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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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十数年お母さんと二人家族だった俺にある日。お父さんと兄2人ができました。

もともとそれなりの大きさだった家に住んでいたので(お母さんの両親もまた、親バカなのだ)お母さんの仕事部屋などを潰してななにぃとさとにぃの部屋を確保することにした。現在マンション暮らしの3人は週末越してくるということでその日はそのまま帰っていった。

「ジェルくん、またね?」

「ジェル、またな?」

そう言ってくれた二人の兄はとってもかっこよくて、俺の兄という実感がわかない。目覚めてリビングへ降りるといつも通りママはもうすでに出勤しており、静かな我が家がそこにあって。昨日の出来事は夢だったんじゃないかってぼんやりと思いながら登校する。

ざわざわ。

校門が近づくにつれ周りが賑やかになってきた。そういえば時期的に高等部もテストだと思うから部活やら委員会やらないのだろう。そしてつまりこの騒ぎのもとは。

ざわざわ。

「やばいって、二日連続で見れるなんてついてる」

「テストは嫌だけど二人が見れるならしょうがないよね、なにかの犠牲を払わないとあれは拝めないよね」

「あの兄弟ほんと目の保養」

立ち止まって二人をみる女子生徒たちは数知れず。その隙間から見えたのはやっぱりあの二人で、昨日はあんなに身近な存在だと思えたのに、今日はこんなにも遠い。

ばちり。

(あれ、デジャヴ?)

じっと見てたら視線が合ったと思ったらこっちへ二人が向かってくる。海を割ったというモーゼのように歩いてる二人の横に人が避けている。それでも彼女たちの視線は真ん中の二人に熱く注がれているから。

(こわい)

みんなの視線がこちらに向くのが。

俺は今まで俯いて過ごしてきた。訪れた声変わりは大して効果を発揮しなかったので高めの声はコンプレックスだし、小学校の頃目元に泥が付いてると言われてから人と目を合わせるのが苦手だった。

(昨日は平気だったのに…)

少しだけ人と違う特徴は、この年頃には格好の餌食だということを知っている。それしてそれを異端だと指をさされ集団から弾かれてしまう事もあるのだ。だからそれを回避するために俯いて生き、休み時間は音楽を聞いて過ごしてきたのに。

(ごめんなさい)

近づいてくる二人が俺にとっては未知の恐怖でしかなかったから、逃げた。後ろで呼び止められた声が聞こえた気がしたけれど、とにかくあの場から逃げ出したかった。

「はぁっ、はぁっ、…はっ」

家族になりたいって思ったばかりなのに逃げてしまった自分が情けない。有名人な二人の生きてる世界を目の当たりに見せつけられてしまって、俺の悪い癖のネガティブが発動してしまった。

「…あんなすごい人たちの弟なんて…無理だよ」

思わず零れた本音は空気に溶ける、はずだった。

がしっ。

「なんで?」

「っ!?」

「なんでそんな事言うの、ジェル」

突然腕を掴まれてビクついてしまったけれど同時に落ち着いた声がして、振り返るとさとにぃがそこにいた。

「さとちゃんナイス!…で、ジェルくん?今のはなんでか俺も聞きたいな?」

さとにぃの後ろからななにぃが出てきた。ここは中等部側の中庭だから二人がわざわざ追ってきたのだと理解する。

腕を引かれてそのまま近くの木の下にあるベンチに座らせられて、二人も俺を挟んで座るから逃げられないのだと思った。家族になるなら、逃げてはいけないともおもった。

「…俺、二人のこと知ってた。だって有名人だもん」

怖かった。吐き出して嫌われるんじゃないかって。めんどくさがられるんじゃないかって。俯いて靴を見る。

「学校中の女の子たちが二人に夢中だからいつも二人が見えるといつもすごくにぎやかで、…昨日渡り廊下にいたやろう?俺なんか目が合ったと恥ずかしながら勘違いしちゃったん。でも一生交わることのないと思ってたから家に帰った時すごくびっくりした」

「うん」

「ん」

右手はさとにぃ、左手はななにぃがによって握られている。

「びっくりしたし混乱したけど、お母さんが大好きが増えるって素敵なことだって教えてくれて、俺もね二人と家族になりたいと思っって…」

「「うん」」

「お父さんも、ななにぃも、さとにぃも抱きしめてくれたでしょ?あったかくて優しくてうれしかった」

二人の掌の温度がすごくあったかくて、俺のへたくそなお話にも相槌をうってくれるから頑張って伝えなきゃと思った。

「でもね、でもねさっき…こわくなっちゃった」

「ジェル…」

「なんで怖くなったのか教えて?」

「違う世界の人なんだなって実感しちゃって…」

俯いてた顔の頬にするりと手が添えられて右へ向けられる。

「なんで世界をわけちゃうの。俺たちもいれてそこに。ジェルの世界に」

「さと、にぃ…俺の世界なんか面白くないよ?」

世界に入れて、なんて初めていわれた。キラキラしてる二人の世界から左に座ってるななにぃが手は握ったままで座る俺の前にしゃがんだ。

「そうだよジェルくん、ジェルくんは何個か勘違いしてるね」

「かんちがい?」

ななにぃに左手を包まれて視線が合う。

「まず昨日は、俺たちジェルくんに手を振ったんだよ?」

「え?そうなの?」

「そうだぞ、あの渡り廊下いればジェルが見えるって知ってからな」

「…へ?」

俺が見えると知っていた…?

「あれ?俺の存在を知ってたの?」

「…」

「ほらなーくん。ジェはこうなんだよ」

「えぇ?いや確かに鈍いとは思ってたけど…」

「だから危険なんやろ」

「そうだね、ちょっとあとで作戦会議だね」

「おっけ」

「?」

ななにぃとさとにぃで話が進んでしまっていてついていけない。わかりませんって顔に書いてあるだろう俺の表情を見た二人が、困ったように笑いながら見つめ返してくれた。

「次の勘違いはジェルくん自身のことだよ」

「俺?」

「そ。ジェルは知らんかもだけど、キミ有名人だからね?」

「え?俺?」

「うん、ジェルくん」

二人の言っていることが正しく理解できない。有名人って、ななにぃとさとにぃと同じになってしまう。

「…声が変だから?」

「は?誰が言ったんだよ、そんなこと」

きっとよくない意味で噂になったのだとかなりショックを受けながらコンプレックスを言ってみたら、さとにぃがめちゃめちゃ怒っている。

「ジェルくん」

「ななにぃ…っ!」

呼ばれた優しい声に助けを求めるように顔を向けたら。

「俺たちの大切な弟に誰がそんな酷いことを言ったのかな?」

にっこり笑っているのに多分さとにぃよりも怒ってらっしゃった。どうしたらいいかわからなくて、二人の手をぎゅっと握って首を振る。

「い、言われてないよ?俺がねっ、俺が嫌いだから」

「え?そんなエロい声な、「さとちゃん?」

「ん゛ん゛、そんな可愛い声なのに?」

昨日も二人はそう言ってくれた。だからきっとこの人たちなら大丈夫だって思ったのかもしれない。

「まぁでも誰でもコンプレックスはあるもんね?でも俺は好きだよ、ジェルくんの可愛い声」

「俺も」

「俺はななにぃとかさとにぃの声の方が好き」

お母さんじゃない人に可愛いと言われてることに慣れてなくて、でも二人のほうが素敵な声の持ち主さんなんだからとこれもまた慣れてないことを言ったから、顔は真っ赤だと思う。

「あー。ムカつくくらい可愛い」

なのになんだかお母さんみたいなことを言ったさとにぃにぎゅっと抱きしめられた。ななにぃはそれに苦笑しながらまた俺を見つめてくる。

「話それたけど、ジェルくんは高等部ではめちゃくちゃ有名なんだよね」

「うーん?でも俺、有名になるようなことしてないよ?」

「うん、ちなみに俺とさとちゃんもしてない。これってどういうことかわかる?」

「?こわいけど…、俺知らないうちになんかしちゃったかな?」

その可能性はないとは言い切れない。でも二人の反応を見ると悪い意味ではなさそうだけれど、だったら余計に見当がつかない。

「あのね。ジェルくんがそのままで素敵だから、なんだよ?」

「…そのまま?」

俺と、素敵という単語が結びつかなくて困惑する。

「つまり、めちゃめちゃ可愛い子がいるって有名なわけ」

「ふぁっ!?」

「くっくっくw混乱してる?」

「あはは。可愛い~」

可愛い、なんて親バカなお母さんくらいしか言わないと思ってた。男の子だけど兄たちに可愛いと言われて嬉しいなんて、おかしいのだろうか?

「…可愛いっていいこと?」

「お?ジェルは可愛いって言われるの嫌か?」

「んーん、お母さんにはずっと言われてきたけど、ほかの人に言われるのは昨日にぃにたちが初めてだったから。かっこいいにぃにたちに言われて嬉しかったよ?」

「…ジェルくん?ちょっと聞くけどそのにぃにとは?」

「え?ななにぃとさとにぃのこと」

その瞬間ななにぃは口元を手で覆って僕の膝へ伏せた。さとにぃは俺の肩に額を当てて、あーだのうーだの言っている。

「さとちゃん、尊いってこの瞬間のためにある言葉なんだね」

「奇遇だななーくん、おれも思ってた」

たまにこうして二人の世界に入る、ななにぃとさとにぃ。もっと仲良くなったら俺もそこに入れてもらえるだろうか?

「大丈夫?」

「へーきへーき、てか脱線しまくるな。可愛い爆弾落とされまくるから」

「あははっ、俺たちもこれが日常になるんだから慣れないとね?」

「な。まぁ話を戻すと……ジェルが可愛くてしょうがないって話よ」

「さとちゃんそれ話戻ってる?でもそうだね、だから”俺なんか”って言わないで、俺たちを信じてほしいな」

「信じる…」

「そう。ジェルくん可愛いって言ってる俺たちを、家族になりたいと思っている俺たちを」

「…」

「ジェルくんはそれだけのものを持ってるんだよ?だから俺たちを信じて安心して俺たちの弟になりなさい?」

「…うんっ!」

すごく嬉しかった。俯いてばかりいたけれどこんな素敵な兄たちがそう言ってくれるなら、これからはもう少し前を向いていきたいと思った。兄たちに誇れるように。お母さんに加え最強の味方がそう言ってくれてるのだから。

「あとはまぁ、覚悟しろってことだなジェル」

「覚悟?」

「俺らがどれだけキミのこと好きか、ゆっくりじっくりわからせてやるからさ」

「あれ?それお母さんにも言われた」

「あ~…ね、母さん手ごわいんだよなぁ」

「ね。ちなみにジェル、母さんはなんて?」

「二人に愛される覚悟だって。…それは大好きってこと?」

「う~ん……今はそういうことにしとこうかさとちゃん」

「そうだな。そのうち俺たちの愛に溺れちまうかもだけどな」

「ふふふ、つまり溺愛ってことで」

「?」

俺の家族を紹介します。俺に甘々なお母さんがいます。俺にデレデレなお父さんができました。それから、俺に甘々でデレデレなめちゃくちゃかっこいい兄が二人います。愛で溺れさせようというしているみたいですが、俺だって大好きを二人に返すんだから!俺だって昨日今日だけど負けないくらい二人の事が大好きだから。

「俺もね、ななにぃとさとにぃが大好き!」


ここまで見てくれてありがとうございます。コメントとハートありがとうございます😭

この話はこれで終わりではありません。番外編としてこれから何話か出します。

参考はいいですけど、丸々そのままの話を使うのはやめてほしいです。

♡500で次頑張ります!

この度母親が再婚して兄ができました

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