑠璃香は少しだけ目を潤ませながら笑った。
「こちらこそ、です」
その光景を見ていた晴留が、どこか安心したように息を吐く。
「よかった。ようやく全員、同じ方向を向けた感じがする」
「まぁそうはいっても……角実屋フーズも藤井田ホールディングスも大きな会社だし……簡単にはいかないだろうけどねぇ」
良介がのほほんと、だが現実的に返す。
「うん。けどさ、だからこそじゃない?」
晴留は笑った。
「逃げるんじゃなくて、ちゃんと戦うならさ。まずはここにいるみんなが同じ側に立たないと」
「そうだねー。一致団結大事だもんねー」
ふふっと笑った良介に、千紗が「ホント、良介ってば緊張感がないんだから」と苦笑した。
そのやり取りを見ながら、晴永は小さく息を吐く。
少し前までなら考えられなかった光景だった。
背負うものも、抱えている苦しみも、守りたいものも……誰ひとり同じではない。
それでも今は、同じ方向を見ている。
それぞれ別の場所で立ち止まっていた人間たちが、こうしてひとつのテーブルを囲んでいた。
問題は何ひとつ解決していない。
これから向き合わなければならない相手は大きい。
角宮家も、藤井田家も……長い年月をかけて築かれてきた家だ。簡単に引き下がる相手ではないだろう。
それでも……晴永はもう、一人ではなかった。
隣を見る。
瑠璃香と目が合った。
彼女は少しだけ照れたように笑う。
晴永もまた、自然と口元を緩めていた。
――今度こそ、逃げない。
一人ではなく、同じ側に立ってくれる人たちと共に戦うために。
コメント
2件
一致団結(○︎´Δ`人)
うわあ、いい場面でしたね……! 晴永さんと瑠璃香さんがお互いに「覚悟を決めた」その瞬間が、すごく丁寧に描かれていて、胸が熱くなりました。特に「私だけ怖がって逃げるのは嫌です」という瑠璃香さんの言葉、彼女の成長が感じられてグッときました。そして晴留さんの「同じ側に立たないと」という台詞も、これまでの積み重ねがあるからこそ響いてきます。それぞれ違う背景や事情を抱えながらも、同じ方向を向いてテーブルを囲んでいる――そんな“仲間”の空気感が沁みました。次が気になります!
#素人作品
YAMATO
824
#ほのぼの
#大人の恋
E―さん
29