「炭治郎。パンを買いに来ましたよ」
「……あ、優雨さん!有難う御座います!」
「竈門べーかりーが1番美味しいんです。おすすめはありますか?」
「はい!今ならクロワッサンが焼きたてで美味しいですよ!それと、優雨さんは甘いものが好きなのでフルーツサンドもおすすめですよ」
「ではそれにします。ああ、それと…これ、どうぞ」
「…これは?」
「日頃の感謝の印です。善逸と伊之助にも渡して下さい。」
「そんな、俺たちの方こそお世話になってるのに……」
「そんなことありません。炭治郎達が居てくれてどれだけ救われたか…とにかく、貰ってください。他の人にも配っているので炭治郎達にだけないのはおかしいでしょう?」
「うっ……じゃあ、お言葉に甘えて…ありがとうございます!」
「ふふ、どういたしまして。これ、凄いんですよ。磁石が埋め込まれてるのでこうするとくっつくんです」
「わ、本当だ!凄いですね!」
「でしょう?本当は禰豆子にも上げたかったのですが、せっとでは3つが限界で…なので、禰豆子はカナヲと玄弥とせっとにしようと思うんです。」
「それいいですね、きっと喜びますよ!」
「ふふ、そうでしたら嬉しいです。…ああ、立ち話し過ぎました。それでは、失礼しますね」
「あ、ちょっと待って下さい!」
「はい?」
「善逸達が家に来るから、何か作ろうかなって思って、さっきクッキーを焼いたんです。良かったら持っていってくれませんか?」
「!、いいんですか?」
「はい、是非!」
「ふふ。ありがとうございます」
「待ってて下さい、今袋に入れてきますので!」
「わかりました」
そう言って炭治郎はカウンターの奥へ行き、数分後にリボンのついた袋を持ってパタパタと優雨に近寄った
「はい、どうぞ!」
「わざわざありがとうございます。大事に食べますね」
「はは、そうしてくれると嬉しいです!」
「名残惜しいですが、失礼しますね。」
「はい!またのお越しを!」
チリンと扉についている鈴を鳴らして出ていく。早歩きでとにかく人気のない所へ行く。人が居ない路地裏に隠れ、先程貰ったクッキーを大切に抱えながら縮こまる。
「やっぱり、私とお揃い、なんて出来ません……この2つのきーほるだーは伊黒と蜜璃にあげましょう」
「…蜜璃に渡す時、この事聞かれるでしょうか……うぅ、不甲斐ない……」
「咄嗟に他の人にも、と言ってしまいましたし、他の人にも何かあげなくては…」
(皆さんいい人ですしお世話になっているので渡すことに不満はないのですが…でも、やっぱり、炭治郎は特別にしたかった……)
(……でも、これで正解です。私なんかでは、炭治郎に釣り合いませんから…)
いつもより少しお洒落な服装に少しの化粧。控えめなアピールに気付かれず、その事にショックを受けていた優雨は弱音を吐く。気分が落ち込んでいると、ピロンとスマホの通知が鳴った。なんだろうと、不慣れなスマホを操作して通知を見る。そこには『最初驚いて言いそびれちゃったんですけど、今日の優雨さんとても綺麗でした!キーホールダーありがとうございます。今善逸達が来たんですけど、やっぱり喜んでましたよ!大切にしますね!』と書いてあった。
「……ずるい…」
(不釣り合いでも、それでも、やっぱり隣に居たい)
彼にとっては何気ない言葉でも救われたような気持ちになった。単純だと思われるかもしれないが、恋する乙女は大抵こんなものだ。
「…蜜璃やしのぶにお化粧の仕方を教わろうかな……」
キラキラと輝いて見えなくても、恋焦がれる乙女はえてして可愛く見えるのだ。
*おまけ*
「善逸、伊之助。これ、優雨さんからだ」
「え、キーホールダー!?しかも優雨さんから!?うわぁーい!」
「あ?優雨から……ありがとよ」ほわほわ
「ふふ、影から見てたけど優雨さん可愛かったよ」
「禰豆子。いつの間に…」
「お兄ちゃんモテるよね〜。まぁ、私のお兄ちゃんなんだから当然だけどね!」
「けど、天然タラシもほどほどにね?恋やら友情やら別れるけど、記憶持ってる人全員から好かれてるんだから」
「?」
「禰豆子ちゃん、炭治郎にそれ言っても無駄だよ……」
「いつも鋭いくせになんで自分のことになるとそう鈍感になんだよ紋次郎」
「おしい、炭治郎だ!」
終われ
コメント
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皆の会話見てたら心温まった