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CASE 六郎
「ん…。」
体の痛みで目が覚めた。
肋の骨が刺さってんな…、これ。
「目が覚めた?お姉ちゃん。」
あたしの顔を覗き込むように、クリソルベキャッツアイを持った少女がいた。
「おはよ!!」
「…っ!?」
グサッ。
少女は手に持っていたフォークをあたしの足の甲に突き刺さした。
「痛い方が目が覚めるでしょ?」
あたしは左足で少女の脇腹を蹴り飛ばした。
ドサッ。
「きゃ!!」
吹き飛ばされた少女は脇腹を抑えながら、あたしを睨み付けた。ズキ!!
今ので、また脇腹に骨が刺さった。
「お姉ちゃん、まだ動けるんだ。」
「はあ…、はぁ…。全然、可愛くない。」
「双葉は瞬に可愛いって言ってくれればいーもん。他の奴なんか興味ないのよ。」
「双葉ー、余計な事をしたら駄目やで。」
双葉の肩に手を置いたのは二見瞬だった。
「瞬!!」
ギュッ。
双葉は瞬に抱き付くと、二見瞬はヒョイッと双葉を持ち上げた。
「双葉、また六郎ちゃんを虐めてたん?」
「だって、双葉のお腹を蹴ったんだもん!!」
「あららー、それはアカンなぁ。」
カツカツカツ。
二見瞬はあたしに近付き、顎を掴んだ。
「俺のお気に入りの双葉を蹴るのはやめてな?」
「この、クズ野郎。」
「アハハ、それは褒め言葉やなぁ。」
バシンッ!!!
左頬に痛みが走った。
殴りやがったな、コイツ…。
あたしはキッと睨み付けた。
「じゃあ…?喋れないようにコレ、打っとこうか?」
そう言って、二見瞬は注射器を出して来た。
「や、めっ…。」
プチッ。
肌に細い針が食い込んだ。
体の中に、液体が入っていく感触が気持ち悪い。
意識がボーッとしてフワフワする。
グサッ!!!
何が起きたのか分からなかった。
ただ、左目の視界が真っ赤に染まった。
え、え?
グチャグチャ…。
耳に嫌な音が聞こえ、同時に左目に違和感を感じた。
「じゃーん。」
二見瞬はフォークの先に刺さった目玉を見せて来た。
あたしは重たい口を開いた。
「あたしの、めっ?」
「凄い、痛くないやろ?さすがー、キャンディの効果やなぁ。」
キャンディ…?
あたしが、殺した男が作っていた薬物の名前…。
痛みを感じない、むしろ痛みが気持ちいいと感じる。
この薬はヤバイ…。
打たれ続けられたら、あたしの精神はおかしくなる。
そうなる前に…、舌を噛み切って死ぬ。
「二見さん、ちょっと。」
現れた男が二見瞬に耳打ちをした。
「そうなんや、来たんや。」
「はい。親父が今、岡崎伊織と話をしています。」
伊織…?
「それから、四郎と…。」
まさか、四郎とモモちゃんがここに来たの!?
「例の子供と一郎…って男も来ているのですが。」
「六郎ちゃん。少し、席を外すわぁ。お客さんが来てはるからな、挨拶せな。」
声を出したいのに、声が出ない。
あたしはただ、二見瞬達が部屋を出て行くのを見ているしか出来なかった。
ポタッ。
赤い血が床を真っ赤に染めた。
九龍会本家ー
九龍会本家に到着した岡崎伊織、一郎、二郎、四郎、モモを九龍会の組員が出迎えていた。
「岡崎伊織が何しにここに来たんや。ガキまで連れて。」
「口の聞き方に気を付けろ。アンタ等には興味はない、組長と若頭に用があんだ。中に入れてくれ。」
岡崎伊織は淡々と言葉を放った。
「あぁん!?テメェ!!」
「調子に乗ってんじゃねーぞ!?」
数人の組員達が岡崎伊織達を取り囲むように並んだ。
一郎と二郎、四郎は黙って組員達を見た後、岡崎伊織に視線を送った。
岡崎伊織はフィッと顎を上げ、一郎達に合図をした。
一郎達は素早い動きで組員達を地面に押し倒した。
カチャッ!!!
応援に来た組員達が岡崎伊織達に銃口を向けた。
ブシャッ!!
ブシャッ、ブシャッ、ブシャッ!!
「ぐぁぁぁぁ!?」
「ゔっ!?」
「なっ、ど、どうなってんだよ?!」
男達の手から血が流れ、持っていた銃を地面に落とした。
岡崎伊織が五郎にインカムで指示を飛ばし、五郎は指示に従って射撃位置から組員達の手を撃ったのだった。
「もう一度、言う。中に入れてくれるよな。」
「何を騒いどんねん、お前等。」
「「か、頭!!」」
黒い浴衣を着た九龍彰宏が、岡崎伊織達を視界に捉えた。
九龍彰宏は倒れている組員や、手を打たれた組員達を見て岡崎伊織に問い掛けた。
「これ、やったのお前等か。」
「喧嘩を売られたので買ったまでですよ。心当たりあるでじょ、彰宏さん。」
「さぁ、何を言っとんのか分からんなぁ。」
九龍彰宏の言葉を聞いた一郎は、素早く九龍彰宏の背後を取り首元にナイフを当てた。
「っ?!」
「寝言は寝て言えよ、ここに二見瞬が連れて来た女がいるだろ。」
一郎は九龍彰宏の耳元で囁いた。
「うちの女の子を勝手に連れていっちゃ、駄目でしょ。それと、うちの傘下に入る為の”掟”がある事を忘れたのか九龍彰宏。」
岡崎伊織は九龍彰宏との距離を詰め胸ぐらを掴んだ。
ガッ!!
「薬に手出してんのは分かってんだよ。頭が直接、お前と話をするって言ってんだよ。女もここに連れて来い。「伊織君、親父にそんな事をしたらアカンやろ?一郎君もこんな物騒な物はしまってやー?」
九龍彰宏の背後から現れた二見瞬が一郎と岡崎伊織に声を掛けた。
CASE 四郎
この男が二見瞬か。
胡散臭い笑顔を浮かべ、ヘラヘラしているが隙がない。
「し、瞬。」
「親父もシャキッとして下さいよ。」
九龍彰宏は二見瞬に対してビビッているように見えた。
この2人は上下関係が逆転している?
「伊織君、中に入って話をしようや。四郎君、黒髪にしたんやねぇ。」
「四郎、コイツ嫌い。」
モモが俺の服の袖を掴み近寄って来た。
「瞬の事、嫌いって言った?」
二見瞬に抱かれている少女がモモを睨み付けていた。
クリソルベキャッツアイ…。
このガキ、Jewelry Pupilか。
「モモちゃん、ごめんなぁ。」
「何で、その子の名前を呼ぶの!?ちゃんって、何?」
「女の子には、ちゃん付けしないといかんやろ?」
「何それ、双葉だけ呼び捨てじゃん!!」
そう言って、双葉と言う少女はポカポカッと二見瞬の胸を叩いた。
「痛い、痛いって。」
「瞬は双葉のモノでしょ?!他の女の子に優しくしないでよ!!」
今にも泣き出しそうな双葉の頭を二見瞬は優しく撫でた。
「双葉が特別やから呼び捨てなんやろ?」
「え?」
「大事な女の子やからこそ、ちゃんって付けへん。呼び捨てで呼びたいって思っとるやんか。」
「そうなの?」
双葉は納得したのか、怒りが静まっていた。
「親父、伊織君を中に入れましょや。話、した方がええですよ。」
「そ、そうやな。」
「そんな訳やで、お前等はさっさと手当でしてもらい。後、人数分の茶の用意。」
「は、はい。」
「分かりました!!」
組員達は急いで本家の中に戻って行った。
「一郎君も、親父から離れてなぁー?」
「六郎に何にもしてねーだろうな、二見。」
「殺してへんよ?ちょっと、大人しくして貰っとるだけや。」
「大人しく…だと?」
「四郎君とモモちゃんに用があんねん。親父は伊織君と話して下さい。」
一郎の言葉を無視した二見瞬は俺に近寄った。
モモと双葉は睨み合っている。
「伊織、中に入れ。」
九龍彰宏が本家に入った後、伊織が一郎と二郎に耳打ちした。
「一郎、二郎。中に入ったら好きにやれ。」
2人は軽く頷き中に入って行った。
「俺に用って、何。」
「そんな怖い顔せんでも、ええやん。」
「六郎を拐っといて何、言ってんだ。」
「俺自身は六郎ちゃんには興味ないねんけどなぁ。俺が興味はあるのは君達2人や。」
俺とモモが気になるって、どう言う事だ?
「モモちゃんは今まで、誰1人にも心を開かんかった。そんなモモちゃんが何で、初めて会った四郎君には簡単に心を開き自分を使うように言っとるのか…。」
「んな事、知る訳ねーだろ。そんな事を聞きたい為にこんな事したのか。暇のか、お前。」
俺がそう言うと、大きな音が響いた。
バキッ!!
振り返ると、後ろにあった大きな木が真っ二つに割れていた。
「は?」
「何で…、コイツ死なないの?」
ギュッ。
「Jewelry Wordsを弾いたんか?モモちゃん。」
俺の手を握るモモが二見瞬と双葉をジッと見つめていた。
「四郎を殺す奴は殺す。六郎も返してくれないお前等は殺す。」
「瞬!!コイツうざい!!殺したい!!」
「うるさい、お前。」
「お前じゃないし!!」
「お口がうるさい。」
「はぁ!?」
「黙って。」
ゴフッ!!
双葉が血を吐き出した。
モモがJewelry Wordsを使ったから、血を吐き出したのか?
「モモちゃん、おいたが過ぎるな。」
カチャッ。
二見瞬から笑顔が消え、モモに向かって銃口を向けた。
ゴキッ。
だが、二見瞬の持っていた銃口が曲がった。
ツゥ…。
モモの鼻から血が流れ出ていた。
俺はしゃがみモモの鼻を拭き、声を掛けた。
「おい、大丈夫か?」
「大丈夫…。」
「あんまJewelry Wordsを使うなよ。」
俺がそう言うと、モモが両手を広げてこう言った。
「大丈夫じゃないから、抱っこして…ほしい。」
モモがこう言う風に甘えてくるのは珍しくない。
まぁ、抱き上げといた方が動きやすいか。
俺はヒョイッとモモを持ち上げると、モモは嬉しそうに抱き付いた。
「二見さん!!」
ガラッ!!
本家から血塗れの男が慌てて出て来た。
「た、助けて下さい!!中で暴れてるんですよ!?」
「親父は?」
「親父を逃すのを手伝って下さ…。」
グサッ。
「え、え?二見さん…?何で…?」
ドサッ。
二見瞬の手には短刀が握られていて、男の腹を刺した。
何で、刺したんだコイツ?
「四郎君、ゲームをしようか。」
「ゲームだと?」
「六郎ちゃんのいる部屋の鍵を見つけるゲームや。本家の中に鍵をかくしてあるんや、制限時間は50分。本家に爆弾を仕掛けてあるから、それまでに見つけてなぁー。」
ドゴォォォーン!!
二見瞬がそう言うと、本家から大きな音がした。
「っ!?」 「あ、爆弾は次々に爆破するから頑張ってなぁー。俺と双葉は帰るから。」
「は?」
「俺は今日から椿会の人間やねん。九龍会の人間じゃなくなるんよ。」
「お前、何がしたいんだよ。」
「おもろい事。」
「四郎、急いだ方が良い。」
インカムから七海の声が聞こえた。
俺がインカムに気を取られているうちに、二見瞬達の姿がなかった。
「四郎、行こう。」
「お前は車にいろ。」
「私が行かないと、駄目な気がするの。わがままとかじゃなくて…、嫌な予感がする。」
モモの直感はやたらと当たる。
「はぁ…、仕方ない。急ぐぞ。」
俺とモモは本家の中に入った。