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第4話「奴隷少女リアと“最強”の秘密」
王都の外れにある古びた宿舎――
軋む床と、風が吹き抜ける木製の壁。寝台は硬く、毛布も薄い。だがアレスとリアにとっては、久しぶりの“安全な場所”だった。
リアは部屋の隅で、まだ怯えたように座っていた。
小さく身を丸め、長い髪で顔を隠し、誰の声にも反応しようとしない。
「リア」
アレスは、リアの前にしゃがみ込んで声をかける。
「……」
「無理に話さなくていい。けど、俺は味方だから」
ゆっくりと顔を上げるリア。
その目には、まだ恐怖と警戒が残っていた。
「……本当に、地球から来たの?」
「ああ。俺も君と同じ。あの隕石で死んで、気が付いたらこの世界にいた」
リアは、ぼそりと呟いた。
「……わたしも。怖かった……。気付いたらこの世界の森の中にいて……捕まって、奴隷にされて……」
「ひどい話だ。でも、もう大丈夫。ここからは俺が一緒にいる」
リアの瞳が、わずかに揺れた。
アレスは立ち上がり、鞘に入ったままのボロ剣を手に取る。
「……実はさ、俺、まだスキル〈最強〉の正体が分かってないんだ。そろそろ試してみようと思ってる」
「……最強?」
リアが小さく首をかしげる。
アレスは笑った。
「そう、転生特典で貰った。名前だけ見るとすごそうだろ? でもステータスはオール1で、見た目は最弱なんだよな」
彼は部屋の隅に置かれた木製の椅子に向けて、剣を軽く振った。
その瞬間――
「ッ!?」
ドガァンッ!!
木の椅子が、空中で爆発四散した。
リアは目を見開く。アレスも驚いていた。
「……おいおい、ちょっと斬っただけだぞ?」
「……な、なに、それ……」
「スキルの効果か……? いや、まるで“力が無限に底上げされてる”感じだ。オール1の俺が、物理法則を無視してる」
リアは、呆然とアレスを見つめていた。
そして、ぽつりと。
「……もしかして、私のスキルも、関係あるかも」
「……え?」
リアが言った。
「私も、転生特典でもらったスキルがある。“共鳴”って名前……でも、今まで何の役にも立たなかった」
アレスの背筋に、寒気が走る。
「……まさか、“共鳴”って、“他人のスキルと連動する”とか……?」
「……分からない。ずっと発動してなかった。でも、アレスに出会ってから……」
そのとき――アレスの身体に、再び力が湧き上がった。
“スキル最強”のエネルギーが、前触れもなく加速する。まるで何かと“重なり合った”かのように。
「……共鳴してる。たぶん、リアのスキルが、俺の“最強”に共鳴して……」
リアは自分の両手を見下ろし、小さく震えた。
「……私も、“戦える”の?」
アレスは笑った。
「戦う必要はない。でも、そばにいてくれるだけで、俺は“最強”になれる。だったら――最強コンビってことだろ?」
リアは驚いたようにアレスを見つめ――そして、小さく、うなずいた。
まだ震える声で、でも確かに。
「……ありがとう」
それが、彼女の“新しい人生”の第一歩だった。
⸻
こうして、“最弱”と“絶望”は出会い、
互いのスキルが共鳴しあい、やがて世界を変える――
《第5話へ続く》