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勝てない。

14 - 第14話

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2025年09月02日

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一人残された楽屋で、阿部亮平は呆然と立ち尽くしていた。頭の中は、先ほどの佐久間の、諦めに満ちた背中と声でいっぱいだった。


(どうして…?計画では、完璧だったはずなのに…)


『プロジェクト・アパシー』は、佐久間を精神的に追い詰め、阿部への依存を自覚させ、完膚なきまでに叩きのめす作戦。それが、どうしてこんな結末に?

阿部は、自分の『勝利マニュアル』に記された計画が、根底から覆されたような感覚に陥っていた。


その頃。

楽屋を出た佐久間大介は、テレビ局の廊下の角で、スマホを片手に誰かと電話をしていた。その表情は、先ほどの悲壮感あふれるものとは全く違う、楽しそうな笑顔だった。


『さっくん、大丈夫!?阿部と話せた!?』

電話の向こうから聞こえるのは、心配そうな深澤の声だ。


「うん、さっきね。いやー、阿部ちゃん、マジですごいわ。俺、あんな悲しい顔、生まれて初めてしたかも」

『笑い事じゃねーよ!こっちはマジで心配して…』

「あはは、ごめんごめん!でも、もうちょいだからさ!」


そう、全ては、佐久間大介の壮大な“お芝居”だったのだ。


話は、作戦開始初日に遡る。

阿部のあからさまな塩対応。佐久間は、その日のうちに、すぐに気づいていた。


(あ、これ、やってんな〜。笑)


第一次作戦(ブレスレット)、第二次作戦(プレゼン)と、阿部の奇行に付き合わされてきた佐久間だ。今回もまた、阿部が自分を「完敗」させるために、何か壮大な計画を立てていることくらい、お見通しだったのだ。


(よーし、乗ってやろうじゃないの!)


最初の数日は、阿部の計画通り、見事なまでに傷つき、落ち込む青年を演じきった。メンバーが本気で心配し始めたのを見て、これはやりすぎたかな、と少しだけ反省もした。


そして、作戦開始から5日目の夜。

佐久間は、阿部以外のメンバーをグループ通話に招待した。


『さっくん!?大丈夫か!?』

『阿部のやつ、マジで何考えてんだよ!』


メンバーの心配の声を、佐久間は「しーっ」と人差し指を立てるジェスチャーで(画面越しに)制した。


「ねーみんな?阿部ちゃんのこと、気づいてるでしょ?」


その声は、いつもの明るい佐久間のものだった。


「あいつ、また俺に勝負挑んできてるんだよ。多分、俺がいないとダメだって、認めさせたいんだと思う」

『いや、だとしてもやりすぎだろ!』と渡辺が言う。

「うん、それは俺も思う。…でもさー」


佐久間は、そこで悪戯っぽく笑った。


「俺、勝ちたいからさー?」


『は…?』


「だから、お願い。止めないで?もうすぐ、俺のターンだから」


その言葉に、メンバーは呆気にとられたが、同時に全てを察した。

これは、ただの痴話喧嘩ではない。二人の間で繰り広げられる、壮大なプロレスなのだと。


そして、今日。

佐久間の「やっぱ、なんでもない」というセリフ。

これも、もちろん戦略。阿部に「勝利」を確信させ、油断しきったその心の隙間に、最大級のカウンターを叩き込むための、完璧な布石だった。



電話を切った佐久間は、スマホをポケットにしまうと、もう一度、阿部がいるであろう楽屋のドアを見つめた。


「…そろそろ、かな」


今頃、阿部ちゃんは一人でパニックになってる頃だろう。

王手をかけるのは、今だ。


佐久間は、再びドアノブに手をかける。

今度は、悲劇のヒロインとしてではない。

この勝負の、本当の勝者として。

愛する挑戦者に、これが「最終回答」だと教えにいくために。




※あべさくが好きな方はここまでがいいかと思います!!

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続きが知りたい(´。✪ω✪。 ` )

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