テラーノベル
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金曜日の夜の俺は、最低だった。
そして、怯えていた。衝動のまま佐川さんの膣内に射精した瞬間、頭が真っ白になった。
妊娠させてしまったらどうする。
親に何と言えばいいのか。
佐川さんにどんな言葉を掛けたらいいのか。
そのとき頭に浮かんだのは「ごめん」と「責任を取る」だけだった。
何度も佐川さんからLINEの通知が届いて、既読にはしたけれど、返信する勇気がなかった。
日曜日、佐川さんから「生理が来た」とメッセージが来た。
安堵の息が漏れた。
(あやまりたい)
ただ、それは佐川さんに対してではなかった。
瑠璃に、悲しい思いをさせて悪かったと謝りたかった。
気がつけば俺は富山駅のコンコースに立っていた。
金沢駅行きの北陸新幹線特急券と乗車券を手に、最終列車に乗る。
金沢駅着は23:21。
駅横のアパホテルにでも泊まろう。
トルルルルルルル。
明日は会社に「体調が悪い」と届け出よう。
業務に支障をきたした翌週の月曜日、病欠。
同僚たちからは面白おかしく「逃げた」と囁かれ、上司は呆れるかもしれない。
それでも構わない。今は、瑠璃に謝りたい。
叶うものなら、先々週の金曜日の夜を詫びて、やり直したい。
俺の財布の中には、二年前、瑠璃に贈ったシルバーに青い貴石が埋め込まれた指輪が入っていた。
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