テラーノベル
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暴力の嵐が過ぎ去り、静寂だけが支配する地下室。
総悟が次に意識を取り戻したのは、どれほどの時間が経過した後だったか。
全身を突き抜けるような鈍痛と、アイマスクに覆われたままの暗闇。
そして、すぐ傍らで聞こえる、規則正しくも不気味に静かな呼吸音。
「……あ、……ぁ……」
裂けた唇を動かすだけで、火で炙られたような激痛が走る。
総悟が微かに身悶えすると、鎖が力なく乾いた音を立てた。
その瞬間、椅子の軋む音がして、死神の足音が近づいてくる。
「……おはよう、総悟。随分と長く寝てたなァ」
銀時の声は、驚くほど穏やかだった。
それが逆に、総悟の背筋に氷を押し当てられたような戦慄を走らせる。
銀時は総悟の髪を優しく掬い上げ、腫れ上がった頬を、まるで壊れ物を扱うように指先でなぞった。
「……っ、……殺せ、……」
掠れた声で、総悟はなおも呪詛を吐こうとする。
だが、銀時はその顎を逃がさぬよう、強い力で固定した。
「まだそんなこと言えんのか。……なぁ、教えてくれよ。なんでそんなに、俺じゃダメなんだ?」
銀時の問い詰めは、怒号よりも冷たく、重く、総悟の鼓動を圧迫していく。
「真選組の何が、そんなにお前を縛り付けてんだ? 近藤か? 土方か? ……あいつらが、お前のこんな姿を見て、まだ『一番隊隊長』なんて呼んでくれると思ってんのかよ」
銀時は、総悟の耳元に唇を寄せ、逃げ場のない真実を突きつける。
「今のお前、鏡で見てみろよ。ボロボロで、俺に殴られて、ここで這いつくばってる。……これが、江戸を守る英雄の姿か? 誰も助けに来ねーぜ。お前はもう、俺に飼われるだけの、ただの『総悟』なんだよ」
銀時の指が、総悟の首筋に食い込む。
「答えろよ。……お前を壊したのは誰だ? お前を今、生かしてやってんのは誰だ? ……お前の名前を呼んでいいのは、世界で誰一人だけだと思ってる?」
総悟は暗闇の中で、必死に土方の背中や屯所の景色を思い出そうとした。
だが、脳裏に浮かぶのは、自分を撃ち抜いた銀時の拳の感触と、圧倒的な暴力の記憶だけだ。
精神の防壁が、銀時の執拗な問い詰めによって、音を立てて崩れていく。
「……っ、だん、な……」
「違うだろ。……名前で呼べよ」
銀時は、総悟が完全に折れるその瞬間を、飢えた獣のような目で見つめ続けていた。
コメント
1件
わあ……第5話、めちゃくちゃ重くて苦しくて、でも引き込まれましたね。銀時の優しい声と指の動きが、やっぱり狂気のほうへじわじわ持っていく感じが怖かったです。「名前で呼べ」って迫るところ、愛憎渦巻く執着がひしひしと伝わってきてぞっとしました。総悟が必死に土方さんや屯所を思い出そうとするのに浮かばないもどかしさ、精神が削られていく描写が生々しくて、続きが気になって仕方ないです……!
NAGI