「あのね、グレイちゃん」
ぼく知ってるんだよ
グレイちゃんは優しすぎちゃうってこと
いつもニコニコ笑ってるけど、
他に人がいない時は少し寂しそうな顔をして泣いてるよね
そんなことを知ってるのはぼくだけ。
でも、ぼくは猫だから
ブランくんみたいにグレイちゃんのことを抱きしめたり
レグルみたいにグレイちゃんとお話をすることも
ステラちゃんみたいにグレイちゃんのお手手を握ったり
セレスちゃんみたいにお茶をあげることも出来ないの。
なんにも出来なくてごめんね、グレイちゃん
真っ暗で、沢山雨が降ってた日にね
大きなダンボールの中に一人ぼっちなのが寂しくて
ちょっと前まで一緒にいた飼い主さんに置いていかれて悲しくて
道の奥から野良猫やカラスの鳴き声がしてきたのが怖くって
目も開いたばかりの子猫だったぼくにはどうすることもできなくって
ずーっと小ちゃな声で
「助けて」
「寂しいよ」
「怖いよ」って鳴いてた時
グレイちゃんがぼくを助けてくれたんだよ。
あの頃のグレイちゃんは確か今より髪が短くって、
お洋服もちょびっと違ったよね
でもね、グレイちゃんはあの頃からずっとずっと優しかったよね。
だってダンボールの中で震えながら威嚇するぼくのことを見た途端
ボクのことを抱っこして、ファスナーを開けてお洋服の中に入れて
そのままお家に連れて帰ってくれたんだもん。
怖くて震えてるぼくのことをぎゅっと抱きしめてくれて
雨に濡れても気にしないでぼくのことを安心させてくれてたよね
『大丈夫だよ』って声をかけてくれたよね
そんなとっても優しいグレイちゃんの声がね、
ぼくね、とっても大好きなんだよ
だけどね、ぼくね
泣いてるグレイちゃんはあんまり好きじゃないよ
だって、見てて苦しくなっちゃうんだもん。
ある日ね、グレイちゃんが泣いてた時
ぼくにはどうすることもできなくって
窓の傍に座ってスマホを見ながら何かを呟いてるグレイちゃんを
廊下から見てることしかできなかったの
でもね、グレイちゃんが『ごめんなさい』って呟いたのが聞こえた時
お部屋に入って、飛び乗ってグレイちゃんの腕の中に入ったの
グレイちゃんは『わぁっ』って驚いて
『んも〜…どうしたの〜?』って少し笑ってくれたの。
でもね、その後すぐに何も言わなくなってぼくの背中をずっと撫でてたの
その日のグレイちゃんの指先には絆創膏がいくつか貼ってて
そこからちょっと鉄っぽい匂いがしてて嫌だった
だってグレイちゃんに傷ついて欲しくないもん。
ぼくも痛いのは嫌いだから
グレイちゃんにそんな目にあってほしくないもん
でも、嫌なのはそれだけじゃないんだよ
その時グレイちゃんはポロポロ泣きながらぼくの背中を撫でててね、
手もちょっぴり震えてたの
だからね、ぼくね「泣かないで」」って鳴いたの
でもね、グレイちゃんは泣きながら
『ありがとう、ごめんね…おこなは優しいね、大好きだよ』って言ってたの。
だからぼくもちょっぴり泣きそうになっちゃったの
『ありがとう』も『大好き』も普段なら嬉しい言葉だけど
その日は違ったの
「違うんだよ、謝ったりして欲しい訳じゃないんだよ。
泣かないでいて欲しいの」
そう思ってても、そう伝えたくても
ぼくは話せないから伝えられないの
だからね、グレイちゃんの涙を舐めたの。全然甘くなかったけどね。
ゴロゴロ喉を鳴らしたりしたの。
ぼくはグレイちゃんを慰めることが上手に出来ないけど
それでほんの少しでもグレイちゃんを癒したかったの
ぼくね、なんにも出来ないけどね
どんな日でもグレイちゃんの傍にいるからね
ブランくんやセレスちゃん達の前で少しでもグレイちゃんが笑えるように
グレイちゃんが泣いてる時は絶対傍にいるからね
あのね、グレイちゃん
ぼくね、グレイちゃんには笑ってて欲しいの
だって、グレイちゃんは笑ってる時が一番可愛いし
ぼくね、そんなグレイちゃんが一番好き
だからそんなグレイちゃんをもっとみんなに知って欲しいの
だからね
だからね、グレイちゃん
「ぼくね、グレイちゃんのこと、大好きだよ」
コメント
7件
泣きました()ありがとうございます、墓に入ってきます()