⚠自己満創作
⚠NL
⚠ちょいファンタジー
⚠バドエン、見方によってはメリバ
⚠解説はコメ欄へ
⚠主は一次創作が苦手です
「碧海っ!」
「わっ、吃驚した。璃玖か…」
岩陰に背を預けてぼうっとしていると、横からひょこっと現れる彼女、璃玖。
「何よ其の反応」なんて頬を膨らませる君は此の世の何よりも愛らしい。
「今日は何があったんだ?」
「其れがねぇ」
璃玖は毎日の様に海に来ては僕に話をしに来る。
今日は朝食の目玉焼きが上手く焼けたとか、陸上大会で1位をとったとか、僕にとってはくだらない話。
だけど余りにも君が楽しそうに笑うから、僕は文句も言えずにただ耳を傾ける。
静かな海の中では自分の鼓動しか聞こえないから、こうして聞く海豚の鳴き声の様な声は僕の胸を弾ませる。
「ねえ碧海、聞いてる?」
「聞いているよ」
「本当?全く、冷たいんだから」
失礼な事を平気で言う璃玖を軽く睨むけど、当の本人は気にしていない様子だ。
其の強靭なメンタルだけは尊敬に値する。
「また明日来るね。すっぽかさないでよ!」
「其れはどうかな。気分次第だよ」
じゃあね、と大きく手を振る璃玖。
純白のワンピースをはためかせながら砂浜を去って行った。
「あっ、帽子が!」
10年ほど前。
未だ幼かった僕達の出会いは風が強い日だった。
普段穏やかな海も荒く満ち干きを繰り返す。
君が来て僕は咄嗟に岩陰に隠れた。
すると目の前の海面に大きなリボンが付いた麦藁帽子が降ってきた。
( 帽子…あの子のか。まあでも僕が拾ってあげる道理は無いし )
「私の帽子…何処に行っちゃったの…?うぅ、」
「うわーん!」と大きな鳴き声が向こう岸から聞こえてきた。
其れが余りにも悲痛だったから、僕は渋々麦藁帽子を手に取って岩陰からそっと顔を出した。
「はい」
「え…」
「君のでしょ。ほら早く」
「あ、ありがとう…!」
其の少女は僕から恐る恐る帽子を受け取ると、真珠の様な涙を拭って言った。
「もう行きな。これからもっと海が荒れるよ」
「でももっと貴方と話したい!海が荒れるなら私の家に来ない?クッキーをご馳走するよ!」
少女はそう僕の手を取り、引いた。
僕は突然の其れに抵抗する事も出来ず、海から引き摺り出されてしまった。
「え…」
「……だから帰れと言ったのに」
僕の姿を見て目を丸くする少女。掴んでいた手も離され、僕は背を向けて帰ろうとした。
「綺麗!」
「……は?」
「迚も綺麗だね!ねえ、お名前は何て言うの?」
予想外の言葉に振り向くと、少女は目を輝かせながら笑った。
その笑顔は海に反射する太陽の様にキラキラと眩しくて、僕の胸はドクンと強く脈打った。
( 遅いな、璃玖 )
何時もの様に岩陰で彼女を待つ。
澄み切った空が海の青と溶けて、境界が曖昧になっていた。
「……」
「璃玖。遅かったね、一体何をして…」
と、砂浜を踏む音に振り向くと、彼女は目を真っ赤に腫らして顔を歪めていた。
僕が驚いて固まっていると、璃玖はぽつりぽつりと話しながら、泣き出してしまった。
「ずっと好きだった先輩にフラれちゃった…。私のこと異性として見れないって…。碧海ぃ…」
昔と変わらず大きく口を開けて泣く。
まるで魚を食べる時の鯨みたいに大きな大きな口。
幼い子の様に泣き喚く璃玖を抱き締める事も撫でる事も出来ず、僕の中の何かが破裂する感覚をただ噛み締めて。
璃玖の手を取る。
線が細くて爪はさくら貝の様なピンク色。
こんなに愛おしい。こんなに愛らしい。
僕より君を想える者は此の世にいないと海に誓って言えるというのに。
「海に行こう」
僕の言葉の意味を汲み取ってか、璃玖は小さく頷いて僕に誘われるが儘海に入った。
例え河豚の様に膨らんでも、
白海豚の様に肌が真っ白になっても、
僕は君を愛し続けると誓える──────。
好きだよ。
此の愛は深海の様に深く、潮の様に満ち、一生干上がる事は無い。
碧海の陥落。
コメント
6件
最後まで設定とか全部が神すぎるよ汗😥 なんかもう好きだよ!!一次創作でも、雰囲気だしすぎるし、!!
碧海→人魚 璃玖→人間 因みに水シ体は肌が白や紫に変色して、フグのように膨らみます☝🏻