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西川side
合宿4日目。遂に東京合同合宿も半分まで行ってしまった。今は烏野と音駒が同じ体育館で自主練をしている。
(日向は今日もよく飛ぶなー!)
(足もしっかり踏ん張れてるし、そろそろ新しいレシーブ練のメニュー作ろっと!)
いつも通りノリノリでノートをつける私に、影山が声をかけてきた。
影山「すまん西川。やすりあるか?」
『ん、あるよー!どうかした?』
影山「ちょっと爪欠けちまった。削る。」
『あらま・・・はいどうぞ!』
影山「さんきゅ。」
(さて・・・観察の続きを・・・)
影山「・・・いてっ、」 『?』
私が影山から目を離した瞬間、声を上げた。
『影山?どうしたー?』
影山「なんか・・・今日上手くいかねぇ」
目の間に差し出された影山の指先には確かに軽く欠けた爪が。
違和感を感じた私はそっと指先を触る。
『・・・あらま、失敗しちゃった?』
(影山は爪管理上手いから、珍しいなー!)
影山「なんでだ。」
影山「いつもはこんなんじゃねぇぞ。」
『知っとります知っとります!』
『んー・・・・・・』
私は少し考えてから影山に目を合わせる。
『良ければ私やろうか?』
影山「・・・?!」
『あ、ごめん!人に触られるのだめ?!』
影山「・・・い、いや、頼んだ、」
『うん!任せときー!』
『・・・ごめんね!ちょっと近いけど、!』
影山を壁を背に座らせ、私は正面に座って影山の爪にやすりを掛け始めた。
だがやっぱり結構近い。少し意識する。
(影山ってなぜかいつもいい匂いするよなー)
(柔軟剤かなー?)
私は影山の指先をふにふにする。
(ていうかめっちゃ治安いいな!さすが!)
影山「・・・・・・」
しばらく爪先を整えていると、影山がこちらをじっと見ていることに気づいた。
『ふふ、見すぎだよ影山。』
影山「・・・!わり、」
『ていうか影山めっちゃ指綺麗だね!』
影山「まあケアしてるからな。」
『さっすが〜!手も私より何倍くらいー?』
『・・・あ、そうだ!左手かーして!』
影山「・・・?おう。」
私は影山の右手を整えながら手比べする。
『ふは、影山おおきー!』
影山「・・・そうか?西川が小さいんだよ。」
『なぬ?!でもかっこいい!』
影山「・・・?!俺がか、?」
『うん!まあ影山はずっとかっこいいけど!』
影山「・・・・・・💢///」 ゴツ
私が素直に感想を言うと、突然影山が軽く頭突きしてきた。
『あいたっ!なっ、なによー!』
影山「なんでもねぇ、」 『嘘つけ!』
軽い言い合いをしながらやすりを離す。
『・・・はい!終わり!どうよ?!』
影山「・・・!西川上手いな。」
『でしょでしょー?』
影山「さんきゅ。また頼んでもいいか?」
『いつでもどーぞ!』
影山「・・・また後で自主練付き合って欲しい。」
『ん、おっけー!楽しみにしてる!』
影山「お、俺も。じゃ」
約束をして影山は立ち上がり、コート内に戻って行った。私は胸を撫で下ろす。
(あんなすごい人の指を管理してしまった!)
(あとシンプルに影山の顔面偏差値が高いの忘れてた・・・!自覚してないだろけど)
『ふぅー・・・さてと、』
ノートを持ち、再度観察を始める。
が、またもセッターに止められた。でも今回は影山ではなく研磨さんにだ。
孤爪「・・・ね、西川。」
『! 珍しいですね!どうしました?』
孤爪「俺も、さ・・・」
孤爪「俺も爪、欠けたよ、」 『?』
『えっと・・・??』
孤爪「・・・爪、やってくれない?」
『ああなるほど!もちろんいいですよー!』
影山同様向き合って座る。やっぱ近い。
『ちょっとだけ触りますね!』
私は優しく研磨さんの指をふにふにする。
(さすが!治安良さげ!)
(黒尾さんがやってたりするのかな?)
やすりを手に取り作業し始めた。
孤爪「・・・烏野の9番と仲良いの?」
『んー、いい!・・・はずです!』
『影山は愛想もないし顔は怖いですけど、凄く不器用なだけなので、きっと研磨さんもすぐ仲良くなれますよ!』
孤爪「ふーん、じゃあ教えてくれる?」
さっきまで手元を見ていた研磨さんの目が私に移る。珍しい真っ直ぐな目。
『えと、?仲良くなる方法ですか、?』
孤爪「うん。」
『は、はい!影山はカレーが好きで・・・』
(ちょっとびっくりした、)
孤爪「そうじゃなくて。」 『ぅえ?』
孤爪「西川と、仲良くなる方法教えて?」
『え”っ・・・え、えと・・・!!』
『も、もうすでに仲良くないんですか・・・、』
孤爪「え・・・ふふ、うん。確かに。」
『で、できました、!』
(なんだかいつも引っ込み気味の研磨さんがよく話してきて不思議だ・・・)
私はゆっくりとやすりを離した。
孤爪「ん、確かに上手だね。ありがと。」
『た、確かに、?』
(影山との会話聞いてたのかな・・・?)
『またいつでも言ってください!』
孤爪「うん、じゃあね。」
満足そうに柔らかく笑い居なくなる研磨さん。私は少しの間呆然とするが、練習のメニューを作る仕事があるのを思い出し、ノートを手に取り観察に戻った。
日が暮れてきた頃、いつも通り練習のお手伝いで私は第3体育館に入る。
早かったのか、黒尾さんしかいなかった。
黒尾「お、ゆりサン早いね〜」
『黒尾さんもですね!お疲れ様です!』
黒尾「お疲れさん。」
少しの沈黙を挟み口を開く黒尾さん。
黒尾「・・・ゆりサンはさ、将来やりたい職業とか、決まってたりします?」
『ん、突然ですね、どうかしましたか?』
黒尾「いや・・・まあちょっとだけね。」
黒尾「とりあえず聞かせてくださいよ」
『ん”〜・・・、バレー関係のことは、したいなーっと思ってたり・・・』
黒尾「お、バレー選手とか?」
『・・・それが、1番なりたいんですけど、』
黒尾「ン?なんかなれない理由が?」
『えーーーっとですね・・・、』
私が選手になるのを渋っているのは、歪んだ小指と過去の経験からである。
(・・・黒尾さん、すごくいい人だし、)
(言っても、いいかな、)
私は覚悟を決めてその事を説明した。
『〜〜っていうこと、で・・・』
黒尾「・・・そっか。ごめんな、言わせて。」
『いっ、いえいえ!!全然!』
『私は元気ですし!黒尾さんのこと信用してるから言ったんですよ!』
黒尾「・・・失礼しますネ。」 『おわっ、』
突然黒尾さんが優しく私の頭を撫でる。
黒尾「急に撫でたくなったわ。」
『ふはっ、なんですかそれ。笑』
黒尾「・・・でもよ、決して軽く見てる訳じゃないけど、諦めることでも無いと思うぞ?」
『・・・え?』
黒尾「そりゃ辛いよな、色々言われたろ。」
黒尾「でも今は十分使えてる。なんなら練習付き合ってくれるだろ?」
黒尾「そいつらは多分ゆりサンに嫉妬してただけサ。他人に夢、左右されんなよ。・・・俺はゆりサンにバレーして欲しいです。」
『うぇ・・・・・』
優しく撫でながらそう言ってくれる黒尾さん。
私はどんどんと涙が溢れてきた。
黒尾「ちょ、スマンスマン。💦」
『ぐすっ・・・い、いえ・・・、嬉しくて・・・』
『・・・私、ずっと、今みたいなこと言われたかったんだと思います、』
黒尾「お。じゃあ俺せいかーい?」
笑わせてくれようとする黒尾さん。
『・・・ふふっ、はい、もちろん!』
私はすぐに涙が収まり、黒尾さんを見た。
『・・・私!最初からバレー選手になれなくても!いつか!絶対なります!絶対!!』
『いま決めました!』
黒尾「・・・そーかい。嬉しい。」
黒尾「じゃあ最初の夢はプロチームのサポーターとかですかい?」
『あ!それいいです!そうします!』
黒尾「軽くない?笑」
『ちなみに黒尾さんの夢は、?』
黒尾「あー、俺はね・・・バレーボール協会。」
『えぇ?!∑(Ꙭ』
黒尾「それはどういう反応?笑」
『いや・・・黒尾さん、結構バレー好きだったんだなーって!でもいいですね!』
黒尾「ハァー?めっちゃ好きよ俺。」
驚く私にニヤッと笑う黒尾さん。
すると突然おでこを軽く小突かれた。
コツっ 『あでっ』
黒尾「・・・つまり、君がサポーターのときは俺と同じ会社なんですよー?」
『え!! そうなんですか!!』
黒尾「そうなのよ。俺めっちゃ嬉しい。笑」
『私もです!!・・・いやったー!!!』
嬉しすぎて飛び上がる私。
『一緒に働けるんですね!!最高!!』
黒尾「え、そんな嬉しいの?」 『はい!!』
飛び回る私を驚きながら眺める黒尾さん。私は黒尾さんに笑いかけた。
『ニシシシ!』
『あと私!黒尾さん大好きになりました!』
黒尾「・・・は、」 日向「おーーい!!!」
黒尾さんの声を日向が遮る。
『ん、日向ー!どうかしたー??』
日向「西川!レシーブ教えて!」
『いいよー!日向だけ?』
灰羽「あと俺にもー!」
扉からひょっこり出てくるリエーフ。こう見ると身長差がすごい。
『え!リエーフ珍しいね!』
『そんなにレシーブ熱心だっけ?』
灰羽「あんま好きじゃないけど!夜久さんより西川に教えてもらいたいから!」
体育館に入り壁際のボールを拾うリエーフ。
『ふふ、おっけー!じゃあ・・・』
木兎「ヘイヘイヘーイ!西川ー!!」
赤葦「! ゆりさん逃げ」 ドンっ!
『どわー?!』
突然後ろから木兎さんに突撃され、私は勢いが抑えきれず前に走る。
目の前には壁・・・の前にリエーフ。
(やばっ、勢い殺せない・・・!)
このままでは激突する。リエーフは既に気づいているが身長的に腰ぐらいに突っ込みそうなので本当に危ない。
(け、けがさせるわけにいかないし・・・)
(・・・よし!覚悟決めろー!)
『ふんどりゃっ』 ドゴッ!
灰羽「うおっ?!・・・えぇぇ?!!」
私は咄嗟にリエーフをお姫様抱っこし、くるっと振り向いて背を壁に激突した。
『あいってててて・・・』
『ごめんねリエーフ・・・大丈夫、?』
リエーフを上に乗せたまましゃがみこむ。
灰羽「え!え?!俺お姫様抱っこされた?!」
灰羽「西川って・・・ゴリラだったのか?!」
『違うわ💢怪我無さそうでよかったけど💢』
他の人たちもすぐに集まってきた。
黒尾「ちょwwお嬢さん大丈夫?www」
『何も笑えないですぅ〜💢』
黒尾「ゴメンゴメンwでもほんとに凄いね君」
黒尾「リエーフとか何倍なのよ」
『でも意外と軽いですよ?ほら!』
私はリエーフを持ち上げた。
灰羽「ちょ、やめて!なんか俺のプライドみたいなのが失われるー!!」
『フハハハハハ!我最強なり!』
黒尾「とりあえず起き上がりなさいほら。」
『ありがとうございます!』
私は差し出された黒尾さんの手を掴み起き上がろうとするが、腰が抜けて倒れかけた。
まあ黒尾さんがキャッチしてくれたけど。
黒尾「っ!ぶねっ・・・腰抜けた?」
『そ、そうみたいです・・・』
灰羽「えぇ?!ごめん西川!!」
『いやいや!リエーフのせいじゃないよ!』
(くっ・・・自分のもろさが憎い・・・!)
赤葦「そうです。全てはこの人のせい。」
『けいじさ・・・?!』
赤葦さんの声が聞こえそちらを向くと、しょぼくれた木兎さんの首根っこを掴み引きづっている赤葦さん。
(なんか木兎さん死んだうさぎみたい・・・)
赤葦「ほんっとうにごめんね。」
赤葦「この人ノーペナで嬉しくなっちゃって」
『な、なるほど』
(今はその面影もないけれど・・・)
赤葦「とりあえずこの人は連行するから、本当にごめんね。」
赤葦「ほら、木兎さん謝って。」
木兎「うぅ・・・西川ー・・・・・・ド、」 『ド?』
木兎「ど、ドごめん・・・!!!」
『ど、ド・・・?!』 赤葦(イラッ
黒尾「赤葦くん?この人何言っちゃってんの」
赤葦「・・・すみません。最近の話題です。」
赤葦「じゃあ連行します。それではまた後で」
黒尾「あ、ハーイ。」
引きづりながら体育館を出ていく赤葦さん。
『・・・行ってしまった。連行とは、?』
黒尾「ほらアレよアレ。」
黒尾「おたくの澤村サンとかに囲まれて説教されてるやつ。笑」
『あ、ああ・・・アレ・・・』
日向「・・・よし!じゃあ練習しよ西川!」
『お、おけ!』
黒尾「ちょ、腰抜けてんだから気をつけて?」
『はい!黒尾さんもやります?』
黒尾「あー・・・、じゃあ少しだけ。」
そのまま私は日向たちの練習に付き合った。
終わり.