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雨が勢い良く振る空
空から注ぐ雫は激しい音を立て地面に何度も叩きつけられる
空は濁りきった雲で敷き詰められていて、どこからか雷の音も響いている
ダレイは雨に濡れながら隠していた車に乗りこむ、かきあげられた髪は雨に濡れ,崩れており,スーツもびしょびしょだ
しかし、車に乗ったダレイはエンジンもかけず1人ずっと頭を悩ませていたのだ。
彼は元々、怪盗…言わば犯罪者だった
なぜ抜けたのか理由は分からないが…マイクと関わったダレイは、言わば奴らの脅しの道具にされたのだ。
命を狙われてまで……
しかし、俺は生きている。マイクが奴らの元に戻ったから……それに…課長が怪我を負ったのも,マイク本人がやった事じゃない。それなのに何故こんなにも……あの男への怒りが収まらないのだ
「……クッソ!!」
車の中でダレイの苦しい声だけが響いた
_消えたバーテンダー__🥀𓈒 𓏸
マイクが奴らと消えて、数ヶ月が経つ
しかしこれといったおかしな事件は起こらなかった。
てっきりマイクの知識力を犯罪に使い、平和が乱れると覚悟をしていたが、何ら変わりごとは何も無く…時だけが過ぎていた
「ダレイ、なぁ大丈夫か?」
仕事をしていると、横からノアに声をかけられた
その横にはレオンも立っている
「あぁ…どうした?」
「ダレイ先輩。お気付きになってないようですが……5回目の呼び掛けになります」
「済まない…ボーッとしてたみたいだ」
ノアとレオンは顔を見合せる
「ダレイ、課長が呼んでるぞ」
「分かった、すぐ行く」
ダレイが立ち上がると廊下の方へとスタスタ歩いて行った
残された2人はダレイの様子をじっと見つめた
「あいつ……もぬけの殻だな……」
「あの電話の件以来でしょうか…ダレイ先輩の様子がすっかり変わってしまったのは」
「さぁな、あの後何も話してくれないまま終わったしな……」
「ダレイ、調子の方はどう?」
課長も、ダレイの様子がおかしいのは気付いているようで、調子を伺う
しかし言えるわけが無い_
課長を襲った奴らと関わりがあり、そのうちの一人と今まで一緒に居たなんて。
「大丈夫です。仕事に支障を乱す真似をしすみません」
「構わない、大切な人を失うのは辛いもの」
「いえ…アイツなんて……。……えっ?」
何故課長がそんなことを?
何も言ってないはずなのに…
「悪いけれど、全て聞いたわ、貴方何も話してくれないから」
「聞いた…?マイクと話したんですか?」
課長はマイクという名に聞き覚えがないのか
考え込む様子を見せる
「そう、貴方の友人の名前はマイクと言うのね」
「課長、聞いたというのは…誰にですか?」
やけに心臓がドキドキしている
ここ数ヶ月何も変わらなかった状況が、少し解決に近付けそうな気がしてしょうがないからだ
「……知りたいなら…ここに電話しなさい」
課長は小さな名刺を取り出し、机の上に置いた
ダレイはそれを手に取り見つめる
そこには__
「……これ、名刺ですか?」
「たった今帰ったのだけれど…正直掛けない方がオススメね、見たことも無いし聞いたことも無い部署だから」
ダレイの持つ名刺の手に力が篭もる
確かに他の人にはくだらない紙切れや信じ難い話だとは思うが……
そんな非現実な出来事を、見たのも、聞いたのもダレイだけだからだ
課長がもう1つ持っていた名刺を見つめる
「非現実的ね…死者と会話をし事件を解決させる刑事なんて」
それはかつてマイクが話していた
マイクの刑事の仕事と同じ内容だったのだ
「課長、ありがとうございます。」
ダレイが課長に頭を下げそのまま部屋を後にしようとする
ドアノブに手をかけようとした時、ダレイが口を開いた
「…課長…俺はどうするのが正解なのでしょうか…」
「……」
「これ以上関わっちゃいけない気がするんです。しかし、こうも俺はまた厄介事に手を掛けようとしています」
「……」
「馬鹿犬のままね。友人を捨てる人間が居るか?」
「……!」
「お前が今どんな状況にあるかは知らないが,きっと間違ったことはしてないだろう」
椅子に座ったまま課長はダレイを見つめながら話を続けた
ダレイの掴んでいたドアノブから手が離れる
「めそめそするな、それでも刑事か?」
覚悟を決めたダレイは、再びドアノブを手に掛け、課長の部屋を後にした
「貴方なら上手くいく、必ず」
ダレイが仕事場から帰り、マンションの扉を開けると、すぐさま荷物を置き懐から名刺を取りだした
時刻は午後2時。かなり早めの早退だが…ダレイのやるべき事はこれから
名刺の電話番号を携帯に入力し,コールを繋げる
「……」
コールが繋がるのが遅い。
待っている間の携帯電話から聞こえる音がダレイをより緊張させた
しかしいくら待ってもコールは繋がらない
しばらくかけてても何も変わらない状況にダレイは携帯の電源を切ったのだ
「……嘘だったか…」
携帯を机に置き,不意に窓の外を眺める
最近は忙しくてじっくり外の景色なんて見もしなかったが…何事もなく平和ないつも通りの街を目に刻むと自然とリラックス出来る
「……」
マイクの事は……やはりほっておく事は出来ない
あの暴走している3人諸共、捕まえることは出来なくても止めることは出来るはずだ
「……行ってみるか」
車のキーだけを持ち、ダレイは玄関から外へと歩き出したのだ
ダレイの向かう先はマイクの経営していたBAR
本人はいないとは思うが,なにか情報があるやもしれない。
少しの可能性をかけて、あの男を探し出す必要がある
課長の言われた,あの言葉を信じながら、ダレイは車を走らせたのだった