テラーノベル
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珠李
176
HARUKA
2,207
【其の二:空白(ヴァルポ)の抱擁】「兄貴ーーっ!! 無事ですか! 五体満足ですか! 指はちゃんと10本ありますか!?」執務室の外の長い廊下で待っていたのは、レノヴォの後輩兵士、ヴァルポだった。少し大きめの軍服を着こなした彼は、レノヴォの姿を見るなり、まるで主人の帰りを待つ小狐のようにトコトコと駆け寄ってきた。「おう、ヴァルポ。なんとか生きてるよ……。なんだあのプレッシャー、部屋の空気が凍りついてて、息をするだけで肺が破裂するかと思ったぞ……」レノヴォは装甲壁に背中を預け、ずるずるとその場にへたり込んだ。「やっぱりあの『孤高の死神』クロノ大将、噂通りのバケモノですね! なんでうちの優秀で面倒見の良いレノヴォ兄貴が、あんな冷血漢のパシリにされなきゃいけないんですか! 上官たちの陰湿ないじめです、僕は絶対に許しません!」ヴァルポは自分のことのように顔を真っ赤にして、小さな拳を振り回して憤慨している。「これこれ、声がデカい。あいつに聞こえたら一瞬で俺たちの『存在の時間』を消されるぞ」レノヴォは苦笑しながら、ヴァルポの頭をくしゃくしゃと撫でた。ヴァルポは、半年前に行き倒れていたところを軍に保護された、過去の記憶が一切ない「空白」の少年だった。なぜ自分がここにいるのか、自分の親が誰なのか、何もかもが空白。そんな彼を、ただの下っ端であるレノヴォだけが「名前があるなら、これから楽しい思い出で空白を埋めていけばいいさ」と、本当の弟のように温かく迎え入れたのだ。だからこそ、ヴァルポはレノヴォを「兄貴」と呼び、全幅の信頼を寄せていた。「さーて、愚痴ってても書類は減らないしな。早く今日の分の倉庫整理と、食堂のジャガイモ剥きを終わらせちまおうぜ、ヴァルポ」「ちぇー、兄貴がそう言うなら手伝いますけど……終わったら、絶対に購買部の特製レーション(配給食)奢ってくださいね!」「わかってるよ。ほら、行くぞ」不条理な階級社会、命の軽い軍隊生活。その過酷な環境の中でも、互いを慕い、支え合う2人の泥臭い絆だけは、この寒々しい鉄の基地の中の、確かな温かい光だった。
コメント
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第2話、読みました!ヴァルポが「小狐のようにトコトコと」駆け寄ってくるところ、もう完全に愛おしい弟キャラで笑いました。レノヴォが「楽しい思い出で空白を埋めていけばいい」って言って迎え入れた過去エピ、じんわり沁みますね。過酷な軍生活の中で、この二人だけの温かい“空白の埋め方”が、この物語の大事な軸になりそうな予感。続きが気になります!