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夏の午後、Aは自室の窓から庭を眺めていた。
木漏れ日が柔らかく揺れる庭には、色とりどりの花々が咲き誇っていたが、Aの心はその美しさを感じる余裕なんて無かった。
なぜなら…AはCのことが大好きだからだ。
けど、自分の醜い容姿じゃCは決して振り向いてくれないだろうなと思っているから、恋は諦めていた。
Aの思いは、何年もの間、胸の中に秘められていた。Cの優しさ、笑顔、そして何気ない言葉にAは毎日心を奪われていた。
しかし、Aは自分の気持ちを伝える勇気が無かった。Cは友達以上の関係を望んでいないように思えたし、Aもその関係を壊すことを恐れていた。
ある日、Aは庭でCとBが親しく話している光景を目にした。BはAの親友であり、Cとは昔からの知り合いだった。BがCの耳元で何かを囁き、それにCが優しく笑う様子を見たとき、Aの胸は引き裂かれるような痛みを感じた。
その瞬間、Aの中で何かが切れた。
A「どうしてBばっかり…」
Aは心の中で叫んだ。嫉妬と絶望が混ざり合い、Aの心を黒く染めていった。
数日後、Aは計画を実行に移す決意を固めた。Bを排除すれば、Cの心を手に入れられるという考えがAの頭を支配していた。その考えは恐ろしいほど冷静で、計画は綿密に立てられていった。AはBを山奥の別荘に誘い出すことにした。
A「B、久しぶりに二人で過ごさない?見せた いものがあるんだ」
Aは微笑みながら提案した。Bは少し驚いたが、Aの誘いを快諾した。
Aの計画は順調に進んでいった。
別荘に到着した夜、Aはディナーを用意し、キャンドルの灯りの下で食事を楽しんだ。
Aの心は不安と興奮でいっぱいだったが、それを悟られないように努めた。Bは無邪気に笑い、昔の思い出話に花を咲かせた。その笑顔を見るたびに、Aの心には暗い決意がより強固に根付いていった。
食事の後、Aはワインを取り出した。
A「これ、美味しいワインなんだ。今日という日を記念して乾杯しよう」
Aは事前にワインに強力な睡眠薬を混ぜておいた。Bがグラスを口に運び、一口、また一口と飲むたびに、Aの心はどんどん冷たくなっていった。やがてBは酔いが回ってふらつき始め、ソファに倒れ込んだ。
B「A、ちょっと酔っちゃったみたい。少し休ませて…」
Bの声は次第に小さくなり、ついには静かに眠りに落ちた。
Aは深呼吸し、準備していた道具を取り出した。心臓が激しく鼓動する中、AはBの手首にロープを巻き付け、しっかりと結んだ。Bが目を覚ます前に、全てを終わらせなければならない。
Bの体を別荘の裏手に運び出した。夜の闇に紛れて、AはBの体にガソリンをかけ、マッチを擦った。炎が一気に燃え上り、夜空を赤く染めた。Aは燃え盛る炎を見つめながら、涙をひと粒も流さなかった。
Aは次に自らの顔を整形し、Bの姿に成り代わることにした。
整形手術は痛みを伴い、回復には時間がかかったが、Aは耐え抜いた。鏡に映る新しい自分の姿に微笑みながら、AはBの人生を生きる覚悟を決めた。
(Bのように振る舞い、Bのように話すんだ)
Aはそう自分に言い聞かせた。Bの服を着て、Bの持ち物を使い、Bの仕草を真似る。Aは完璧にBになりきるために全力を尽くした。
ある日、BはCと再会することになった。Cは喜んでBを迎え入れた。二人は久しぶりに会う友人のように話し始めたが、Bの心は緊張と期待でいっぱいだった。
B「C、話があるの」
Bは意を決して口を開いた。
C「どうした?」
Cは優しく問いかけた。
Aは深呼吸をしてから、Bの姿でCに告白した。
B「私、あなたのことが好き。ずっと前から」
だが、Cの顔に浮かんだ表情は、Bが予想していたものとは違った。Cは優しくBの手を取り、静かに言った。
C「B、僕が好きなのはAなんだ」
Cの言葉を聞いた瞬間、Aは全身が凍りついた。自分が求めていた愛は最初から手の届く場所にあったのに、自らの手で全てを壊してしまったのだと気づいた。
心の奥底にあった希望が一瞬で崩れ去った。
(なんてバカなことをしてしまったんだ。)
Aは心の中で何度も呟いた。
Cの優しさと愛情を手に入れるために、Bを殺し、Bに成り代わるという恐ろしい行動を取った自分が信じられなかった。その絶望は言葉では表せないほど深かった。
その夜、Aはボールペンを手放し、手元にあった薬を全て飲み干した。自分の犯した罪の重さに耐えきれず、静かに命を絶った。燃え尽きた愛の残り火だけが、暗闇の中で静かに揺れていた。
庭にはまだ木漏れ日が揺れていたが、Aがその光を見ることは二度と無かった。
夏の終わり、全ての真相が明らかになる前、静かな村に不穏な事件の噂が誤解されて広がった。
山奥の別荘で発見されたBの焼死体と、Bの部屋で自殺したAの遺体。
Bの遺体があった現場の状況からして、別荘の裏手には焼け焦げた跡があり、その中からBの遺体の一部が見つかった。遺体はほとんど燃え尽きており、身元の確認には時間がかかった。
そして、Aの遺体があった現場の状況からして、Aはベッドの上で静かに横たわっており、手元には大量の薬の瓶が散乱していた。表情は苦しみを超えた平静さを感じさせるものだったという。
D「ねぇ、聞いた?!Bさん、多剤服用で亡くなったんだって!」
E「聞いた聞いた!遺書も残ってたんでしょ?」
D「”戻りたい”だっけ?どういう意味かしらね…」
E「うーん…考えてみても分からないわね…それにしても、これで2人目ね」
D「ああ…Aさん?」
E「あの子はねぇ…まぁ自殺したくなる気持ちも分からなくないけど…」
D「あの顔じゃねぇ…。何か凄い死に方したらしいじゃない?」
E「ガソリンかぶって全身火ダルマ、だっけ? 」
D「うん、凄いわよね…」
E「怖〜い…」