途中で野営することになるから、今夜はここで野営してから明日の朝、出発することにした。
当然、夕食はプチ宴会になった。
マックスさんの希望で、バーベキューですね。まあ、予想通りだけど。
魔法でオークの肉を同じくらいのサイズにカットする。端っこは大きいままでね。それを見て呆れてるみんなだけど、草原の風のメンバーや女性陣は肉と野菜を交互に焼串にさしてくれる。とっても助かったよ。
その間に、マックスさんたちは火を起こし、竈をつくってくれている。
完成したあとは、焼き網をセットして、バーベキューとは別にカットしておいたステーキをおいて焼き始めた。
僕は大量のパンをいくつかの籠に盛って、いくつかの場所へ持ってゆく。女性陣は僕のテーブルの周りに集まってた。僕の隣はフラットだ。
すでにフラットはサンドイッチを食べてます、大活躍だったからね。
サラダを大きなボウルに盛ってみんなに配ってもらう。特に、マックスさんたちの近くには大盛りをおいてもらった。
スープは余り物が二種類です。セルフでとってもらったよ。
「じゃあ、みんなご苦労だった。まだ、戻るまで大変だが、気をつけて戻ろう。毎回うまい飯を提供してくれたナギに感謝でいただこう!」
オー! とみんな肉にかじりつく。
あはは、勢いが違うね。
そんなこんなで、夕食はどんどんなくなってゆく。
でも、焼けた肉は僕とフラットの前には山ができるほど置かれてる。フラットは、超ご機嫌だね。
今夜は僕たち二人は見張りをする必要がないと言われて、嬉しくなる。フラットと一緒に眠れるから。
いい話を聞いたので、余計にご飯が美味しいよ。女性陣はどうするんだろうと思っていれば、男性たちがついてくれるそうだ。それなら安心だね。
早々に飯を終えた俺とフラットは、みんなにお休みの挨拶をして、テントに戻った。入る前にもう一度浄化して中に入る。
横たわったフラットの腹の中に転がり込んだ僕は、フラットにお礼をいった。
『フラット。今回の依頼、いてくれてよかった。すごいよ、フラットは最高だよ。これからもずっと一緒にいてね』
『もちろんだよ、ナギ。僕は弟だから、お兄ちゃんの頼みも聞くし、一緒に依頼も受けるよ。ずっとずっと一緒にいるから』
うん、とあまりに嬉しくて鼻の奥がツンとした。ここで泣いたらお兄ちゃんとして情けない、そう思って目を閉じた。
早朝。
みんなそれぞれで朝食を取っている。
硬いパンだね。でも、女性陣がスープを作ってくれたんだ。自分たちの干し肉を使ってくれるらしいので、野菜だけは提供した。
なかなか旨いスープで、みんなパンを浸して食べてるけど、僕とフラットはふわふわのパンを食べてます。フラットはたりないので、肉串を山盛り引き抜いてやった。同じ皿の端っこに、おにぎりも10個出しておいたよ。
はふはふと食べるフラットを見て、幸せを感じる。
僕は頂いたスープを飲み、パンを食べてます。
さて、今日中に戻ることは難しいかな。魔物が出たら無理だろうけど、仕方ないね。
その時は、またアイテムボックスの料理になるだろうね。まあ、それは問題ないよ。
みんなが戻るための準備を始めてる。
僕もテントの中を浄化してアイテムボックスに入れた。フラットは椅子を出せば、被ってきちんとつけてくれたよ。マックスさんたちは帰りのことを相談してるみたいだね。
「ナギ。悪いんだが、気配を探りながら戻ってくれるか。面倒な魔物がいたら、悪いがフラットと狩ってほしい。街道に出てくる雑魚はなんとかするが、数が増えれば大変なことになるからな」
「わかりました。ギルマスから通信機借りてるので、途中で空に上がるときは連絡します。その間に、雑魚の数が増えたら連絡を。戻って凍結しますから」
悪いな、というけど問題ないよ。できれば、みんなにはまっすぐ止まらずに走ってほしいくらいだし。
「出発!」
マックスさんの声で、みんなが走り出す。
なんだか、馬の足取りもかるそうだ。でも、途中で休まないと馬がバテるから。やっぱり一晩は泊まることになりそうだね。
一時間ほどかけたとき、僕とフラットの探索に引っかかった。どうやらゴブリンの集落があるみたい。
「マックスさん。少し先にゴブリンの集落があります。そろそろ出てきそうなので、先に行って潰しますね。みんなはそのままかけてください。みんなのことは探知できるので」
『おう、悪いな。じゃあ、頼む!」
フラット、と声をかければ、静かに空に上ってくれた。一番うしろをかけていたから問題ないよ。
グンとスピードを上げたフラットは、一直線に飛んでいる。その姿はみんな目視しているだろうから、大丈夫だね。
すぐに到着したゴブリンの集落近く。
そこで魔力を伸ばして、一気に片付ける。
<ゴブリン凍結!>
パキパキパキ……
うん、終わったね。
『ナギ、少し奥にオークがいるよ。そこから先にはオーガがいる。でっかい鳥もいるね』
「わかった。じゃあ、オークから行く?」
『うん、了解!』
スーッと飛ぶフラットは、氷刃でオークの首をスパスパ切り落としてゆく。あはは、すごいね。まっすぐ切れてくよ。
オーク以上はアイテムボックスに入るので、問題なく終わった。少し進めば、オーガだね。
二頭だけだけど、どうする? と聞けば凍らせて、といったので凍結した。
鳥はどこにいるの? と問えば、いろいろらしい。
じゃあ、フラットの探索で遠くから弾丸で討ち取ってゆく。うん、いい感じだね。
そんなふうにフラットと一緒に魔物を狩りながら進んで、馬たちがバテないように治療と回復を使いながら進んだ。
結果、もう少しのところで日が落ちたので、一晩野営することになった。
当然、フラットが大きくて強固な結界を張ってくれたので、皆、安心して眠れた。
早朝は普通どおりの朝食になった。だって、もう少し走れば街に入るから。その方がいいだろうと言うことになった。
フラットはそういうわけにはいかないので、籠にたくさんのサンドイッチを入れて、みんなが硬いパンを食べている間に、パクパク食べてる。当然、ミルクもごくごく飲んでるよ。僕は隣でホットドッグをかじってます。
出発直前まで食べたフラットは速攻で椅子をつけてくれて、僕を載せてくれる。本当にかわいい弟だね。
じゃあ、と走り出したんだけど、わりと早く到着しちゃったよ。
その間、フラットと一緒に雑魚狩りしたけどね。
お昼前には街に入って速度を落とす。
ゆっくりと歩くみんなの後ろからついて行く。
フラットに手をふる子供もいるくらい、馴染んでるよね、フラット。
ギルドに到着して、マックスさんたちはギルマスの部屋に呼ばれた。で、俺は買取カウンターに呼ばれたよ。みんなのと獲物を出すためにね。
鑑定しながら出してゆくと、お兄さんがメモを付けてくれる。
それも途中で中止になったよ。続きは明日だって。
とりあえず、お腹が空いたというフラットと一緒に食堂へ向かう。
なんでも頼んでいいよといえば、嬉しそうにいろいろ注文してた。僕は、昼のおすすめプレート大盛りだね。
ガツガツ食べてると、マックスさんたちが降りてきたので、食堂は満席だね。
それでも僕たちの食いっぷりは変わらない。
夕方にはまた食べるだろうけど、とりあえずは昼寝するかな。
結局、夜遅くにお腹が空いたフラットと一緒にアイテムボックスから料理を取り出して部屋で食べた。やっぱり疲れてたんだね。
だから今朝はギルドの食堂へと向かう。
俺はいつものワンプレート。フラットはクリームパスタと肉煮込みを山盛り。そしてサラダだ。肉煮込みって、角煮みたいな見た目だけど、ご飯とよく合う味だという。
一個食べる? と聞かれて分けてもらった。
おおお!? これ、角煮だよ!
以前、別の店で食べたことがあったのを覚えていたらしい。これならクリエイトさんに頼めば柔らかく煮込まれて出来上がるんだろうな。うん、絶対常備したいメニューに入れておこう!
ふふふと二人で満足する。
けど、他にも美味しいものがあるから、止まらない。
朝ご飯は全員宿で食べてくるから、まだ誰も来ていないんだ。だからフラットとくっついて、話しをしながら食べた。この時間は大好きだ。家ができればもっと楽しくなるだろうね。頑張って肉を確保しなくちゃ!
ごちそうさま、と今日の分の僕の食費とフラットの朝食分を支払いする。
手を振って食堂を後にするんだけど、長い列ができてるよ。これじゃぁ、無理だね。依頼を見てみようかと思ってたんだけど。
じゃ、先にパンを買いに行こうかと外に出た。
パン屋さんに問題ない数のサンドイッチとホットドッグ、普通のパンを売ってもらう。他の人も買うから全部は無理だよ。
今朝のことを聞いてなかったな、と皆が揃うまで待つことになった。
「ナギ!」
声のする方へ顔を向ければギルマスだ。
上がってこいと言われて、フラットと一緒に階段を上がる。
「おはよう。まあ、座れよ」
言われるままに座れば、足下にフラットが伏せる。
「昨日のミノタウロス。確保したんだろ?」
「はい。入ってますよ。後でいいんでしょ?」
問題ない、と嬉しそうだ。
忘れてた、昨日言われてたんだ、領主に会いに行くって。はぁ、楽しくないね。でも、みんなと一緒だから仕方ないんだよね。
「それでな。もし、領主様が王都に向かうことになったら、マックスたちをつけようと思うんだが、ピットとお前にも行って欲しい。時間が合うようならショルダーも。当然フラットもだ。俺も行きたいが、日程がきまらなきゃ無理だ。頼めるか?」
なんで俺なの?
「護衛って事ですか? 王都までどれくらいかかりますか?」
そうだな、とどちらかと言えば、この街は王都に近いらしい。貴族の馬車でも四日もあればいいだろうと聞いた。
どうするかな。
「でも、僕はCランクですよ? そんなのが護衛だなんて」
それなんだよなぁ、と悩むギルマスだけど、仕方ないよね。
「まあ、今回の件では一番の功労者はお前だ。だから護衛しようがしまいが、多分一緒に行ってくれって言うと思うぞ。もちろん騎士団が同行するが」
あはは、あの人たちじゃ頼りにはならないね。
「そういう話になったときに考えさせて下さい。家のことも確認したいので」
そうだ! とギルマスが叫ぶ。
「忘れてた。朝、一度見に来て欲しいって伝言だ。家を見に行ってから領主様のところへ来てくれればいい。舘はわかるだろ?」
はい、当然です。
「じゃあ、これをお前に渡しておく。見たと思うが、通信できるやつだ。相手を思い浮かべて話せばいいから」
あ、借りてたやつだね。
「これって、魔道具ですか?」
「ああ。でも、どこにでも売ってるわけじゃない。これはギルドが作ったものだけど、似たようなものはあるぞ。かなり高いけど」
なるほど。これは持っててもいいかもしれないね。
最後に食事を提供したからとお金をもらいました。気持ちよく受け取っておいたよ。
じゃあ、今から家に行くとフラットとギルドを出ようとしたけど、再び呼ばれる。今度は素材買取カウンターのおじさんだ。
「今日は出かけるんだろ。それならお前の以外、全部出してくれ。お前のは後になるがいいか?」
いいですよ~と解体場に十三頭を出して、それぞれ誰の獲物かを言えば、メモをつけていた。
今度こそ、と外でフラットの背に乗る。
家までの距離くらいなら椅子はいらない。
「おはようございます、ナギです!」
そっと大きな扉を開けて中を見る。
フラットも大きな顔をだしてのぞき込んだ。
「ああ、悪いな忙しいのに。こんな感じでどうだ?」
クリーンをかけてから二人で中に入った。
玄関は石張りの床だ。そして壁際にはフラットの脚を洗うところがある。床は高く上がっているので、リビングへの入り口は一段だけの階段だ。
リビングに入れば柔らかい踏み心地の床板が気持ちいい。そしてキッチンと隣りには薪ストーブがある。料理もできるやつだ。
奥へ行けばお風呂。そしてトイレがあって、間には洗濯なんかをする洗い場がある。
フラットが大きな引き戸を鼻で開いた。覗いてみれば寝室みたい。その奥にはガラスの掃き出し窓があって、屋根がついてる。裏庭がきれいに見えるんだ。
勝手口から外に出れば、水の魔道具と手押しポンプが取り付けられている。これ、便利だね。
フラットはふわりと浮き上がってロフトを覗いていた。
「わぁ! フラット飛べるのか?」
デクの驚きにたいして、わふっと答えたあと、ゆっくり降りてきた。階段があるんだから上がればいいのに、とクスッと笑う。
天窓からは優しい光が差し込んでいる。
馬小屋だったとは思えないできばえだ。
「あと二日ほどで出来上がるから。中はもう終わった。外壁も張ったから、今やってる塀と引き戸だな。それと芝生の種を庭に舞いておく。すぐに生えてくると思うぞ」
すごいすごい~と跳び上がった。
玄関の外側は、中と同じ石が引いてあって、雨が降っても泥はねしないようになってるみたい。
「フラット。もうすぐ家ができるって。家具屋さんに行かなきゃね。それとライトがいるかな。あとはタオルとか食器とか。家で使うお鍋も必要だし。依頼中に使うのはあるから、家用だ。たくさん買い物しよう!」
くわぁん! と返事をしてくれた。
じゃあ、引き渡しの前日に連絡をもらうことにする。確認してから支払いをしますのでと言えば、明細を作ってくれると言った。うん、安心だね。
じゃあ、出かけてきますから、お願いします!
そう手を上げて、俺とフラットは外に出た。
さすがに領主の舘までだから、椅子をつけてフラットに乗った。そしてゆっくりスタートだ。
途中から早足で進んだフラットだけど、到着したのは同時だった。なんで?
大きな門をくぐれば馬車から皆が降りて来る所だった。
「おう、間に合ったな」
はい、でも何してたの?
聞きたかったけど、執事がやってきて全員連行されました。
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