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#もしかしたらグロいかも
海月
38
会議開始から6時間が経過。途中昼食を挟んだものの、大きな進展はなし。
夕方になって、本日の会談は終了となった。
俺はアンドリューに連れられて、砦内の自室へと戻った。
「では王子、明日が最終日となります」
「わかった。あの……俺どうだった? リガルド背負ってるわりには空気みたいな感じだったけど」
「何もわからない状況であれば、聞きに徹するのは当たり前でございます」
「明日はなんかこう、もっと爪痕残したほうがいいかなって思うんだけど」
「王子は芸人ではありませんよ」
それは確かに。
「メッサー王は、一体俺に何を求めてるんだろう」
「リガルド帝国の繁栄でございましょう。一体どの国と組むのか、はたまた孤高であり続けるか、それを決めることを任されたのです」
繁栄か……。それが元で他国の恨みを買っているような気がするんだが。
アンドリューは深く礼をして去っていく。
すると一緒にいたヨハンナが、ようやく気が抜けて室内のベッドにダイブした。
「つっかれた~。ずっと立ちっぱなしだぞ! 緊張しすぎて尻の筋肉が痛ぇ」
「お疲れ、俺もカロリー消費した」
「大丈夫ラウルちゃん、甘いもの食べる?」
ママ上がドーナッツを差し出してくれるが、今食べると血糖値スパイクで眠くなりそうだし、塩キャラメル一個で我慢しとこう。
俺はポケットをまさぐると、子犬形態のままついてきていたナハトが出てきた。
彼女はすやーっと寝息をたてていたので、ヨハンナと一緒にベッドに寝かせる。
「つまんなかったよな」
俺も君等の立場なら寝てると思う。
「なー王子、晩飯食いに行くだろ?」
「まだ4時だから。あと2時間くらいしたら広間でバイキングがあるって」
「じゃああたしそれまでちょっと寝るぜ。難しい話ばっかりで脳が疲れたぜ」
ヨハンナもベッドに転がって、すやぁと寝息を立てる。
俺も夜までに、今日の会議をまとめておこう。
俺は各国の求めているものをまとめたメモを取り出す。
「ギデオンはダークラインでとれるコアメタルという物を欲しがってる。できれば独り占めしたいが、魔獣を自国だけでなんとかできるとも思っていない。それ以外の物には興味がなく、コアメタルさえくれれば後は好きにしろって感じだな」
ギデオンは何がしたいか、何をしたくないかというのがはっきりしていてわかりやすい。
要はコアメタルの採掘権限さえ渡してしまえば、仲間にすることは容易いと思う。
ただしそのコアメタルを使って一体何をするかは注意が必要だ。
アンドリュー曰く、コアメタルは高純度エネルギー結晶体らしく、様々なエネルギーに使える夢の鉱石だが、反面軍事利用も可能で、爆弾としても加工することができるらしい。
「トリスタン魔法騎士国は望みが見えなかったな。強いて言うなら魔獣を倒すのは高貴なる者の使命みたいな……」
正義を追い求めてるガレス共和国と同じように見えるが、なにかしら隠している感があった。
ギデオンのようにコアメタルのような資源を見つけたいと思っているはず。じゃないと、軍事拠点なんか作っても兵の維持費で赤字がかさんでいくだけだ。
しかしながら自国の欲を前に出さず、こちらに手札を見せてくれない。
それとも本当に魔獣を倒すことが、トリスタンの責務と思っているのだろうか? この辺はソニア王女の人となりをわかってないからなんとも言えない。
次にアクアレム。ここは水の国だけあって、会議中ずっと流されっぱなし。
グローリーの意見に成る程と賛同し、ジャガーの正義だけで飯は食っていけないという現実的な意見にも賛同していた。全てにおいて勉強中という感じで、聞こえの良い正義とか皆のためという言葉に弱い。
「軍事経験を積みたいって感じはしてるんだが、ここは横の繋がりを求めてる感があったな」
多分軍事力にかなり自信がないと見える。だから軍事力に自信のあるギデオン、ガレス共和国と同盟を結び、もしどこかの国に攻められた時共同で戦いたいという意思を感じた。
ガレス共和国。ここに関してはほぼ割愛。話の内容が基本的にリガルドの政策批判ばかり。
ガレスというかグローリーの願いは世界平和であって、国同士の駆け引きなんかほとんどない。
良いことをすれば、皆付き従ってくれると思っている。
反面悪に対しては容赦がない感じで、どうしても作戦にリガルドを入れたくないらしい。
各国の状況をまとめるとこんな感じ
鉄と歯車の国ギデオン
代表 ジャガー・バンビーノ
軍事力A 経済力B 技術力A 治安D 国力C
魔法騎士国トリスタン
代表 ソニア・ブランネージュ
軍事力? 経済力B 技術力A 治安A 国力C
水の国アクアレム
代表 セレーネ・アクアリア
軍事力D 経済力B 技術力C 治安B 国力A
新興国ガレス共和国
代表 グローリー・フェルナンド
軍事力? 経済力D 技術力D 治安C 国力D
国力はその国の食料自給率や国土資源を評価している。
一見するとギデオンが秀でているように見えるが、国の資源を掘り尽くして天井が見えており、なんとか別のエネルギー資源を欲しているのがわかる。
国力低下により治安も悪化している。
逆にアクアレムは、軍事力が低い代わりに国土にある広大な海から様々な資源をとることが出来て、経済力が安定していることがわかる。
反面この資源を狙われる可能性が高く、侵略に備えてどこかと同盟を組みたいという気持ちもよくわかる。
トリスタンに関しては、国土が狭いため国力自体は低いものの文化教養レベルが高く、劇場や芸術、魔法学術分野で収益を出している。
そのためダークラインで、資源を見つけなければいけないというわけでもない。なぜここにいるのか一番謎な国。
軍事力に関しては出し渋ってるので底が見えない。推定B以上だとは思うが。
ガレス共和国は知らん。お前ら革命したばかりで治安荒れまくってるのに、ダークラインにちょっかいだしてる場合じゃないだろ。人のこと悪だとか言う前に、自国の民をなんとかしてやれと思う。
ただ一番勢いはある国なので、失うものがない分平気でリガルド帝国を攻撃してきてもおかしくない。
ゲームでも大体大国を倒しに来るのは小国の英雄である。
◇
時刻は午後6時を回り、砦の広間でバイキングが開かれた。
勿論他国の代表者、関係者も出席可能なのだが、リガルドに借りを作りたくないと思っているのか出席率は低め。
グローリーなんか、会議終了と同時に砦から出ていった。
ここまで徹底していると、逆に好感が持てる。
連れて来たママ上とヨハンナは、たくさん並ぶ料理を見て目を右に左にと動かしている。
ブロックス城砦のバイキングは思ったより豪勢で、長テーブルには肉料理、パン、スープ、チーズ、果物……まるで祝宴のような光景だった。
「おい王子、すげぇな。前線基地とは思えないご馳走だ」
「今日のために宮廷料理を運んできてくれたらしいよ」
「はーやっぱ王族って良いもの食ってんだな」
「俺はあんま好きじゃないけどね、こういうスライス肉一枚を皿に綺麗に盛り付けてる料理」
「あーオレンジソースとか、かかってる奴な」
「ラウル~これ何~?」
「それはチョリソだ」
ナハトも踊り子の格好をさせ、羽を隠してバイキングを楽しんでいる。
さて、俺もチョリソ食おうかな。とりあえずビーフとスパゲティと、フィッシュフライを乗せながら、カニ歩きでチョリソの鉄皿へと近づいていく。山盛りになった皿の上に、チョリソを突き刺せば完成と思い、皿の前に立つと残り一本しかなかった。
迷いなくトングで掴みに行くと、ガッと別のトングとぶつかる。
なんだ、このリガルド帝国第三王子のチョリソを奪おうとするとは豪胆な奴だな。そう思い隣を見ると、チンピラみたいな少年が俺を睨んでいた。
「いい度胸だ。このジャガー・バンビーノ様のチョリソを奪おうとするとはな」
「こっちのセリフじゃい」
俺はジャガーの皿を見ると、奴の皿にはすでに分厚いステーキが二枚盛られていた。
「こ、こいつステーキをとって、チョリソまで持っていこうとしているのか。遠慮という言葉はギデオンにはないのか!?」
「やかましいわ、テメェこそ山盛り肉のタワーみたいになってるだろうが。コレステロールのバケモノめ」
「バケ!? お前それでも一国の王子か? 品性というのもはないのか!?」
「うっせ、こっちは機械屋だ。品性なんてもの歯車に挟んで押し潰したわ」
「こ、このバンビちゃんめ!」
「あぁ!? テメェ二度とその名で呼ぶんじゃねぇ!」
二人のトングが、ほぼ同時にチョリソへと伸びる。
カチッ、カチカチッ!
鉄製のトング同士がぶつかり、戦場さながらの攻防戦が繰り広げられる。
弾かれたチョリソは宙を舞い続けている。
「この……!」
俺が力を込めるが、ジャガーも負けていない。ギシギシとトングが押し合い、まるで一進一退の攻防。
「諦めな、メタボ王子。こいつはオレのモンだ」
「リガルドは負けん……!」
激しいトングバトルの末、ついに決着がついた。
スッ……
不意に、横から伸びた別のトングが、二人の間をすり抜けてチョリソをさらう。
「上に立つものが喧嘩をするな。美しくない」
それを取ったのは、何食わぬ顔で歩いていたソニアだった。
「……」
「……」
俺とジャガーは同時に顔を見合わせる。
「お前がいらぬことをするから」
「テメェが意地汚ぇんだろうが」
俺こいつ嫌い!!
コメント
1件
ありんすさん、最新話読みました! 各国の思惑をラウル王子が冷静にまとめていくところ、すごく頭がいいなと思いました。ギデオンのジャガーもただの武闘派じゃなくて国力の事情が透けて見えるのが面白いですね。 でも何より最後のチョリソ争奪戦、めっちゃ笑いました! 真面目な会議の後にあの緩急、最高です。二人のトングバトルが白熱してるのに、ソニア王女にスッと横取りされるオチがもう……「美しくない」の一言がキマってますね。ラウルが「俺こいつ嫌い!!」って叫ぶとこ、思わず声出して笑いました😂