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鷹槻れん

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鷹槻れん

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YAMATO
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五人がイタリアンレストランCielo Serenoを出た頃には、すっかり夜の帳が下りていた。
街灯が、店舗前の歩道を淡く照らしている。
店内にいる間に降り始めたのだろう。
空からは細かな雨粒が絶え間なく落ちてきていた。
土砂降りというほどではない。
だが、傘なしで歩くには少々厄介な降り方だ。
そのせいか、繁華街の中にあるはずの通りも、いつもより人影が少ない。
この辺りにはアーケードが設置されていない。
急な雨に足を止めた人々が建物の中へ避難したのか、普段なら賑わう通りも、今夜ばかりはどこか静かだった。
「うわ、天気予報、雨なんて言ってなかったよね?」
最初に気付いた晴留が空を見上げた。
「ちょっと待ってて」
そう言うなり店の中へ駆け戻る。
ほどなくして二本のビニール傘を抱えて戻ってきた。
「店の置き傘。とりあえず使って?」
「二本しかないの?」
良介の問いに、晴留が苦笑する。
「だって飲食店だもん。学校とかじゃないし……そんなにたくさん用意してないよ」
確かにその通りだった。
「お前のはあるのか?」
「えっ」
その様子に、晴永は弟が、自分用の傘も含めて渡そうとしてくれているのだと気が付いた。
晴永は小さく息を吐くと、瑠璃香へ視線を向ける。
「瑠璃香」
「はい」
「ここで待っててくれるか?」
指差したのは店の軒先だった。
「車取ってくるから」
「でも――」
「近くのコインパーキングに停めてる」
晴永は晴留から、「とりあえず……」と言い置いて傘を一本受け取った。
「すぐ戻るから」
それだけ言い残し、小走りで駐車場へ向かっていった。
雨粒が傘を叩く音と、パシャパシャと水音を響かせる足音が、少しずつ遠ざかっていく。
「じゃあ、私はタクシーで帰ろうかな」
千紗がそう言うと、良介が当然のように口を開いた。
「送ってく」
「いや、実家だから大丈夫だって。それに……良介、車で来てないじゃん」
「えー? だから僕もチィと同乗するんだってばー」
即答だった。
「意味分かんない」
「なんで? 僕が車の中からチィを見送れば、送ったことになるじゃん? 僕はチィが家に入るのを見届けたいんだよー」
二度目も即答。
千紗は思わず吹き出した。
「なによ、その屁理屈」
「彼氏だから」
「っ!」
さらりと言われて、千紗が恥ずかしそうに頬を赤く染める。
「良介って変なところで強引だよな」
晴留が笑う。
「へへっ。僕はチィと付き合ってるからねー。彼氏の特権というやつです」
「……ちょっ、なんか恥ずかしいからっ、もうやめてっ」
千紗が真っ赤になって抗議するさまに、瑠璃香まで思わず肩を震わせて笑ってしまう。
(木朝さんって面白い人だな)
のほほんとした春風みたいな良介は、押しが弱そうに見えて案外猪突猛進なのかもしれない。
晴永とは違うタイプの強引さに、千紗は勝てないんだろう。
千紗のすぐ横で、良介がタクシーを手配しているのを横目に見ながら、晴留が千紗に声を掛けた。
コメント
2件
良介好きだな(笑)
うわっ、この雨のシーン、めっちゃ好きです……🌙 傘が二本しかなくて、それぞれがどう動くかでキャラの性格が一気に見えるところ、すごく丁寧に書かれてるなって思いました。晴永くんが瑠璃香さんを先に気遣って車取りに行くの、かっこよすぎません? そして良介くんの強引な彼氏ムーブ、千紗さん照れちゃうのも可愛すぎる。それぞれの“戦場”って、こういう小さな気遣いや距離の取り方なんだなってじんわりきました。続きも読みたいです🤍