テラーノベル
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「次はどの扉にしようか」
クロとウルフが迷っていると、ほんの少し開きかけている両開きの扉が目に入った。向こうから、何やら声が聞こえてくる。
「こちらですよ、こちらですよ……」
女の人の優しい声に誘われて、思わず扉を開けた。待っていたのはたくさんの顔がある不思議な木だ。
「こちらですよ♡」
「こっちよ、こっち」
「こっちにきて」
「あっちよ♪」
「向こうです♡」
「あっちでおばあさんが待っていますよ」
「人面樹だ」
クロは美人に一斉に見つめられて、ドキドキした。
「僕、喋る木なんて初めてだなぁ」
ウルフは好奇心丸出しの表情で見上げている。
「『おばあさんが待ってる』って?ひょっとしたらその人が『楽ダ』のことを教えてくれるかもしれないぞ」
期待に胸を膨らませながら、言われた方向へ進むと、突然何かが降ってきた。
「うやっ、なんだこりゃ!」
バラバラバラバラバババー
「いたたた、目に入った!」
降ってきたのは大粒の砂だった。二人は慌てて目を閉じて、頭の砂を払い落とそうとする。
バラバラバラバラバババー
「誰だー!酷いことをするのは!」
クロが叫ぶと、頭の上から笑い声が聞こえてきた。
「ケーッケッケッケッケッケ。怪しいやつは、いつもこうしてお出迎えすることにしているのさ。ケーッケッケッケッケ」
木の上で、白髪の婆さんが意地悪そうに笑っている。「もしかして砂かけババア?」と尋ねるウルフ。
「ああ、その通りさ。しかしババアとはなんだい。躾がなってないねぇ。反省しな。それっ!ケッケッケ」
今度は胡椒と唐辛子の粉が降ってきたから、たまらない。
「ハックション。ゴホゴホッ。やめろ〜。ごめんなさい、砂かけ……おねえさん!」
クロの一言がなぜか効いたようだ。
「おや、おねえさんだって?ケケケ。口の聞き方が分かったようだから許してやろう。ところでお前たち、ここに何のようじゃ?」
「クションゲホゲホッ……。『楽ダ』って知ってますか?ゲホッ」
「ケケケッ。『楽ダ』?知ってたらどうするんだい?」
砂かけババアはまともに取り合う様子はない。
「どこにあるのか教えてください。お願いします!」
「ケッケッ。そんなに教えて欲しいか?」
「はい、お願いします!おねえさん!」
彼女は考えているそぶりをして、ボケをかます。
「『楽ダ』?はて、何のことじゃ。最近物忘れが酷くてのぅ」
ついにウルフが我慢できなくなった。
「惚けるな!砂かけババアの嘘つきババア、ケチババア!」
「キィーッ!何じゃ、お前は。ババア、ババアと失礼な!年寄りを労わらないお前のようなやつには教えてやるものか!」
そう叫ぶなり、砂かけババアはスーッと消えてしまう。後にはケケケと下品に笑う人面樹と砂埃だけが、虚しく残っていた。
コメント
1件
クロ、おねえさん呼びで機転を利かせたのは笑った(笑)。でもウルフがまさかのババア連呼で台無しにしてしまうところが最高だった。砂かけババアのボケとウルフのストレートなツッコミが絶妙で、人面樹の不気味さとコミカルさのバランスが気持ちいい。また次回、どんな扉を開けるのか楽しみだわ。
#異世界ファンタジー
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