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昼休みの屋上。
風がフェンスを揺らし、カタン、と小さな音が鳴る。
いるまとらんは、並んで座っていた。
さっきの電話のあと、少し沈黙が続いている。
らんは弁当を食べ終わり、空を見上げた。
「今日いい天気だな。」
「……そうだな。」
短い返事。
でも、昨日より少しだけ自然だった。
すると、らんが突然思い出したように言う。
「あ、そうだ。」
「?」
「さっき電話してたやつ。」
いるまは少しだけ視線を向ける。
「……ああ。」
「名前、みことって言うんだけど。」
らんは笑いながら続けた。
「めっちゃ優しいやつ。」
「へえ。」
興味なさそうに答える。
でも、らんは気にせず話す。
「いるまのこと話したらさ。」
「……。」
「『その子、きっと一人で頑張ってるんじゃない?』って言ってた。」
その言葉に、いるまの胸が少しだけ揺れた。
(なんでそんなこと…)
会ったこともないのに。
何も知らないはずなのに。
らんは肩をすくめた。
「すごいよな、あいつ。」
「?」
「人のこと見るのうまいんだよ。」
いるまは少し黙った。
風が静かに吹く。
「……別に。」
ぽつりとつぶやく。
「俺、普通だし。」
すると、らんは横目でいるまを見た。
少しだけ真面目な顔だった。
「普通じゃないだろ。」
「は?」
「なんかさ。」
らんは言葉を探すように空を見る。
「いるまって、いつも頑張りすぎてる感じする。」
その言葉に、いるまの心臓がドクンと鳴った。
「……知らねえよ。」
小さく言って、視線をそらす。
それ以上触れられたくなかった。
でも、らんはそれ以上追及しなかった。
代わりに、少しだけ笑う。
「まあいいや。」
そして突然言った。
「なあ、いるま。」
「?」
「友だちになろうぜ。」
いるまは固まった。
「……は?」
「だから。」
らんはニコッと笑う。
「もう普通に友だちじゃん。」
あまりにも自然な言い方だった。
まるで、特別なことじゃないみたいに。
でも——
いるまにとっては、簡単な言葉じゃない。
友だち。
その言葉は、ずっと遠い場所にあった。
(俺なんかと…)
そう思った。
でも、らんの顔は本気だった。
からかっている感じはない。
ただ、まっすぐだった。
しばらく沈黙が続く。
風の音だけが聞こえる。
らんは焦らず待っていた。
やがて、いるまが小さく口を開く。
「……もう友だちじゃないのかよ。」
その言葉に、らんが一瞬きょとんとする。
それから——
「ぶっ!」
思わず吹き出した。
「なにそれ!」
「うるさい。」
いるまは少しだけ顔をそらす。
でも、その口元はほんの少しだけ緩んでいた。
らんは笑いながら言う。
「いるま、今笑っただろ。」
「笑ってない。」
「いや笑った!」
「笑ってない。」
言い合いになる。
でも、その空気はどこか軽かった。
らんは満足そうに言った。
「よし。」
「?」
「これで正式に友だちだな。」
いるまは小さくため息をつく。
「勝手に決めんな。」
でも——
その言葉は、いつもの冷たい感じじゃなかった。
屋上の空は青く広がっている。
その下で。
閉じていた心のドアが、
ほんの少しだけ、
また開いた気がした。