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ざわざわ
「きゃー!高等部の生徒会長、ななもりくんよ!?今日も素敵!」
「え!弟のさとみくんまでいる!!!今日、ついてない!?」
ざわざわ
クラスや学年だけではなく学校中の女子待望の時々訪れるイベント(?)が発生したようだ。
ここは中高一貫の学校で今名前が上がったのは高等部の二人、三年のななもりさんと二年のさとみさんで二人は有名な兄弟だった。
俺は中等部二年だから正直話題のお二人の事は全然知らないけれど、この学校に1年もいると自然と話題が耳に入ってくる。
容姿端麗な上成績優秀なカリスマ性のある兄、ななもりさん。
容姿端麗な上運動神経抜群で集団の真ん中でリーダーシップをとる弟、さとみさん。
渡り廊下をただ歩いているだけなのに目を引く二人。クラスの女の子たちは、というか中等部全体がなかなかお目にかかれない高等部の有名人が揃っていることに興奮しているようだった。窓際の席の俺も騒ぎの元へと目を向けた時だった。
ばちり。
(え?)
きゃああぁあぁぁあああぁぁああ!
二人と視線が合った、気がした。おまけに二人してこちらを向いたまま手を振っているから、女の子たちが大騒ぎだ。みんなが顔を赤くして思いっきり腕を振って応えている。
(あんな人達と目が合うなんて…気のせいやんな)
住む世界が違う。多分俺の世界とは一生交差することのない世界の住人。余計に賑やかになった世界から逃げるようにイヤホンを耳にさして机に伏せ瞳を閉じた。
「おかえりなさいジェル、ところで今日からお兄ちゃんになる二人よ?」
「ただい、ま………え?」
なぜか俺の家に、ななもりさんとさとみさんがいらっしゃった。
「よろしく、ジェルくん」
「よろしくな、ジェル」
そういって手を差しだしてくる二人を見た俺は固まる。だってさっきまで一生交わることのない世界の住人だと思ってた二人が、こんな至近距離にいるのだ。なんとか首を無理やりギギギと横へと動かし、そこに立つ母を見る。
「お…お母さん?何言ってるん?どういうこと?」
「あら、聞いてなかった?今日からジェルのお兄ちゃんになる、ななもりくんとさとみくん」
「それは聞こえたけど、なんで?」
「なんでって…あ、お母さん結婚するの」
「え?」
「二人のお父さんと結婚するのよ、だからジェルにお父さんとお兄ちゃんができたってこと」
お母さんの口から軽い感じで出てくる言葉は頭に入ってくるけれど、そんな難しいことじゃないのに理解が追い付かない。
「お、…お母さん、結婚すんの…?」
「…うん。したいと思ってる」
お母さん真剣な瞳は2回目だった。なんとなくななもりさんとさとみさんの視線も感じる。その視線も今は怖かった。
「そっか。……えっと、ごめん。俺部屋に行くな」
脳内で処理しきれなくなって逃げるようにリビングを出て2階の自分の部屋へと向かう。鞄をそこら辺に投げベッドに沈んで目を閉じる。
お母さんは女で一つで俺を育ててくれた。だから俺は父親というものを知らなかったけれど、その分お母さんがたくさんの愛をくれたから寂しくなんてなかった。バリバリのキャリアウーマンだったお母さん。俺を育てるためにそう在るしかなかったお母さん。結婚することが全てじゃないけれど、お母さんの人生だからお母さんがしたいように生きてほしい。
そう思うのに、どうしてだろう。中学2年生にもなってお母さんが俺だけのお母さんじゃなくなっちゃうって、咄嗟に思ってしまった。
コンコン。
「っ、はい…」
「ジェル?入っていい?」
「…お母さん、うん」
ノックの犯人はお母さん。ベッドに腰掛けて、転がっている俺の頭を撫でてくれる。
「ごめんね急に。びっくりした?」
「うん」
「さっきは二人がいたから言わなかったけどね、お母さんはジェルが嫌なら結婚しないよ」
「…え」
思わず起き上がる。優しく微笑んだお母さんは俺を抱きしめた。
つくづく愛されてるなぁって、実感する。
「違う」
「?」
「ずっと俺だけのお母さんやったから、そうじゃなくなると思っちゃってさみしくて」
「うん、そっかぁ」
俺が嫌だといったら、この人はきっと本当になかったことにしちゃうんだろう。そんなことをするくらいには俺の事を愛してくれているのだ。
「でも違った。お母さんはお母さんだね」
「そうよ、あなたのことが大好きなお母さんよ」
「うん。あの二人のお父さんのこと好きなんでしょ?」
「ジェルと同じくらいね」
「一緒?」
「そう、一緒」
「そっかぁ。……うん、お母さんが結婚したいならして?」
こうしていつも大きすぎる愛で包んでくれる。だからジェルはお母さんが大好きなのだ。ぎゅっと抱きしめられてから頭を頭からほっぺまで撫でられる。
「ありがとう、ジェル。お母さんはななもりくんとさとみくんのお母さんにもなっちゃうけど、あなたのママであることは変わりないわ」
「うん」
「大好きが増えたのよ?それって素敵な事じゃない?」
素敵な事だと思う。俺のお父さんになる二人のお父さんはどんな人なんだろう?でもつまりは二人の弟になるわけで。
「素敵な事、だけど…」
「…不安?」
「うん。あのね?ななもりさんとさとみさんってね、すごい人気なの。そんな二人の弟になれるかな?」
いきなり俺みたいな弟ができて恥ずかしくないだろうか。さっき優しく笑いながら、よろしくと言ってくれたのに何もお返事することができないような俺に。
「ふふふ、大丈夫よ?」
「そう、かなぁ?」
「だってジェルは世界一可愛いもの」
ふにふにと俺の頬を触ってニコニコ笑ってそういうお母さん。俺はマザコンと言ってもいいほどお母さん推しでお母さん大好きっ子だけれど、を息子を”世界一可愛い”といつも言うめちゃくちゃ親バカ。
「それはお母さんだからだよ(笑)、でも頑張る!」
お母さんが好きになった人の息子なんだからちょっと自信ないけど家族になりたい。何を頑張ればいいかわからないけど、とにかく頑張ろうと決意した俺を見たお母さんが楽しそうに笑って口を開く。
「ふふふ。ジェル覚悟なさい?」「へ?」
「二人に愛される覚悟よ?あ、でもあの人もきっと溺愛するわね、ふふふっ」「?」
「さ。ご飯もう少しでできるから、下降りてきてー」
よくわからないことを言って部屋を出て行ったお母さん。この言葉の意味を知るのはこの直後だった。
「あの、さっきはごめんなさい。よ、よろしくお願いしましゅっ」
お母さんについて行ってリビングにいた二人に勇気を出して声をかけ、勢いよく頭を下げるが、大事なところで噛んですごく恥ずかしい。
「…?」
反応がなくて失敗しちゃったかなと思い顔を上げると、二人が目の前に立ってる!と思ったらななもりさんにぎゅっと抱きしめられた。
「かわいい!かわいいよ母さん!!写真で見てたけど実物やばい!」
「でしょ~!世界一可愛いでしょ?」
(あれ?)
さとみさんも近寄ってきてななもりさんに抱きしめられたままの俺の頬を触りふにふにと触りにやにやとしている。
「てか声えろくね?声まで可愛いとか聞いてないんだけど、かあさん?」
「言ってないもの~二人がどんな反応するかなぁって、我が息子ながら可愛いでしょ~?」
(あれ?あれ?)
噂で聞いて勝手に想像していたのは王子様のような二人。だからこそ怖かったのに今目の前にいる二人は王子様とはだいぶかけ離れている。お顔は大変によろしいけれど、ななもりさんの方はふわっとした喋りかたで可愛いと言っているが、ななもりさんの方が可愛いらしい。さとみさんはちょっと拗ねたような顔をしながらもにやにやしていた。学校ではすごい二人だから、どこかで美化しすぎていたのかもしれない。ここにいるのはちゃんと高校生の普通の男の子で、これから兄になるだろう二人。
そんな二人はもうお母さんのことを”母さん”と呼んでいて、さすがだなぁと他人事のように思たけれど、俺も頑張るんだったと思い出し、未だ抱きしめられててほっぺをふにふにされてるからお顔を見てもう一度先ほど噛んでしまった挨拶をやり直そうと声をかける。
「ななもりさん?さとみさん?」
「ん?ななもりさん?兄弟なんだからもっとフランクに呼んでよー」
「そうだぞ、さとみさんなんて他人行儀すぎやろ」
「えっと、じゃあ…」「ただいまー!」
玄関から違う男の人の声。お父さんだろうか。少し緊張していたらママがキッチンからやってきて僕に耳打ちする。ななもりさんが離してくれたので、耳打ちされた言葉を口の中で繰り返してリビングの扉が開くのを待つ。
「ただいま!お母さん!そして息子たち!!!」
「「おかえり~」」
「おかえりなさい、あなた」
「お。キミがジェルくんだね?初めまして」
「えっと…、おかえりなさい、…お父さん?」
「っ」
ぎゅうううぅううう。
「可愛い!ただいまジェルくん!!」「…はい」
ジェルくんと呼ばれたことにもびっくりししたけれど、抱きしめられて大きな背中と逞しい腕、強い力を感じた。あぁ、これがお父さんって人なのかって少し感動。
さっきお母さんが”お父さん”って呼んであげてってアドバイスをくれた。お父さんも俺の”お父さん”になれるか不安がってたってそう聞いて、俺と一緒だと思ったら嬉しかった。
「ちょっと父さん!何してんの!?」「離れろよオヤジ、ジェル潰れちゃうだろ!」
「やだやだ。俺の息子だもん!可愛くない息子ばっか見てたんだからその反動だもん!仕事頑張ってきたご褒美だもん!」
「いい年してだもんとか可愛くないし、可愛くない息子で悪かったね、とにかく離れて!」
「今俺たちのターンだったんだよ、おやじどけよ」
三人が小学生のように僕の周りでわいわいしている。
「ふふふ」
思わず笑ってしまった。お母さんと二人家族も倖せだった。でもこれからはきっともっと倖せな予感がした。
僕の笑い声に動きを止めた三人が視線を寄越してくから、見つめて。
「これからよろしくな?お父さん、ななにぃ、さとにぃ」
ぺこりとお辞儀をした。少しだけ憧れてた、お父さんと兄弟という存在。大きくなって俺だけでお母さんを守りきれるか漠然と不安だった。
だからどうか、親子ともどもよろしくお願いしますって意味だったのだけれど。三人が目の前で固まっているから心配になり首を傾げる。
「えっと、…?」
がしっ、ぎゅっ。
「あぁぁぁん!私の息子が世界一かわいいぃぃいいぃい!」「お母さん…」
ぎゅうぎゅうといつものように抱きしめれてて、俺にはこれが日常なのだけど三人がびっくりしてないかなと不安になって首を向けたけど。
「うちの子の笑顔とお父さん呼び、はんぱない」
「ななにぃって可愛すぎん?」
「いや、さとにぃ呼びの勝利だろ」
三人でなんかぶつぶつ言ってるから邪魔しちゃいけないなと思った。そしたら俺を抱きしめたままの、お母さんが。
「何言ってるの、お母さん、の勝ちでしょ」
なんてよくわからない勝利宣言をしてふふん、と仁王立ちし三人を見下ろす。
あったかいな。たのしいな。
突然できたお父さんとお兄ちゃん。しかもお兄ちゃんに限ってはかっこいい兄が二人もできた。学校の人気者二人が家にいた時はどうなるかと思ったけれど。
どうやら素敵な家族になれそうです。
おはようございます。春華です。昨日出せなくてごめんなさい。毎日投稿を誓ったのにすっかり忘れてた。この続きは♡500で頑張るね。因みにこの話の橙君はロリショタなんですよね。かわいいですよね、ロリショタ(キモイ)
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500まで頑張りました‼︎ 押した後に一日も経っていなかったことに気づきました… 主さんのペースで大丈夫です。 続き楽しみにしてます!