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十章 君にとってコーヒーとはなんだい?
コーヒーショックから目覚めると台所からいい匂いがした。
朧げに、ドアを開けると階段が見えた。
お…俺、フィンランドさんになんて事を!
こんな巨体を、にっ二階まで運ばせてしまった!
俺は急いで階段を降りた。
あの体に此処までの力があるのは国の化身だからで説明がつくが、祖国と同じ身長なのが理由にソワソワしてしまったのである。
日は沈み、部屋の暖色さは増していた。
クリーミーな匂いが俺の体を包み込んだ。
「…!フィンランドさん、運んでいただきありがとうございました」
「そうか、もうすぐでメシ出来るから座ってろ」
フィンランドさんは何も気にする事なく、鍋のお玉を回した。
俺は少し焦って言った。
「座るだけなんて!置いてもらってる身として何かやらせて下さい!」
フィンランドさんは俺の大きな声にびっくりして肩を振るわせた。
フィンランドさんは少し上を見て考えた後、コーヒーポットを指さして言った。
「淹れてくれ」
これほど、息を呑む言葉はない。
鍋を見張っているフィンランドさんの横で、ヤカンが沸く時を待っていた。
このヤカンが鳴った瞬間から覚悟を決めなければいけない。
あんなコーヒーを飲む程のコーヒー好きの舌を満足できるほどの腕は俺にないからだ。
ドリッパーにペーパーフィルターをセットし、粉を淹れる。
後は蒸らしが重要だとあの京都が言っていた。(盗み聞きした)
ヒゥーッヒヒィーン。
目を見開く。
今だ!!
少量のお湯をまず淹れる。
粉は膨らみ、ナッツのような、木のような香りが顔の前で広がった。
膨らみ終わり香りがたった後残りのお湯をゆっくり淹れる。
湯気が暖色に染まりそうそうっと彷徨う。
ドドン!っと前に料理が並ぶ。
シャケのスープとライ麦パンは黄金色に輝いた。
「ロヒケイットだ。日本語だとサーモンスープだな」
檜風呂の中に橙色の宝石が浮かんでいるような料理だ。
俺は手を合わせた。
「いただきます」
フィンランドさんは何も言わない。
フィンランドという国に『命をいただく』という考えはないんだなぁ。
フィンランドさんはマグカップをとって口に運んだ。
ところが口をつけるすんでのところで止まった。
「ど…どうかしましたか?」
「コーヒー変えたか?香りがたかい」
フィンランドはコーヒーを流し込んだ。
「いや、変えてないですけど」
そう言うとそうかと頷いた。
そして、静かに唇を動かした。
「俺にとってコーヒーはそこにあるのもだ。
きっと日本にとってコーヒーは淹れるのだろう」
フィンランドという国ではコーヒーはあればいいものであり、美味しいかは二の次らしい。
絶対美味しい一杯を淹れたほうがいいのに。
「北海道、お前にとってコーヒーってなんだ」
フィンランドさんは此処ぞとばかりに俺の心を抉る。
フィンランドさんはのコーヒーの粉は酸味は少ないけどやっぱり苦かった。
俺の不満を言ってしまおうか。
俺は椅子の下で拳を握り締め立ち上がった。
「お…俺にとってコーヒーはミルクが入っている甘い飲み物です!!」
そう言いながら、フィンランドさん家の冷蔵庫を開けてミルクを手に持って訴えた。
「…あ」
嗚呼ああああああああ゛!
俺、俺なんて事を人様の家の冷蔵庫を勝手に開けるなんて!
「す、すみません!」
「いい別に、ミルクくらい好きに使ったらいい」
フィンランドはあんまり気にしてない様子で、こちらに来て、俺の手を引いた。
俺のコーヒーにミルクを注いで差し出した。
「あ、ありがとうございます」
フィンランドさんは微笑んでいった。
「Olehyvä 」