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「は、はは、ははは……みんなこんなに僕のこと──分かったさ! 役立たずのバッファーは消えてやるさ! でもなっ……すぐに思い知るさっ、僕の有り難みをさ!」
「いや、ニトの雑用なんて要らないし、ダンジョン飯にカルボナーラ出されるより干し肉でも齧ってる方が緊張感抜けなくていいし、罠解除もケンが斥候職ギルドでスキル身に付けたから、いちいち石を投げてちまちま行く必要もないし。ニトをパーティに入れてることの有り難みなんて一生分かんないよ。あ、この瞬間抜けてくれる有り難みはもうずっと感謝してもいいかも! ありがとうね、今まで。役立たず幼馴染のフォローから解放されてフウは幸せだよ!」
ガンっと僕は手にしていたお盆を床に叩きつけて、クランハウスを出ようとする。
「おい! パーティの金で買ったお前の装備は置いて行け。その代わりにこの金をやるから、小さな飯屋の開店資金にくらいは出来るだろ。お前は冒険者なんてやってても死ぬだけだからなっ、どっかで料理人でもしてろや。成功した暁には顔くらい出してやらんでもねえからよ、フライパンでも振ってろや」
──そんな胸糞悪い追放劇から2年。新聞の号外には神の塔攻略! 人類の悲願達成! 最強パーティがやってくれた! なんて書かれていて、ケンとガイとマリアにエン、そして満面の笑みのフウのパーティ写真がデカデカと載っていた。
僕自身はケンやフウが噂を流していたらしく、やれ役立たずだの、やれ寄生虫だの、やれカルボナーラだのと言われて、それ以降パーティを組むことはもちろん、塔にだって挑めていない。彼女の1人も出来ない暗い日々。
彼らの攻略が本当に順調で、こんなはずじゃ──なんてバーで飲んだくれていた時に偶然にガイと出逢って聞いたら、経験値1000倍と熟練度カンストについては、みんな自分のステータスをみて気づいていたらしい。そしてその時に、
「楽して得るものに頼っていてはいつかそれが無くなった時にダメになる。これは確かに凄いスキルかも知れないけど、その者のもつスキルのうち2つだけをランダムでカンストするってのはバランス崩しそうだし、経験値の方に至っては注釈にレベル30以下に限るとか書いてるし」
「私たち出会った時にはもうレベル35だったもんね……」
「これ、露店で買ったお守りなんだけどさ──せいぜい毒レベル1が確率で防げるくらいのおもちゃだけど、これつければその2つのバフを確定で防げるからつけようか……」
「初歩毒よりザコいって逆に凄いな。デバフじゃないからかもしれんが」
という経緯ですでに僕の、「お願いするから帰ってきて! いやだ、もう他のパーティに入ってるしハーレムだし、わっはっはっ」とざまぁする切り札のスキルさえ無効になっていた。つまるところ、あの当時のみんなは純度100%の実力で、僕は純度100%の足手まといだったんだ。
この話を聞いた時点でパーティは85階を超えていて、今は攻略されてやっと判明した最高階100階に手が届くところまで来ていたんだ。それでも足りない火力不足はみんなの素の数値を上げた努力と、ゴッドハンドエンの新たなバッファースキルの神業全ステ2.5倍の習得によって上乗せされて塔のボスたる神龍を倒したのだ。
その偉業によって人類全体が神の恩恵として世界から病気や飢饉などを無くし、多くの人々に幸せを届けたとか。