テラーノベル
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賊の襲撃を受けた俺達は、後日メッサー王に帝都リガルド城へと呼び出されていた。
今回は待たされることなく、俺、ステラ、ヨハンナは謁見室へと通された。
高い天井と壮麗な装飾が施された部屋の中、俺達は玉座の前で整然と跪いていた。金の刺繍が施されたカーテンが静かに揺れ、部屋に漂う重厚感は言葉を発することすらためらわせる。
「お、おい、お前本当に王子なんだな。あ、あたし本当にここにいていいのか? 捕まらないか?」
海賊のヨハンナの目が右に左に泳ぐ。
「大丈夫、多分」
「多分ってなんだよ!?」
「父上が、もしかしたらノリで死刑とか言うかもしれない」
「マ、マジかよ。帰っていいか?」
「ダメ」
しばらく待たされると、メッサー王が姿を現す。父親ながら一目で圧倒される存在だった。背が高く筋肉質で金色の短髪、眼光は鷹のように鋭い。重厚な黒の鎧がその身を覆い、燻銀の装飾が夜空の星々のように光を放つ。
数々の戦争経験があるリガルド帝国帝王メッサーは、まさに絵に描いたような悪の帝王の雰囲気がある。
彼は文官と騎士を引き連れ玉座に腰掛けると、ゴホゴホと咳込む。顔色は白く健康状態が思わしくないことが一目で分かる。
父は玉座に肘をかけて頬杖をつくと、暗い紫色を宿した双眸を俺たちに向けた。相手の心を抉り取るような冷徹な光が宿り、視線を交わすだけで怯む者も多い。まるで大魔王と謁見しているみたいだと思いつつ頭を垂れる。
「ラウル、お前が聖剣を覚醒させ盗賊団を退けたと聞いている。お前に聖剣の素質があったとは嬉しい誤算だ」
メッサー王は、低く乾いた声で告げた。
俺は跪いたまま答える。
「私にもなぜ使えたのかわかっておりません」
「聖剣は王家のものに反応して使えるようになるものだが、誰にでも使えるわけではない。お前には素質があったということだ。第一王子ですら、聖剣を覚醒させていない。しかしお前は二本も立て続けに覚醒させた」
「恐れ入ります」
「うむ、ラウル余は王子の中で一番お前に期待していなかったが、見る目が少しかわった。ゴミから犬に格上げしよう」
なにそれ、褒められてんの? と思ったが、周りの文官が「おぉ、これは名誉なことだ」と拍手する。どうやらかなり褒められているらしい。
「ありがとうございます。父上ご質問があります、なぜステラの体の中に聖剣があったのです?」
「ステラは古代魔竜戦争のとき、伝説竜を封印した聖女の末裔だ」
「えっ、伝承の……」
魔竜戦争とは、その昔魔竜ニーズヘッグが世界を滅ぼそうとした時、人間たちは神竜ファフニールを召喚して助けてもらったという話だ。
二匹の竜の力は互角で、その戦いによって大地が裂け、海が吹き上がり、今の大陸が産まれたとまで言われている。これはゲーム、グローリーナイツのプロローグで語られる話だ。
「聖女とファフニールはニーズヘッグを打ち倒したが、完全に消滅させることはできなかった。ファフニールはニーズヘッグ復活に備え、己の体をバラバラにして聖女の体に武具として封印された」
「なぜグランツ王家が、その封印を解くことができるのですか?」
「聖女を率いて戦ったのは、我がグランツ王家の祖先だ」
えっ? もしかしてグランツ王家ってハーレム勇者の家系?
魔竜を打倒したって、間違いなく勇者だよね。
「我が祖先は、グランツ家の人間のみに封印を解く紋章鍵を刻印した。紋章は代々受け継がれ、お前の手にもあるだろう」
俺は自身の手に刻まれた、太ったトカゲみたいな紋章を見やる。
「ではまさか、金庫番とは」
「聖剣をその身に宿した聖女たちだ」
愛人っていうのは建前で、実際は父が聖女を保護していたってことなのか。
「聖剣は全部でいくつあるのでしょうか?」
「リガルド地方には全部で20本あると言われている」
「結構多いですね……」
「剣のそれぞれに、封印されているファフニールの部位の力がある」
そうか、フリューゲルは翼、ハートは心臓の力が封じ込められていたのか。
「父上、我が屋敷にも聖剣の一本があったのですが、あれはなぜでしょう?」
「多分そこで聖女が死んだ」
えっこわっ……。
「聖剣は聖女の子に代々引き継がれていくが、子を成さず死んだ場合は死体から聖剣が出てくることもある」
めちゃくちゃホラーやないか。
よく今まで放置されてたな。
下手に警備をつけるより、ガラクタを装ったほうが安全なのかもしれない。
「ラウルよ、賊は金庫を狙っていたのだな?」
「はい、しかし金庫が一体何かわかってはいなかったようで、強力なマジックアイテムがあると勘違いしていました」
「あながち間違いではないがな。……嗅ぎつけてきたか」
「賊は反乱軍ヴェノムタランチュラを名乗っています」
「恐らくそれは裏で糸を引く国が使っている組織にすぎん。ギデオン、ラッシュ共和国、バーモンド連邦。どこが関与しているかはわからぬ」
スケールが大きくなってきた。
「ラウルよ、わかっているとは思うが聖剣を誰にも渡してはならぬ。奴らが聖剣に封じられし竜の体を揃えれば、ファフニールを復活させる恐れがある」
「竜って、そんなパーツ集めてきたら復活できるようなもんなのですか?」
「できる」
まじかよLEG◯ブロックみたいな竜だな。
俺は聖剣が思ったよりも危険なもので、この剣を巡って戦争が起きてもおかしくないものだと理解する。
気を引き締めると、父上はさてと一息つく。
「お前に褒美をとらせよう。なにが欲しい?」
「えっ、そんなのいただけるんですか?」
「構わぬ、申せ」
まさか褒美を貰えるとは思っていなかった。
この機嫌の良さからすると、新しい屋敷でも土地でも貰えそうな雰囲気だ。
なら……。
「3つお願いがあります」
「欲深だな」
「申し訳ございません。一つは」
俺はフリューゲルカリバーを出すと、サキュバスのナハトが姿を現す。
それを見て控えていた騎士が剣を抜こうとする。
「彼女は聖剣に封じられていた悪魔です。ですが、俺の力になり守護してくれる存在です。魔族ではありますが、彼女を私の側近にすることを認めていただきたいです」
「構わぬ、その程度使役できずしてグランツ王家は務まらぬ」
「ありがとうございます。もう一つはステラとの関係を認めていただきたいのです。彼女は私の母のような存在であり、命を懸けて私を守ってくれた恩人でもあります」
ステラは驚いた表情を見せたが、すぐに目を伏せた。
「彼女は賊に襲われた時命がけで俺を守ってくれました。その代償に彼女は体を失い、夜魔化しました」
「ほぉ、人が魔族に転生したのか」
「はい、聖剣の力とナハトの力です。その時私は彼女と契約をしました。お互い生涯付き添うと、命を賭けた契約です。ですので父上、どうかステラとの関係を認めていただきたく思います」
メッサー王は俺をじっと見つめた後、コクリと頷いた。
「よかろう。元よりステラの聖剣を覚醒させたのならば、その者はお前のものだ」
「ほ、本当によろしかったのですか?」
「余の愛人のままでは不満であろう?」
「はい」
はっきり言うと、メッサー王はクククと笑う。
「ステラと余は元より、聖剣を守る関係。男女の情はない」
「聖剣を守るなら、側室に加えて守護すれば良かったのではないでしょうか?」
「ラウル、敵がいつでも外にいるとは限らん」
なるほど、リガルドにも裏切り者がいる可能性があるから、手元に置くのも難しかったのか。
「確かに、聖剣の鞘だけにしておくには勿体のない女だ。ステラお前もそれでよいのだな?」
「はい、生涯王子に尽くすことを誓います」
「ラウルよ、お前は万が一余の後を継ぐ可能性がある。現状結婚は認めぬが、婚約を見据えて候補を集める分にはいくらでも許す」
「ありがとうございます」
「勘違いするな、リガルドの恥になるものを選ぶことは許さぬぞ」
「心得ております」
父上に認められたママ上は、跪いたまま俺の方を見て微笑む。その顔はどこか照れたような嬉しそうな表情だ。
今まで愛人にされていただけのママ上は、グランツ家との公式な関わりが使用人よりもなかった。しかし、これで王家公認になることができた。
なんだか親に彼女紹介したみたいになったが、俺は続ける。
「そして最後に、こちらのヨハンナを我が護衛騎士に任命したいと思います」
ヨハンナは慌てて頭を下げる。
「ヨ、ヨハンナです。ムカムで海賊行為を行っていました。リガルド国の船も何度か襲ったことがあります」
どもる彼女を見て、メッサー王は眉を吊り上げる。
「ラウル、この女はどこが良いのだ。あまり頭は良くなさそうだが?」
「かなり巨乳です」
「それは見ればわかる」
「この者は、最初私のことを悪王子と嫌悪していました。ですが、私が窮地の際、己の私情を押し殺して助けてくれました」
「と、とんでもない、あたしは王子に助けられただけでございますです」
「私はグランツ王家の益になるものには金を、敵になるものには容赦のない剣を浴びせます」
「……なるほど、それがお前なりの政策か。構わぬ好きにせよ。お前がかわった女を好むことはよくわかった」
「ありがたき幸せにございます」
俺は深く頭を下げた。
コメント
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めっちゃ良かった…! 謁見シーンから世界観の核心にグッと迫ってきて、特にステラが聖女の末裔で、聖剣が竜のパーツって設定が一気に深まった感じがした。ナハトを側近に認めさせるところも、ステラとの関係を正式に認めてもらうところも、ラウルの成長と覚悟が伝わってきてグッときたよ。ヨハンナを護衛に推すシーンも、悪王子っぽくない優しさと計算が見えて好き。続きがすごく気になる!
ありんす
405
#牛肉