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「空間支配系統魔術師『沙夜乃』との戦闘を終え、永嶺惣一郎率いる特殊対魔術師殲滅組織『Saofa』に加入した妖術師の少年。世界から敵視されている魔術師を倒した事によって、彼は莫大な栄誉と信頼が与えられるだろう」
「それと同時に、『魔術師を倒す事が出来る存在』を知った一部の人間は『魔術師と同等の力を持つ』と勝手な解釈をし彼を魔術師同様『排除しろ』と騒ぎ立てるはずだ。もしかしたら、妖術師を殺す別の組織が完成したりして―――
―――僕的にはその状況になってくれた方が行動し易い。妖術師を殺そうと目論む連中に紛れ、隙あらば少年含む術師を鏖殺し、再び大規模魔法を展開する」
「まぁ……そう簡単に事が進む事は100%有り得ない。それに、沙夜乃が死ぬのは予想外だった。彼女の補佐役である『羽枝』も人質に取られいる状況だ。 下手すれば僕の目的全てを察知されるかもしれない。そうなれば実に厄介で、実に不愉快極まりない」
「これ以上の痕跡を残すのは、僕の死を表す。だから暫くの間だけ、姿を消させて貰うとしよう………… 安心したまえ、沙夜乃と同じ結末は歩ませない。いざとなれば僕も手助けするさ」
「それでは―――失礼するよ」
「だああああ!!やっと帰れたああああ!!」
白い扉を豪快に開けながら、部屋の入口の空気を目一杯吸い込む。今僕がいる場所は、久しぶりに帰宅したマイハウス。東京都心の一角にあるマンションの一室だ。
お金を調達しに家(部屋)を出てから、遡行の件や沙夜乃の件で、僕は一度も帰れずに居た。やはり自分の家(部屋)に居るとやけに落ち着く。今までの疲労が一気に消失して行くのを感じる。
「もう……ここから動きたくないな……」
だがそれは叶わない事、僕にはやらなければならない事がある。空間支配系統魔術師『沙夜乃』の件についての書類に色々書き込まなければならないのだ。
飛び込んだベッドから跳ねるように起き上がり、椅子に座って書類を眺める。
沙夜乃の一件で、政府は”永嶺 惣一郎”が設立した組織に莫大な資金を提供。元々政府と警察に公認されていたが、妖術師と錬金術師に対する信頼度は初期と比べて目に見える様に上がった。
組織名は、特殊対魔術師殲滅組織『Saofa』。
組織の目的はその名の通り『魔術師の殲滅』。各国から集められたエリート術師達が集められ、魔術師を殺す為だけに訓練されている。頼りになるかどうか聞かれても、素直に頷けないのが少し難点だ。
「ってこれ僕が質問に答えたやつじゃないか……こんな事まで書かれてるのかよ………」
組織に莫大な資金が入る=組織の最高戦力である僕に金が入るのは必然。惣一郎から手渡しで貰った金額は、想像より少し少なかったが、凡そ10年程は収入が無くても生活が出来る位だ。
「―――次の給料までは生活には困らないが、やはり『太刀 鑢』以外の武器を買って影に仕舞わないとダメだな。となればやはり………」
『お前の考えている通り、恐らく手持ちの金銭では足りぬな。買えても精々鈍ら刀3、4本程度だろう。博打で一攫千金狙うのもアリだ』
「久しぶりに話しかけてきたと思ったら、開口一番それかよ……。悪いけど、ギャンブル関係の運は皆無だと思った方が良い。それに僕はまだ未成年だ」
そう、忘れているかもしれないが、僕はまだ高校二年生。そして、冬休みの真っ只中である。
高校側にバレる事無く行う事は可能だが、それを僕は許さない。何故かこう言う所だけは真面目だから。
『………お前の性格はよく分からんな。まぁ良い、その辺の鈍ら刀を使って死なれたら俺が困る。お前には俺の”無銘・永訣”を与える………が、あの時の―――”狂想刀・黒鶫”だったか?原初を再び顕現させるのは不可能だと思え。アレは俺だけが保持できる俺だけの神器だ』
「神器、ねぇ………あれ、”永訣”は”黒鶫”の複製刀(レプリカ)―――だよな?それに『”永訣”は複製刀だが”黒鶫”と同じで神器扱い』って言ってなかったか?それに、僕自身の意思で体を動かしてた時”永訣”と”黒鶫”使えたけど……あの時みたいにお前と交代しなくても使えたりしないのか?」
『一度に2つ質問するな。そうだな、先に神器の件を答えよう。
確かに言った。だがそれは”永訣”が真なる姿を魅せた時の話だ。刀身が死の概念で覆い尽くされてる状態なら別に使っても死にはしない。
そして、身体の件だが―――あの時は俺の自我とお前の自我が混合していたからこそ使えたと言う訳だ。故に、お前の意識内に囚われている間は”真なる力を解放した永訣”と”黒鶫”の使用は不可能という事だ』
「………そうか」
自らの影に手を伸ばしてモノを取り出す。ドス黒い色をした一本の刀。空間支配系統魔術師を討伐した、狂刀神のみが扱える神器の複製刀。『太刀 鑢』と真逆の存在。―――『無銘・永訣』。
その表面は”黒い何か”で覆われており、刀身を見る事は出来なかった。この黒い何かを狂刀神は”死の概念”と、そう言った。
“氷解銘卿”を使用した時に発生した”黒いモヤ”。あの時は、狂刀神ノ加護から滲み出したモヤだと思っていたが……、
「………もし、もしもだ。”無銘・永訣”の刀身が顕になったら、死の概念の鞘はどうなるんだ?」
『アレは”無銘・永訣”が真の姿を魅せた時、刀の内部に取り込まれ、刀身の強化及び身体への即死耐性が身に付く。俺には無意味だが、人間であるお前には十分良い効果だろう?』
―――チートじゃないか。
『そして、お前が先程から考えていた”黒いモヤ”の正体だが……あれは”無銘・永訣”を覆っていた死の概念で間違いない。氷解銘卿の発動と同時に内に秘められた力が発現したのだろう』
言われてみれば確かに。1回目で使用した時より、威力は倍になっていた。しかも、それに触れたビルは崩壊し沙夜乃は生きる気力を失っていた。要約すると、自身には強化効果が付くが、敵にはほぼ回避不可能なデバフが付与されると言う事だ。
―――いやはや、なんて恐ろしいモノを僕に渡そうとしているんだ。有難く頂戴するとしよう。
『………最後に、”無銘・永訣”の鞘が外れる条件は、”俺が俺に成る”。それだけだ』
「つまり、あの時みたいに身体と精神が入れ替わった状態って事か」
空間支配系統魔術師と戦闘した際は、やむを得ず狂刀神を自身に憑依させただけであり、通常の戦闘では狂刀神に頼る場面は無い。
て言うかあんまり頼りたくない。
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「もしもし、惣一郎さん?魔術師の件について新しい情報とか入ってませんか?」
“魔術師の件”。それは病院内で惣一郎がポロリと口にした、魔術師発見情報。
その後の組織内会議で共有され、『名古屋』と『京都』に滞在しており、何かを企んでいる可能性がありと判断された。
果たして、ソレが本物の魔術師なのか、偽・魔術師なのかは定かでは無い。それでも、魔術師と関わりのある存在は斬るのみ。
//「名古屋と京都の件の事だね。電話越しじゃなくて、直接口頭で伝えようと思ってたけど……魔術師の位置を特定した。これから、妖術師と錬金術師、呪術師の計3名で京都府京都市に潜入を開始する 」
//「錬金術師と呪術師の2名は、妖術師の補佐及び援護担当。都市部専用術の使用は極力控えめ、その他術の使用は各自の状況判断に任せる。―――以上」
//「ってな訳で、これから急いで京都に向かうよ。出掛ける準備を済ませておいてね」
それだけを伝えた後、電話は切れてしまった。僕の意見も何も聞かずに。まぁ、そういう人だから別に全然大丈夫なんだけどね?
でもせめて、呪術師の紹介ぐらいはして欲しかったな………。
第二章 9 ② に続く
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次話は、第二章 9 ② です。
遂に第二章突入。
第一章の内容はもう少し長くなる予定でしたが、予め設定していた話数を超えてしまったので、早めの第一章 8 で終了です。
ここから怒涛の展開になると思いますが、頑張ってついてきてください。