テラーノベル
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ユミの母「失礼するわね」
廊下から部屋への敷居をまたぐと、まるで空気の壁でもあるかのように、中と外で空間の質が変わった。
今朝とは比べものにならないほどの甘い匂いが鼻腔を突き抜け、脳を侵食していく。ユミの母は、意識が飛びそうになるのを壁にもたれて堪えた。
ミコト「だ、大丈夫ですか?」
ユミの母は「大丈夫よ!」と答えつつ、うつろな瞳でミコトと部屋を見回した。
部屋は襖で仕切られた奥のある伝統的な和室。そして目の前にいるのは、ユミと同級生とは思えない異常な体つきをしたミコトだった。
ユミの母「入学式の時から気になってたんだけど……えっと、それは本物なの?」
そう言ってミコトの身体を見つめると、ミコトも自分の身体へ視線を落とした。
ミコト「えっ、これは生まれつきみたいです……! そんなことより、私、ユミちゃんとお友達になりたいの!」
それを聞いたユミの母はうつろな目を見開いた
ユミの母「絶対だめよ! そんな……格好で……乳神なんてもの……して――」
急に頭に血が上ったせいか、言い終わる前にユミの母は意識を失い、床へと倒れ込んだ。
ドサッ!
ミコト「だ、誰か〜! 野崎さ〜ん!」
ミコトの切実な叫び声が、家中に響き渡った。
コメント
1件
読み終えました。甘い香りが「脳を侵食する」って表現、ゾクッとすると同時に設定としてすごく気持ちいいですね。ユミの母が「乳神」って言葉を出した瞬間に、この世界の禁忌みたいなものがちらっと見えた気がして、そこが一番刺さりました。倒れるタイミングも絶妙で、次が気になります。