テラーノベル
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しばらく歩いていると、トイレを見つける。
「快、ちょっとトイレ」
「えっ、ちょっと…」
快の呼びかけにも気付かず、俺はトイレに駆け込む。
でも別に俺は用を足しに来た訳じゃない。
俺はカバンからスマホを取りだし、検索エンジンを開く。
『カップル 手の繋ぎ方』
調べると、色んなサイトが出てくる。
俺は一つサイトを開き、文章に目を通した。
(手を繋ぐか聞くのもあり…さりげなく繋いだらトキメキ度アップ…?)
さりげなく手を繋ぐ。
俺はスマホを仕舞い、トイレを出ると、外で待っていた快の前で立ち止まる。
「悪ぃ。待たせたな」
「いや、別にいいんですけど、そんなに漏れそうだったんですか?」
「あ? ま、まぁ、そうだな」
快は目を細めて俺を見る。
「へぇ〜。そうですか」
多分、快は感情が見えるから嘘だってバレてるんだろう。
でも、正直に言う訳にはいかないし、誤魔化すしかない。
「そうだよ。ほら行くぞ」
そう言って歩き出すと、快がついてくる。
「零斗さん、なんか食べません?」
「あぁ…そうだな。何食いたい?」
「さっき唐揚げ見かけたんですよ。それ食べたいです」
「じゃあ戻るか」
「はい」
それから色んな屋台を回りながら歩いていた。
その間俺はただ快の手を見つめることしか出来なかった。
このままではいけないと手を繋ごうと少し前を歩く快の手に自分の手を近づける。
「あっ、クレープありますね」
その声であと少しで触れそうになった手を引っ込める。
「そ、そうだな」
「クレープなら甘いんで零斗さんも食べれますよね」
そう言ってこっちを見た快は、再び目を細める。
(なんか怪しまれてんな…)
「そ、そうだな」
「じゃあ並びましょうか」
快はそう言って列に並ぶ。
そんな快の横に俺も並ぶと、快が呟く。
「零斗さん、なんか企んでます?」
「あ? 企んでねぇよなんも」
「緊張と焦りのオーラが見えます。何考えてたんですか?」
「あー…快と初めての祭りだから緊張してんだよ」
俺の言葉に快は顔をしかめる。
「ふ〜ん。焦ってる理由は?」
「さっきちょっと考え事してたから急に話しかけられてビビっただけだよ」
「考え事って?」
「あー…快の浴衣姿が可愛いな〜って」
嘘だけど嘘じゃない。
今日初めて快と対面した時に実際に思った事だし。
でもさっきは手繋ぐ事しか考えてなかったから、嘘のオーラは出てしまうかもしれない。
不安になりながらも快を見ると、頬が赤くなっているのに気が付く。
「なんだ。照れたのか?」
「まぁ…ちょっと」
快はそう言った後、屋台に目を向ける。
「どれにしようかな。いちごもいいけどチョコバナナも食べたいし、あぁでもフルーツミックスもありだな」
早口気味にそう言う快に笑みがこぼれる。
「やっぱ可愛いな」
「う、うるさいです。零斗さんは何にするんですか?」
「チョコバナナクレープだな。チョコ入ってっから甘ぇだろ」
「じゃあ俺はイチゴクレープにします」
クレープを買い終わると、道端に寄り、立ち止まる。
俺が一口食べると、快も一口食べた。
「うめぇわ」
「こっちも美味しいです」
そう言って微笑む快にクレープを差し出す。
「ほら、こっちも食いたかったんだろ?」
「ありがとうございます」
快は嬉しそうにクレープを頬張り、目を丸くする。
「ん! めっちゃ美味しいです」
そう言った後、快は俺にクレープを差し出す。
「零斗さんも」
「ありがとな」
俺は快の差し出すクレープを一口食べる。
「おぉ。こっちもうめぇな」
「ですよね」
快はそう言って微笑んだ。
クレープを食べ終わると、再び歩き出す。
少し歩いて、再び手を繋ごうと快の手に手を伸ばす。
「結構人増えてきましたね」
その言葉で俺は手を引っこめる。
「あ、あぁ。そうだな」
「零斗さん、さっきからどうしたんですか?」
「あ? どうしたって何だよ」
「そんなに緊張して。また焦ってるし」
「別になんもねぇって」
「ホントですか?」
怪しそうな目で俺を見る快に誤魔化そうと快を見て言う。
「ホントだっ…」
そこで前から歩いて来た女性にぶつかってしまい、俺は慌てて謝る。
「あっ、悪ぃ」
「すみません」
二人同時にそう言い、すれ違うと、後ろで女性が言う。
「今の人めっちゃカッコよくなかった?」
「嘘。見てなかった」
「声掛けちゃおうかな」
「何それ逆ナン?」
(俺逆ナンされんの…?)
「零斗さん」
突如横から呼びかけられ、俺は慌てて返事する。
「うおっ、な、何だよ」
「人多くてその内はぐれちゃいそうですね」
「あぁ、まぁそうだな」
俺がそう答えると、俺の手に快の手が触れる。
その瞬間、胸がドクンと跳ねる。
「…はぐれちゃうんで」
そう言って頬を赤らめる快に更に心臓の音が大きくなる。
あのサイトの通りだ。急に手握られたからドキッとした。
「そ、そうだな」
「早くあっち行きましょう。零斗さんイケメンなんで人混みは避けましょう」
快は足早に歩き出す。
なんだよ。俺がイケメンだから人混みは避けるとか意味わかんねぇ事言いやがって。
「ちょっと待てよ。意味わかんねぇよそれ」
「何が分かんないんですか?」
「俺がイケメンだから人混み避けるって意味わかんねぇ」
「零斗さんイケメンだから他の人に狙われるじゃないですか。さっきだって…」
快も聞いてたのか。
別にあんなの断って終わりだろ。
「なんの心配してんだ? 俺は誰に声掛けられようとお前しか見えてねぇよ」
「別にそんなの分かってます。零斗さんの俺への好意のオーラはホント凄いんで」
「なんか恥ぃな。でもだったら何が心配なんだよ」
「心配とかじゃなくて、零斗さんが他の人に興味持たれるのが嫌なんですよ。俺の零斗さんなんで」
「何だよそれ。独占欲強ぇな。陽雅みてぇ。まぁ、陽雅よりはマシだろうけど」
「陽雅さんですか。そう言えば恭也と付き合わないのもそれが理由でしたよね」
「そうだな。アイツら、ちゃんと今日会えてんのかな」
「会えてると良いですけど…」
二人の間に沈黙が走る。
俺は快の手をぎゅっと握った。
「まぁさ、二人の問題だし俺達は俺達で楽しもうぜ」
「そうですね。てか、もうすぐ花火上がりますよね。見えやすい場所に行かないと」
「そうだな」
そう言って二人手を繋いだまま、歩き出した。
_________
神社の境内で、恭也と屋台を回る。
屋台が並ぶ道の端で、恭也はたこ焼きを頬ばった。
「ん! 美味いです。陽雅さんも食べてみてください」
「じゃあ、一個貰おうかな」
そう言ってたこ焼きの入った容器に手を伸ばすと、恭也が言う。
「待ってください。今冷ますんで」
恭也はたこ焼きを爪楊枝で刺し、フーッと何度か息をかける。
「出来ました。どうぞ」
そう言って恭也が俺の口元にたこ焼きを近づける。
俺が口を開くと、急に視界が暗転した。
暗闇が広がる中、誰かの後ろ姿が見える。
髪がぴょんぴょん跳ねた少年。
俺はハッとして声を掛ける。
「優真!」
俺の呼びかけで、彼は振り向く。
あの時と変わらない、愛らしい顔。
彼は俺と目が合うと、嬉しそうに笑う。
「陽雅。久しぶり」
コメント
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灯依さん、第37話読みました!零斗くんが「カップル 手の繋ぎ方」をスマホで検索してるところ、可愛すぎて笑っちゃいました。あれだけ必死にタイミングを計ってるのに、快くんに「企んでます?」って見抜かれてるのも微笑ましい。最後に快くんの方から「はぐれちゃうんで」って繋いできたシーン、待ってました!って感じでほっこりしました。そしてラストの陽雅さんの視点で優真くん登場…!ここで来ましたか。続きがすごく気になります。