テラーノベル
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俺は慌てて優真に駆け寄り、頭を下げる。
「優真、ごめん。酷いこと沢山した」
顔をあげると、優真は両手を腰に当て、頬を膨らませる。
「ホントだよ。陽雅のせいで俺、超辛かったんだから」
「そうだよね。ホントごめん」
俺はそう言って再び頭を下げる。
「まぁ、とりあえず顔上げてよ」
優真の言葉を聞き、俺は顔を上げる。
「確かに俺は陽雅の束縛が原因で死んじゃったけどさ、陽雅一緒に居られて幸せだったよ?」
「でも、俺が優真を死なせた事には変わりないでしょ?」
「そうだけどさ〜。ってか、陽雅今好きな人いるでしょ〜」
ニヤケながらそう言う優真に俺はゆっくり頷く。
「まぁ、居るけど…」
「付き合わないの?」
「付き合えないよ。また同じ事繰り返しそうだし」
「そっかそっか。俺が死んだせいで陽雅の心縛っちゃったね」
「違うよ。俺が全部悪いの。だから優真は自分を責めないで」
「陽雅さ。勝手に自分が全部悪いって決めつけないでよね」
「だって本当に…」
「俺は陽雅から離れる選択だって出来たの。でも俺は陽雅と一緒にいる道を選んだ。本気で陽雅が好きだったから」
優真はそう言って微笑む。
その笑顔を見ると、余計に申し訳なくなる。
俺がその笑顔を奪ったから。
「俺がした事は許されない事なの。だから二度と恋人も作らないし、幸せになりたいとも思わない」
「うわ〜。そんなに後悔しちゃって。やっぱり陽雅に悪役は向いてないね」
「悪役って…役じゃなくて俺は本当に悪だよ」
「そうかな。俺は陽雅が心から悪い人だって思わないよ?」
「なんで?」
「何でだろうね。まぁ、何となくだよ。一緒に居たから分かる」
優真が変な事を言っている。
まぁ、こんなのただの夢だし、当たり前に変な事も言うのかもしれないけど。
「俺は悪い人だよ。変な事言わないで」
「変だと思うよね。でも俺は本気で陽雅が悪い人なんて思ってないよ」
そんな訳ない。俺は悪い子だ。
昔からずっと独占欲が強くて、自分勝手に束縛もする悪い子。
「そう思ってくれるのは嬉しいけど、俺本当に悪い人だよ?」
「分かった。じゃあ、俺の件は全部陽雅が悪かったって事にしてあげる。それで陽雅の気が済むならね」
「うん。その通りだからそれでいいよ」
「じゃあその件は置いといて、その後の陽雅はどう?」
「その後の俺?」
「うん。陽雅は俺にした事を後悔してちゃんと反省が出来てる。それに零斗さんだっけ。あの人も言ってたように色んな人を助けてる。だから陽雅はいい子だよ。ちょっと一回間違えちゃっただけ」
「でも、兄ちゃんが俺は悪い子だから幸せになっちゃダメだって」
俺の言葉を聞いて、優真は顔をしかめる。
「俺、あの人苦手。なんか陽雅の事縛ってる気がして。俺が陽雅の家行った時とか時々会うことあったけど、なんか嫌な感じっていうか…俺の事嫌いそうだった」
「兄ちゃんが? そんな事ないと思うけどな」
「陽雅自身も感じてるんじゃない? お兄さんに支配されてる感じ? ほら、陽雅が俺にしてたみたいに。”いい子だから”って」
胸がドクンと跳ねる。
確かに俺は兄ちゃんの言う事は自然と聞いてしまっていた。
支配されてる感じが無いといえば正直嘘になる。
でもそれは全部、俺のためだから。
「兄ちゃんは確かに俺の事支配してるように見えるけど、それは俺を正しい道に誘導してくれてるからだよ。優真の件も一瞬自分を許そうとしちゃったし」
「それでいいんだよ。陽雅はもう自分を許していいの」
「でも…」
「でもじゃなくて…」
優真はそこで言葉を止め、ふと暗闇の一点を見つめる。
「やばっ。もう花火あがっちゃう。急がないと…」
優真は考える素振りを見せた後、俺を抱きしめる。
「陽雅。今までよく頑張ったね。でももう頑張らなくていいよ。自分の事、許してあげて」
「そんなの無理だよ…」
俺の言葉を聞いて、優真は抱きしめるのをやめて俺を見る。
「陽雅。当事者の俺が言ってるんだよ? だから大丈夫。自分を許してあげて」
優真の言葉を聞いて、俺は俯く。
俺は本当に自分を許して良いのだろうか。
俺は幸せになっても良いのだろうか。
俯いたままでいると、優真が俺の肩に両手を置く。
「よし。陽雅。俺死んでるし意味無いかもしれないけど今ドルの力使ってあげる」
「ドルの力?」
顔をあげると、優真は手を離し、ニコッと笑う。
「そう。付き合ってすぐ、陽雅が分けてくれたでしょ?」
ドルは好きな人かつ一度性行為をした人に一回分の力を分けることができる。
優真と初めて性行為をした日に、確かに俺はドルの力を分けた。
「そうだったね。それ使って俺と別れればよかったのに」
「も〜。言ったでしょ? どんだけ酷いことされても俺は陽雅の事好きだから、陽雅と一緒にいる道を選んだの」
「そうだとして、なんで死ぬ前に俺から離れなかったの?」
「何でだろうね。死んでも離れたくない…みたいな? 陽雅は俺の事ずっと覚えててくれたから、死んでもそばに居られたし」
優真はそう言って嬉しそうに笑う。
「でも陽雅には他に好きな人が出来たからなぁ…ちょっと寂しくなっちゃうな〜」
優真の言葉に目を伏せると、優真がハハッと笑う。
「冗談だよ〜。死んだ俺の事なんて気にしないで、思いっきり恋しちゃってよ。じゃあ、いくよ?」
優真はそう言って俺に近づき、耳元で囁く。
《陽雅は幸せになっていいんだよ》
その言葉を聞いた瞬間、心がふっと軽くなる。
優真は俺から離れて、無邪気に言う。
「どう? 効いた? 幸せになりたい?」
そんな優真に俺はフフッと笑う。
「うん。俺は今、幸せになりたい」
「良かった。現実でも残ってるといいけど…まぁ、早く起きなよ陽雅。恭也くんと花火観て来ないと」
「うん。分かった。ありがとう」
俺の言葉を聞いて、優真は嬉しそうに笑う。
「気にすんな。恭也くんの事、幸せにしてあげてね」
「うん。頑張る」
「陽雅も幸せになって。あっ、たまには俺の事も思い出してよね。寂しいから」
そう言う優真の声が小さくなる。
「あっ、言い忘れてた。何事もやらない後悔よりもやる後悔だから! 頭に入れといてよね〜」
優真の声はだんだん小さくなっていく。
「じゃあ、元気でね! ばいば〜い! ばいば…」
気付いたら優真の声は消え、目の前には天井が見えていた。
少しボーッとした後、ハッとする。
(祭り、行かないと…!)
俺は慌てて起き上がる。
クローゼットから浴衣を取り出し、急いで階段を降りる。
浴衣に着替えると、少し髪を整え、家を飛び出した。
“陽雅は幸せになっていいんだよ”
夢の中でのドルの力なんて、効いてないのかもしれない。でも、優真のその言葉が背中を押してくれた気がして。
(優真、ありがとう)
夜空にヒューっと花火が上がる。
(急がないと…!)
花火が上がり始める中、俺は全力で走って神社に向かった。
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夜空にヒューっと花火が上がる。
「あっ、花火!」
「あっち行こう! ここだとあんまり見えないし」
「そうだね」
みんなの楽しそうな声が響く中、橋の上でただ、立ち尽くす。
(陽雅さん、来なそうだな…)
「はぁ…」
(もう少しだけ待ってみよう)
本当は分かっている。
あの日、”さようなら”を聞いた時から。
俺達はもう、ここで終わりなんだって。
涙が零れそうになりながら花火に目を向ける。
木や建物で隠れ、少ししか見えない花火を見てフッと笑う。
(ホント、全然見えないな…)
それでも俺は花火を見上げた。
そうしてないと、涙が零れてしまうから。
コメント
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灯依さん、第38話拝読しました……優真が陽雅に「幸せになっていいんだよ」とドルの力で囁くシーン、本当に胸が熱くなりました。ずっと自分を責めてきた陽雅が、当事者である優真から許しをもらう——その重みがじんわり伝わってきました。恭也くんが橋の上で一人花火を見上げる切なさも、対比でグッときます。陽雅が走り出したラスト、これからの展開がすごく気になります🌷
さくら
46
#束縛