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ライブ、?!! しかも貸し切り状態のライブ開いてくれるとか嬉しいやつ、!!🥲 最後は、ホテルの最上階取ってくれて、美味しいご飯用意してくれるとかもはや完璧な彼氏すぎる…、
誰だろう?とは思ったが、思わず「はい」という返事をしてしまった。
「こちらの車にお乗りください。成瀬様がお待ちです」
この人、奏多さんのこと知っているの?
かと言って、本当について行っていいのかな。
私が悩んでいると
<ブーブーブーブー>
スマホが鳴った。
相手は奏多さんだった。
「はい」
<駅ついたか?>
「着きました」
<運転手がいるだろう?その車に乗って。後は運転手に任せていればいい。俺は現地で待っているから>
「えっ!どこにいるんですか?」
<秘密。じゃあな>
一方的に電話が切れてしまった。
つまり、この運転手さんは信用してもいいんだ。
「お願いします」
運転手さんに案内され、車に乗る。
運転手さんも何も話をして来なかったし、私も何を話していいのかわからなかったため、車の中は静かだった。
三十分程乗った頃、とある地下駐車場に車は入って行った。
「着きました」
そう言われ車を降りる。
駐車場から運転手に案内されるまま、建物の中に入って行く。
「こちらへお入り下さい」
そう言われ扉を開けられた。
そこには
「えっ?ここって……」
扉を開けると、そこはライブハウスのような造りだった。
指示をされた通り、一番前の真ん中の椅子に座る。もちろん、この中には私だけ。
気がついたら運転手さんはいなくなっていた。
しばらくして、まるでこれからライブが始まるかのように音楽が聞こえてきた。
「この曲……」
間違いない、湊さんの曲だった。
一瞬、会場が真っ暗になったかと思うと、目の前には湊さんが立っていた。
私は、驚きの余り言葉を失う。
マイクを持った湊さんは何も言わず、そのまま曲を歌い出した。
これはまるで、貸し切り状態のライブ。
私だけのために開かれているライブだった。
初めてだった。
何度も来たいと思っていたが夢叶わずにいた。
思わず、大粒の涙が零れる。
この歌を初めて聴いた時から、この人のようになりたいと思った。
湊さんのように、人を感動させられる歌を歌いたい。憧れの人が目の前で歌っていた。
一曲終わる頃には、私の顔はぐしゃぐしゃになっていた。
ハンカチももう水分を吸収しないくらい、それほど涙で濡れていた。
歌っていた時は真剣な顔をしていた湊さんも、そんな私を見て笑った。
「花音、誕生日おめでとう」
マイクを使って彼は話し出した。
私は言葉すら出ない状態だったので、ハンカチで顔半分を隠しながら、彼の言葉に対して頷くしかなかった。
「今日は花音だけのために歌うから。しっかり聴いとけよ?」
そんなことを言われたら、もっともっと涙が溢れてしまう。
彼は私に微笑んでくれたかと思うと、真剣な顔になり、二曲目を歌い出した。
どうしてここまでしてくれるんだろう。
私は彼に何をしてあげられた?
ずっとずっと憧れていた人の歌。
やっぱりプロは違う。
家では俺様でも、我儘でも、たまに甘えてくれる時があっても、舞台の上に立てば全然違う人に見えた。これがこの人の世界なんだ。
二曲目が終わった。
「俺の歌どうだった?」
湊さんに話しかけられる。
泣きすぎて、感動しすぎて声が出ない。
頷くしかできない。
「良かった?」
うんうんと勢いよく首を縦に振る。
湊さんは笑っていた。
「三曲目、聴いてください」
「Last Song」
私の大好きな曲だった。
彼は歌い出す。
こんな最高の一日、一生忘れることはないだろう。絶対に忘れない。
例え、彼と別れる日が来ても、会えなくなる日が来ても。
三曲目はずっと彼を見つめていた。
泣くのは我慢した。
彼の声を覚えていたかったから、余計な雑音を立てないようにした。
「俺からの曲のプレゼントは終わり」
そう言ってマイクを離すと、彼が客席に降りて来た。
「さぁ、行くぞ?」
私の手をひっぱり、会場から出る奏多さん。
どこに行くんだろう。
そこは、ホテルの最上階の部屋。
広い、そして、大きな窓があり、窓からは都会の景色を見渡せる。外は暗くなっており、いろんなライトが点々としていた。それが信号なのか、電灯なのか、車の光なのか、お店の電気なのか、ここからではよく見えない。ただ、綺麗だった。
様々な人がこの中でいろんな思いを抱きながら生活をしているんだ。
「綺麗」
窓の外を見ていると、奏多さんから呼ばれた。
「こっちに来て?」
部屋の奥に行く。
そこには見たこともない、大きなホールのケーキがあった。
「すごいー!」
蝋燭に奏多さんがライターで火を灯す。
部屋の電気を消され、蝋燭の火だけが灯る。
「誕生日、おめでとう。これからもよろしく」
彼のこれからも……という言葉が嬉しかった。
でも、少し悲しくもあった。
いつまで一緒にいることができるのだろう、そんなことを考えてしまったから。
「花音、火を消して?」
「はい」
私はふうと息を吸い込み、思いっきり火に吹きかけた。
火はすべて消えた。
奏多さんが部屋に電気を再び点ける。
すると
<ピンポーン>
部屋のチャイムが鳴った。
「おっ、ちょうど良かったな」
なんだろう。そう思っていると、私が食べたことのない高級そうな料理が部屋に運ばれた。
「俺の家でゆっくりでもいいかなと思ったんだけど、初めて一緒に過ごす誕生日だったから特別にしたくてさ」
「嫌だった?」
彼が不安そうに私に問いかける。
「そんなことないです。こんなことしてもらって、私、奏多さんにどうやってお礼をすればいいかと思って。最高の誕生日です」
「良かった。飯食べよう。腹減った」
レストランとかで食べるのであれば、どうやって食べて良いのかわからず、恥をかきそうな料理のコース内容。
二人きりだから、あまり気を遣わず食べることができた。
「美味しいー。このお肉、柔らかい」
食べたことのない、柔らかいお肉。
満面の笑みで食べていると
「お前の料理の方が美味いけどな?」
彼がそう言ってくれた。