テラーノベル
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舟が岸に着いた。
船頭に銭を渡して舟を下りると、惣吉らはお互い軽い挨拶を交わして、めいめい別々の道に歩いて行った。
姉の待つ家までは、まだ一里も歩かねばならなかった。
畦道にトンボが飛んでいた。
半分くらいまで来ると、惣吉は、背中の風呂敷に蜜柑が
あったので、地蔵の傍らに腰掛けて、それを食べた。
惣吉が姉の家に着くと、姉は嬉し涙を流して迎えた。
五年振りに見る姉は、少し痩せていたが、以前より美しくなっていた。
裏の畑から、姉の夫が帰って来た。
惣吉は初めて会う義兄に、少し緊張した。
義兄は背が高く、日に焼けた、気の良い感じの男だった。
姉夫婦はすいとん鍋で惣吉を労った。
惣吉は江戸の話を、姉は夫との馴れ初めを、互いに話して聞かせた。
惣吉が簪を姉に渡すと、姉はこんな綺麗な簪は初めて見ると言って喜んだ。
その夜、姉が離れに布団を敷いてくれたので、惣吉は鈴虫の鳴き声を聴きながら、心地良い眠りについた。
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