テラーノベル
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今度の扉はウルフの鼻を頼りに選ぶことにした。三回連続で酷い目に遭ったのだから、嫌でも慎重になる。
「クンクン。ここが匂うぞ……と思ったら、トイレ!?」
彼が鼻をヒクヒクさせながら扉を開けると、そこはどう見ても学校の男子トイレ。通りで臭ったはずだ。
クロが振り返ると、ウルフは鼻歌交じりで用を足している。
「あ〜、スッキリ!漏れちゃいそうだったんだよね〜♪」
とその時、「……だ〜れ〜か……」
壁の向こうから、か細い声が聞こえてきた。隣の女子トイレに声をかけてみたが、返事はない。
「おかしいなぁ。確かに声がしたんだけど。あ、もしかしたら……!」
クロは何か思い当たった様子だ。女子トイレの左から数えて三番目のトイレを選び、きっちり三回ノックしてからこう呼びかけた。
「はーなーこーさーん、あーそびーましょ」
ドアがゆっくりと開き、おかっぱ頭の女の子が顔を覗かせる。
「やっぱり!トイレの花子さんだよね?ねえ、さっき誰か呼ばなかった?」
「はい……わたしの……スッポンが……なくなって……しまった……ので……」
花子は今にも途切れそうな声で一言一言つぶやくように答えた。
スッポンとはトイレが詰まった時に使うものだ。棒のついたでかい吸盤みたいなものである。
「いつまで持ってたか覚えてないの?」
「……えっと……二階のトイレにいた時はあったし……四階のトイレにいた時もあった……と思うのですが……。私にとっては……スッポンだけが…グスッ…友達なのに…グスッ」
呟きに啜り泣きが交じり始めた。クロは慌てる。
「お、おい、泣くなよ。俺たちも探すの手伝うからさ。な、ウルフ。お前の鼻を効かせて見つけられないかな?」
「スッポンの臭いなんて知らないけど……。頑張ってみるよ」
ウルフは胸をポンと叩いてみせた。
三人は学校中を探し回り、ようやく四階の廊下の窓際で花子のスッポンを発見する。
「あ…あの……見つけてくれて……あり…ありがとう…」
「よかったね、花ちゃん!」とウルフが笑いかけた。
「……は……な……ちゃん?」
彼女は男の子に「ちゃん」づけで呼ばれて、顔を赤らめている。クロは花子に尋ねる。
「ところで俺たちさ、一生楽して暮らせちゃう『楽ダ』っていうものを探しているんだ。何か知らないか?」
「『楽ダ』……?知らないです……ごめんなさい。だけど……その『楽ダ』って……楽に友達が作れたり……しない……ですか?」
これだけ言うにも、花子は随分勇気を振り絞ったに違いない。
「そうだっ、花ちゃんも一緒に『楽ダ』を探そう!」
クロの思いつきに、ウルフも大きく頷いた。
「そうだよ。だって僕ら、もう友達じゃん!」
こうして花子も仲間に加わり、三人で『楽ダ』探しが始まったのである。
コメント
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わあ、第5話読みました!花子さんのスッポン探し、切なくて可愛いエピソードでしたね。「グスッ…友達なのに」って呟きに胸がきゅっとなりました。ウルフが「花ちゃん」って呼んだら照れて顔を赤らめるところ、すごく愛らしかったです。孤独な存在だった花子さんが「友達じゃん!」って言われて仲間になる流れ、ほっこりしました。三人で楽ダ探し、この先どうなるんだろう…続きが気になります!
#異世界ファンタジー
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